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頭痛と自律神経

アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏 より


頭痛に悩まれている方がほんとに多いですねぇ。

僕自身も20代の頃は、頭痛を感じることが多く、頻繁に頭痛薬を飲んでいました。

頭痛の起きる原因や兆候、身体的な特徴などを知ることで、一人ひとりが自分でできる対策もたくさんありますから、まずは、自分の頭痛を知ることから始めてみてください。

まずは、頭痛の「ず」、基本的なことと自律神経との繋がりをお伝えしたいと思います。



【頭痛を感じる部位】

[頭蓋内]
・頭痛を感じるのは硬膜と血管(硬膜動脈、脳動静脈の一部)

[頭蓋外]
・皮膚, 筋、筋膜,骨膜,副鼻腔,眼球,歯

上記の部位に感覚受容器が存在し、ここからの刺激が脳に伝わって頭痛を感じることになります。


一次性頭痛と二次性頭痛

頭痛には「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。
「一次性頭痛」:他に原因となる病気のない頭痛
「二次性頭痛」:病気などの原因によって引き起こされる頭痛


【 二次性頭痛 】
二次性頭痛の中には、くも膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下出血、高血圧性脳症、感染症など、すぐにでも搬送して緊急の治療が必要な病気があります。また、副鼻腔炎、うつ病など生じる頭痛もあります。

上記のような疾患の可能性もありますから、以下のような場合はすぐに病院を受診してください。※場合によっては救急車を呼ぶ必要もあります!


こんな頭痛はすぐに病院へ!

・今までに感じたことのない痛みを感じた時
・急に痛みが出はじめ、どんどん痛みが強くなる時
・頭痛と一緒に吐き気や嘔吐、めまいが生じている時
・頭痛と一緒に手足の動きにくさ、目の見えにくさ、耳の聞こえにくさ、体のしびれなど、体の異変を感じる時
・頭痛と一緒に熱や発疹が生じた時
・頭痛が繰り返していて、痛みが強くなってきているような時


上記の症状の原因をしっかりと検査してもらい、必要に応じて治療してもらうことが最優先です。


二次性頭痛には、風邪による熱発、熱中症、二日酔いなどの際に生じる頭痛も含まれますが、これらの痛みは、上記の症状が軽減するにしたがって消失しますね。


【 一次性頭痛 】
一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛などのタイプがあります。

一次性頭痛だからといって、病院に行かずに甘くみてはいけない場合があります。特に以下の状態に当てはまるような人は、一度病院でしっかりと診察を受ける必要があります。


●慢性片頭痛

・頭痛が月に15日以上の頻度で3ヶ月以上続く
・少なくとも月に8日の頭痛は片頭痛の特徴を持つ

●薬物乱用頭痛

・以前から頭痛疾患を持つ患者において、頭痛が1ヶ月に15日以上ある
・1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヶ月を超えて定期的に乱用している状態

国際頭痛分類第3版(The International Classification of Headache Disorders the 3rd edition: ICHD-3)より抜粋


※上記の様な頭痛に当てはまる場合には、

頭痛の経過と薬の使用方法を

医師に相談していく必要があります。


それぞれ頭痛を誘発する要因や対処法が異なります。

自分の頭痛はどのタイプにあたるのかを把握して、それぞれに合った対策をとることが大切ですね。

普段から頭痛を感じることが多い人こそ、軽く考えずにいつもと違う感じがした時には、早めに受診してくださいね🍀



頭痛の原因について、まだ全てが明らかになっているわけではありませんが、今現時点で分かっている部分についてお伝えしたいと思います。


【片頭痛の原因】

片頭痛の原因については、はっきりとは解明されていません。いくつかの説が挙げられています。

血管説:頭蓋内外の血管の反応性の異常によるとするもの
神経説:大脳皮質拡延性抑制(cortical spreading depression : CSD)にみられるような大脳神経細胞の過剰興奮が片頭痛のはじめに生じるとするもの
三叉神経血管説:三叉神経の分布している脳血管や硬膜血管周囲における神経原性炎症が片頭痛の発作に関与しているとするもの

※現在、これら3 つの仮説は片頭痛における病態の一部をそれぞれ反映しているものではないかと考えられています。


三叉神経から伸びた神経線維の先にはたくさんの血管があります。何らかの原因で三叉神経が刺激を受けると、その刺激でセロトニンなどの神経伝達物質が血液中に出て脳の血管が拡張し、周囲に炎症が起こります。同時に、拡張した血管が周りに張り巡らされた三叉神経を圧迫するため、動脈が脈打つたびに拍動性の痛みが起きます。このような流れで頭痛が生じるとされています。

加えて、頭や首の筋肉が伸び縮みしたりすると、それぞれの部位で痛みの刺激を受け取る部分が反応します。血管で起こった痛みは広い部分に伝わり、頭皮や頭蓋骨などに刺激が加わった際にも痛みが生じることがあります。


[三叉神経の解剖]
・顔面や口腔の触、温、冷、痛覚は三叉神経によって脳幹に伝えられる
・三叉神経は第V脳神経である。脳神経ではもっとも太い
・三叉神経は混合神経であるが、運動線維は第3枝の下顎神経のみに含まれる
  運動線維---咀嚼筋その他に分布
  感覚線維---顔面皮膚・結膜・角膜・口腔粘膜および鼻粘膜に分布

スクリーンショット 2021-05-14 午後0.55.19

ーー[私見]ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私のクライアントの中で、片頭痛が生じる前兆に顎を動かした時の違和感(咀嚼筋の収縮時?)を感じる経験される方(私自身も経験があります)がいます。咀嚼筋の運動を司る三叉神経であることを考えると、臨床で片頭痛と咀嚼筋のトラブルの関連を感じるのは、当然かもしれませんねぇ。
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[頭痛の伝導路]
三叉神経は、頭部表面前 2/3 の痛覚のほか、口腔粘膜、副鼻腔、鼓膜などの痛覚を主体とした体性感覚にも関与しています。一次ニューロンに伝えられた刺激は、三叉神経節細胞を経て脳内に入り、同側の三叉神経脊髄路を下行します。次に、三叉神経脊髄路核で二次ニューロンとシナプス結合します。さらに、二次ニューロンは反対側を視床へと上行して大脳皮質感覚野に投射される三次ニューロンとシナプス結合します。

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【ストレス → 片頭痛】

三叉神経に対して視床下部から下降性の制御がなされていることが分かってきています。具体的には、三叉神経から視床への痛み信号の伝達を抑制する働きがあり、しかもこの抑制は、ストレスを感じた時に減弱してしまうことが分かっています。

つまり、上記の働きにより、ストレスを感じた時に片頭痛が生じやすくなる「 ストレス → 片頭痛 」という流れが説明される1つの要因と考えられます。三叉神経や周りの血管で生じたトラブルによって引き起こされる痛みが抑制されることなく視床まで伝わる(片頭痛)ということですね。

[Paraventricular Hypothalamic Regulation of Trigeminovascular Mechanisms Involved in Headaches  Robert C, et al. J Neurosci 2013;33:8827-8840.]
こちらの調査結果は、室傍核視床下部ニューロンがSp5Cニューロンの自発的および誘発的活動の両方を直接制御し、侵害受容、自律神経、およびストレス処理メカニズムを統合することにより、片頭痛および/または三叉神経自律神経脳痛のモジュレーターまたはトリガーとして機能する可能性があることを示唆しています。


【片頭痛と自律神経の関係】

上記の文章でもお伝えした通り、片頭痛と視床下部の間の繋がりがあることが分かってきています。臨床的にも自律神経の調子が悪い時、自律神経に負担がかかった後などに片頭痛が生じることは珍しくありませんね。

脳の視床下部は自律神経、ホルモン分泌などをつかさどっています。視床下部と三叉神経、そして片頭痛との繋がりがあることは、片頭痛を引き起こす以下の様な要因からも想像つきますね。


【片頭痛を引き起こす要因】

・睡眠:寝不足だけでなく、寝すぎや長時間の昼寝などでも生じる。

・疲労

・ストレス:過剰なストレス、ストレスからの解放。
 不思議なことにストレスがかかっている仕事の最中よりも、むしろそれから解放されたときに片頭痛が生じやすい。仕事のある平日は痛みが生じることが少ないものの、週末などの休みの日に発作が起きやすい。

・強い刺激:強い光、大きな音、タバコ・排気ガス・香水のにおい

・人混み:人酔い

・気候:気圧・温度・湿度の変化
 気圧が大きく変動しやすい春や秋に起きやすい傾向。

・ホルモン:出産、更年期、月経や排卵

・入浴

・運動

・マッサージ

・食欲:空腹
 空腹で血糖値が下がったときにも起きやすい傾向。

・食べ物:赤ワイン、チョコレート、チーズ、オリーブオイル (血管を拡張・収縮させるポリフェノールなどが含まれる食べ物など)

顔にある三叉神経のトラブルと直接関係なさそうと思ってしまう項目であっても、そのほとんどが自律神経とは結びつきやすい項目ですよね。(※視床下部は自律神経の働きにとっても重要な存在)


頭痛の他の記事は、こちらのマガジンでご覧ください。


最後までご覧いただきありがとうございます🍀


アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏
より
日本アレルギーリハビリテーション協会
アレルコア
福のしま研究会
 YouTube(アレリハちゃんねる)noteでは、アレルギー疾患や自律神経に対する理学療法についてお伝えしています。

アレルギーや自律神経に対するリハビリテーションの講習会情報につきましては、以下のHPをご覧ください。

無料のLINEチャットでは、自律神経についての情報発信をしています。
LINEオープンチャット「自律神経の知識箱🎁」


【今後の研修会予定】

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『子供のケガと運動発達』

〜小児科看護師と理学療法士が運動発達から考える〜
アーカイブ動画視聴:10月16日〜10月31日まで配信
講師 小児科看護師 合津 裕子 氏
   理学療法士  及川文宏 氏

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主催:山形県理学療法士会

『自律神経に対する評価と介入』〜実技編〜

日時 11月11日(土) 10:00〜15:30
 ※対面のみ(アーカイブ無し)
会場 山形県立保健医療大学 
講師 及川文宏
内容 人々の身体は自律神経が大きく関与しており、女性の身体のみならず様々な患者様に対して、その評価と介入が重要となります。昨年度、及川文宏先生を講師に「自律神経に対する評価・介入」と題して、オンライン研修会を開催しました。好評につき今年度は実技編を企画し、実際に対面形式で実技を通し、臨床で活かせるような知識と技術を学べる研修会です。
申込
・セミナー番号 115507
・講義番号 242057

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自律神経セラピストBasicコース
【アーカイブ配信全9講座】

全9回講座(90分 × 9回)
①-1「概論:自律神経の解剖生理学」
①-2「自律神経を変化させる要因」
①-3「ストレスと自律神経」
動画公開期間:
2023年11月23日〜2024年 1月8日

②-1「血流(血管)と自律神経」
②-2「内臓と自律神経」
②-3「睡眠と自律神経」
動画公開期間:
2024年1月17日〜2024年 3月3日

③-1「神経・筋膜の機能解剖」
③-2「排便の運動学」
③-3「便秘の原因」
動画公開期間:
2024年3月13日〜2024年4月28日

※自律神経セラピストBasicコースの概要や講座の内容につきましては、こちらからご確認ください。

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