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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2023年10月の記事一覧

ウケない話をあえて書く。

ウケない話をあえて書く。

あんまりウケない話題なので、書いてなかったことがある。

■ ローリング・ストーンズの新譜が出た。
しかし80歳だよ、ミック・ジャガー。ローリング・ストーンズの新譜『ハックニー・ダイヤモンズ』が発売された。前作『ア・ビガー・バン』から実に18年ぶりとなるオリジナルアルバムだ。先行シングルからも予想されたとおり、アルバム全体にほどよい軽さと明るさが漂う良作となっている。

ここで生意気にも「良作」な

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もう一度、またもう一度。

もう一度、またもう一度。

たとえばここに、ビートルズが好き、という男がいたとする。

好きなアルバムは『ラバーソウル』。初期も後期もいいんだけど、『ラバーソウル』あたりのビートルズがいちばん好きなんだよねえ、なんて話をしている。いや、これはほかのミュージシャンの、ほかのアルバムでもかまわない。ただのたとえ話である。

それでこの場合、ほぼ間違いなく彼は『ラバーソウル』を何回となく聴いているだろう。何十回、何百回である可能性

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信号待ちの、その先に。

信号待ちの、その先に。

8人ほどのぼくたちを待たせていた昼どきの横断歩道が、青に変わった。

薄皮ほどのストレスから解放され、めいめいの歩幅で歩き出す人びと。ふとそこに、ひとひらのアゲハチョウが人の波をかき分けるようにそよそよと、泳いでいた。飛んでいるのでもなく、羽ばたいているのでもなく、泳いでいるというのがぴったりの、そよそよだった。

あのアゲハチョウも、信号待ちしていたのかな。いや、そんなはずはない。この令和の大都

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つけっぱなしのテレビのように。

つけっぱなしのテレビのように。

英語をまじめに勉強したことがない。

洋楽が好きだったり、ハリウッド映画が好きだったり、吹替版よりも字幕版が好きだったり、外国人の友だちがいたり、英語そのものに触れる機会は、それなりにあったのだと思う。それでもまあ、どうにか観光旅行できる程度の英語しかできないし、向こうの人と政治や経済、文学などを深く論じ合うなんて夢のまた夢だ。

そういう英語バカボンな男の話として聞いてほしい。英語に堪能な人から

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引退したあとの夢。

引退したあとの夢。

ライターをやっていて、ときどき疑問に思うことがある。

「はたしておれは、小論文を書けるのだろうか?」である。そりゃあ書くことを仕事にしているんだし、こうして毎日書いているんだし、小論文らしきものを書くだけだったらできるだろう。書くこと自体に苦労するとは、あまり思えない。

しかしながら受験の世界の小論文には、それ相応のルールなり型なりがあるやに聞く。そして自分は、そのルールや型を知らないし、まあ

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読みものとしてのレシピ本。

読みものとしてのレシピ本。

わが家にも何冊かの、レシピ本がある。

「かんたん」であることを銘打ったり、「とっておき」であることを銘打ったり、「きほん」であることを銘打ったり、「フライパンひとつ」でできることを銘打ったりと、さまざまな種類のレシピ本たちが、わが家にもある。

本のなかには当然、見たことのないような料理も載っている。写真で見るかぎり、とてもとてもおいしそうなのだけれど、いまいち味の予想がつかない異国の料理。いか

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そこでおにぎりをにぎるように。

そこでおにぎりをにぎるように。

遠足の弁当に、ちいさなおにぎりが3つ、入っていたとする。

また別の弁当に、ちいさなおにぎり3つぶんのごはんが、敷きつめられていたとする。おかずはどちらも同じだ。ウィンナーとか、玉子焼きとか、ほうれん草とか、そういう家庭的なおかずだ。それでこのふたつの弁当、どちらがうれしいだろうか。

決めつけるわけではないものの、多くの人がおにぎりのほうをうれしく感じるのではないかと思う。

おにぎりの実際的な

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おもしろいを見つけられる人。

おもしろいを見つけられる人。

美容院に行くと、タブレット端末を手渡される。

自分のスマホを見てるんでいいですよ。そう断っても「ま、いちおう」みたいな感じでみたいな感じで台の上に置かれる。タブレットで立ち上げられているのは、楽天マガジンのアプリだ。さまざまな雑誌(の一部記事)が読み放題、というサブスクリプションサービスである。

カラーリングしているあいだの待ち時間、または放置時間など、スマホに飽きてそのアプリを覗いてみると、

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自分の家でやらないことは。

自分の家でやらないことは。

見上げると電線のうえに、カラスが一羽とまっていた。

もう一度足元に目を落とす。左足のスニーカー、その白い靴紐にべったり、落としたてのふんが付着している。白と黄色と茶色がまだらになった、いかにもみずみずしいふん。落とし主は電線上に羽を休める、彼のようだ。

狙ったわけではないだろう。カラスは賢いと耳にするが、賢ければわざわざこんな挑発、してこないだろう。だって怒った人間が散弾銃などを乱射する恐れだ

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サッカーを「点取りゲーム」と考えず。

サッカーを「点取りゲーム」と考えず。

ああ、これだったら伝えられるかもしれない。

昨夜のサッカー日本代表、チュニジア戦を観ながら思った。サッカーを敬遠する人たちはしばしば、「なかなか点が入らないからつまらない」と言う。おっしゃるとおりである。得点のカウント方法が違うとはいえ、バスケットボールのように何十点と入る試合は、まずありえない。そしてスコアレス、つまり互いが1点も奪えないまま試合が終わることもしょっちゅうだ。得点シーンを最大の

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なぜ知ったかぶりはよくないのか。

なぜ知ったかぶりはよくないのか。

知ったかぶりはよろしくない、と誰もが言う。

知ったかぶりを推奨する人など、どこにもいない。それではなぜ、知ったかぶりはよろしくないのか。わりとまじめな話として、知ったかぶりの害悪について考えてみたい。

一般的に考えられる知ったかぶりの罠は、それがバレるところにある。たとえば打ち合わせの席で、相手が知らない本のタイトルを挙げる。なんとなくその場に、知らないことを恥とする空気が流れる。そこで口を半

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音楽好きの私信として。

音楽好きの私信として。

きのう、川口でシェイクスピア劇を観た。

木村龍之介さん率いるカクシンハンのプロデュースによる『シン・タイタス ROBORN』だ。タイトルにあるタイタスとは、シェイクスピア「タイタス・アンドロニカス」のこと。残酷にして不道徳でありながらまあ、すばらしい舞台だった。

カクシンハンの舞台はこれまで2度、経験している。『ハムレット』と『冬物語』だ。

演劇にもシェイクスピアにも詳しくない人間として、当

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その服、その靴を選ぶ、もうひとつの基準。

その服、その靴を選ぶ、もうひとつの基準。

洋服を選ぶ基準は、人それぞれにあるだろう。

価格が大事だという人、ファッション性を重視する人、素材や重量、ポケットの数など機能性に着目する人、あるいはブランドを大切にする人。いずれも重要な項目であり、洋服も靴もバッグも、そのすべてをかなえるものであることが望ましい。

ただしぼくは、そこにどうしても追加して考える要素があるのだ。

戦闘力である。

たとえば夏のビーチサンダル。履けば涼しかろうし

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わたしの生活、きのうの話。

わたしの生活、きのうの話。

仕事の話ばかりを書いている。

仕事場で、仕事のあいまに、仕事用のパソコンで書いているのだから、そうなるのも仕方がない。もしもこれが自宅で書くものだったら、もう少し生活に寄った内容になるだろう。けれどもぼくにとっての生活とはほとんど犬であるからして、犬の話ばかりを書きかねない。ワーク・オア・ドッグ。それがわたしという人間、その人である。

それでもまあ、きょうは生活の話をしよう。

きのう、定期検

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