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【読書感想文】『組織の不条理』

(このnoteは3分で読めます。約2,800文字)
『はたらく哲学「キャリアと人生戦略」【佐藤優×北野唯我】後篇』というNEWSPICKSの番組で、佐藤優さんが『組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか』という書籍をオススメしていました。

日本陸軍の戦時中の戦略について、経済学理論を元に分析しそれを企業に当てはめていく、という構成に興味を持ち早速読んでました。

このnoteでは、菊澤 研宗さんの『組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか』についての読書感想を書きます。内容の要約でなく、あくまで私の感想ですのでご了承ください。主観的な感想も多くございますので皆さまの広いお心で読んでいただけますと幸いです。

【総評】
オススメ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★☆

【対象とされる読者層】
・経営者
・組織をどのように構築するか気になっている方
・経済学に興味がある方
・マネージャー
・『心理的安全性』を勉強している方

『エージェント・プリンシパル理論』『取引コスト理論』『所有権理論』などの経済学の用語が出てきます。私のように経済学を学んでいない人間からすると基礎的な説明から、その理論が具体的にどのようなものか実例をあげて説明してくれる本書は勉強になりました。

✅1、総評

1-1、経済学の勉強になる

『組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか』では、『エージェント・プリンシパル理論』『取引コスト理論』『所有権理論』という経済学の理論が3つ出てきます。

恥ずかしながら経済学の勉強をしたことがなかったため、初めて知った理論でしたが、本書には理論の説明がしっかりとなされていたためすぐに理解することができました。

そして、その理論を使って日本陸軍の戦略を分析してくれるため、どのように理論を使って分析すれば良いのかということも勉強になりました。

1-2、日本陸軍の戦略についての批判については、『1つの意見に過ぎない』という視点が必要

本書を読んで初めて知ったのですが、日本陸軍の戦略については軍事戦略に関する専門家がいろいろな分析をしており、評価は1つではないようです。

そして、それは経済学の理論を用いて分析をしている本書も例外ではありません。あくまで、本書で語られている分析は、経済学という眼鏡を通して行っている分析であり、他の観点もあるということは意識しておくべきだと思いました。

その観点を忘れてしまうと、あたかも本書で分析されていることが日本陸軍の戦略の良し悪しの全てだと勘違いしてしまいます。

1ー3、日本陸軍の問題点から企業の問題点へ進む構成は読みやすかった

本書の構成は、まず『エージェント・プリンシパル理論』『取引コスト理論』『所有権理論』について簡単に説明し、次に日本陸軍が戦時中行ったことをそれらの理論に当てはめて分析します。そして、2001年までの間の企業においてもその理論を当てはめ分析し、その示唆を提示する構成になっています。

歴史的出来事の分析から、現代企業にそれを当てはめていく構成は、とても読みやすかったです。

1ー4、『心理的安全性の構築』の必要性につながる書籍

歴史的出来事の分析を現代企業に当てはめていく箇所の結論としては『批判的に物事を捉え、その意見を発信しやすい環境を構築することが重要である。』なのではないかと思いました。

そして、それは言葉を変えると『心理的安全性の構築』になります。本書が出版された2001年ではまだ『心理的安全性』と言う言葉は普及していませんでした。

『心理的安全性』という言葉が広がったのは、Googleが社内向けに実施した『プロジェクト・アリストテレス』の報告からです。本書はそれに先駆けて『心理的安全性の構築』を書いているので、2022年現在にも通用する考え方だと思います。


✅2、印象に残った内容と感想

2-1、不条理な行動の原因は、人間の合理性

『不条理な行動に導く原因は、実は人間の非合理性にあるのではなく、人間の合理性にあるというのが本書を貫く基本的な考えである。』と冒頭『本書のねらい』で記載されています。

本書の中ではこの、『不条理な行動の原因は、人間の合理性』というキラーセンテンスが何度も出てきます。合理的に考えるがゆえに、一見不条理だと思われるような行動をとってしまうというのが、本書で伝えたいメインの事柄です。

本書で紹介される数々の日本陸軍の戦略は、『不条理な行動の原因は、人間の合理性』を伝えたいにすぎません。

2-2、まさに『心理的安全性の構築』

第10章 組織の不条理と条理の中で以下の内容が出てきます。これを読んだとき『まさに、『心理的安全性の構築』のことを言っている。』と思いました。

さて、組織が不条理を回避するためには、実は人間が限定合理的であり、品減が常に誤りうることを自覚しているかどうかが問題となる。より正確にいえば、われわれ人間は限定合理的であり、それゆえ常に非効率や不正が発生しうることを意識し、そして絶えずその非効率や不正を排除するような流れを作る「批判的合理的構造」を、組織が具備しているかどうかが重要となる。

K・R・ポパーによると、人間が限定合理的であることを自覚し、誤りから学ぶにためには、積極的に誤りを受け入れ、徹底的に批判的議論を展開することが必要となる。そして、もし誤りがみつかれば、将来、同じ誤りをしないように、それを排除するような新しい戦略・状態・制度を創造する必要がある。
第10章 組織の不条理と条理 3組織はいかにして不条理を回避できるか

批判を受け入れる、批判をすることができる、というのは『心理的安全性の構築』なくしてはできません。自分のミスも改善することができれば受け入れられるという『心理的安全性』や、批判してもその人から報復を受けることはないという『心理的安全性』がなければ批判は生まれません。

その意味で、本書は『心理的安全性』という側面からも参考になる書籍ではないかと思います。


✅3、書籍紹介

※冒頭部分に記載した内容を再掲します。

【総評】
オススメ度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★☆

【対象とされる読者層】
・経営者
・組織をどのように構築するか気になっている方
・経済学に興味がある方
・マネージャー
・『心理的安全性』を勉強している方

『エージェント・プリンシパル理論』『取引コスト理論』『所有権理論』などの経済学の用語が出てきます。私のように経済学を学んでいない人間からすると基礎的な説明から、その理論が具体的にどのようなものか実例をあげて説明してくれる本書は勉強になりました。

過去の読書感想文はマガジンでまとめております。ぜひ読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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