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おもしろいを見つけられる人。

美容院に行くと、タブレット端末を手渡される。

自分のスマホを見てるんでいいですよ。そう断っても「ま、いちおう」みたいな感じでみたいな感じで台の上に置かれる。タブレットで立ち上げられているのは、楽天マガジンのアプリだ。さまざまな雑誌(の一部記事)が読み放題、というサブスクリプションサービスである。

カラーリングしているあいだの待ち時間、または放置時間など、スマホに飽きてそのアプリを覗いてみると、いつも思う。「こんなにたくさんの雑誌があるんだ」と、毎回思う。

名前しか知らず、読んだことのない女性誌。いかにも少部数っぽい専門誌。たしか同じようなタイトルの雑誌なかったっけ? と混乱してしまうような健康雑誌。ページをスクロールしているうちに、このうちどれくらいの雑誌が黒字なんだろう、と思ってしまう。

20代のころ、ぼくは雑誌のライターだった。そしてこれまでに2度、新雑誌の創刊に立ち合っている。企画・編集会議を重ね、パイロット版を1〜2冊刊行し、そこでの反省点を踏まえながらなんとか創刊に至る。そういうプロセスに2度、立ち合っている。ちなみに立ち合った2冊は、とうのむかしに廃刊となった。うち1冊など、ほんの3〜4号で廃刊となった。

そのころの経験に照らし合わせて考えるに、月刊誌であれば最悪3〜4人ほどの正規スタッフがいればどうにかなる。優秀な編プロさん、締切厳守のライターさん、気のいいカメラマンさん、気心の知れたデザイナーさんが外部にいれば、3人で回すことも不可能ではない。

そして3人のうち1人の給料ぶんくらいは、広告収入でまかなえるだろう。いや、広告をとってくるには営業スタッフが必要なんだけれど、その程度の所帯であれば編集が営業を当然兼ねる。だったらまあ、ちいさな赤字を出しつつも存続、という選択はあるのだろう。


なんて現実的な金勘定をしてしまうのは、最近ちょっとだけ雑誌に興味があるからなんです。紙の雑誌じゃなく、じぶんたちでつくる、ウェブ上の雑誌に。

なんかねー、長丁場の書籍ばかりつくっていると、雑誌ライター当時に持っていた「あ、この人おもしろい」「なんか企画にしてインタビューしよ」の瞬発力が欠けてきて、どうもおもしろくない人間になってきたなあ、と思うんですよね。おもしろい人って、おもしろいを見つけられる人、ですから。

あわててはじめることはしないけど、選択肢のひとつとしてゆっくり考えていきたいです。


—— おしらせ ——

「好書好日」さんでインタビューしていただきました。読者として好きだったメディアなので、とてもうれしかったです。

そして「好書好日」に転載されている古賀及子さんによる書評はこちら。