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今年のBRICSとG7会合の感想。

2022年は中国が主催者だったBRICSおよびBRICS+集会が世間を賑わわせたあまり、僅かな時間差で開催されたG7の首脳会議の存在感も例年と比べて薄れた様に感じた。BRICSは、露からの域内予備通貨の提案、アルゼンチン、イランの加盟申請とサウジアラビアの加盟を示唆する勢いが見えている一方で、他方のG7は、写真の撮影の話しと、抽象的な表現だらけの共同声明と、ウクライナ支援の掛け声程度で終わった。今回はこれらの一連の出来事について感想を述べてみたい。

BRICS

BRICSは元々、中国が中心として考えられた組織で、中でもブラジル、インド、南アは資源の確保と提供、露は技術力を担う想定だった。今では、BRICS加盟5か国の総人口がG7の総人口の4倍以上(言い換えるとBRICSは現在、世界人口40%程度を束ねる)、領土面も言うまでもない、経済ポテンシャルも、昨今の露封鎖が上手く行っていない状況を鑑みるとやはりBRICSは強いと言わざるを得ない。更にBRICSプラスも日に日に活動範囲を広げており、G7とは異なる開放的な雰囲気を伺わせる(少なくとも今のところ)。もう少しBRICSの話しをすると、インド、南ア、ブラジルの様なはっきりとした元植民地、中国の様にかつて英の影響範囲に入っていた国、露の様にソ連崩壊後に滅亡が時間の問題とされていた国が集まって今や世界を纏められる程の実力を持とうとしている。
ここで一つ、伝えておくべきニュアンスがある。すなわち、当初は中国が中心的存在となることが想定されていたBRICSは現在、露が中心となっていると認めざるを得ない。中国からするとこれは面白くないかもしれないが、今の状況ではこの流れに沿う以外に選択肢がないだろう。

G7

BRICSに限らず、世界での露の立ち位置が変わってきたことを示すもう一つの出来事は、今年のG7会合だった。インターネット上で既にメム化する程広がったG7首脳陣の集合写真撮影のエピソードだったのではないだろうか。英ジョンソン首相が仕掛けた撮影のために服を脱ぐか否かの件(上半身裸で写真撮れば、プーチンより強そうに見えるかどうかの話し)、やたらと主張されるG7国家間一致団結の話し(世界の先進7ヵ国がわざわざ一致団結を主張する必要はなぜあるのか)、そして二言目にプーチンの名前。ウクライナ云々もあるが、それもやはり対露の話しに繋がらざるを得なかった。少し余談になるが、ホワイトハウスのウェブに載っているもので、米大統領の公式スピーチにプーチンの値上げ、プーチンのインフレとある。常人はこれらの一連の流れを見て本当にプーチンが悪人で世界中を操っていると思うのか。それとも、所謂先進国が所謂一致団結をしてもプーチンには敵わなくなってきたと思うのか。だとしたら、G7の首脳陣(とその裏にいるであろう様々な影響勢力)が目指していた効果と真逆の結果にならないのか。

所感

上述の如く、G7を中心とした西側諸国がこれだけ恐れるプーチン大統領は、これで喜んでしまって調子に乗らないといいのだが(謙虚そうな性格に見えるので、そんなことはないと思うが)、やはり風向きが露に有利な方向に変わり始めていると言わざるを得ない。米フィナンシャル・タイムス紙が言う様に、西側は露を孤立させられなかった。そして、この状況が今のまま進むと、G7を中心とした西側が力を合わせてもやはり露に勝てなかったことを意味するのだろう。そうなると、つまり露が勝つとなると、以前の投稿で触れたルースキー・ミール構築への大きな布石となるのではないだろうか。

歴史を振り返って見ると、西側は今までも何度も対露戦争を起こして一度も勝利していない。1612年(ポーランド)、1709年(スウェーデン)、1812年(仏)、第二次世界大戦(第一次世界大戦と第二次世界大戦は同じ戦争の第一段階と第二段階に過ぎないという見方をする人もいる)の何れも単一国家が露と戦った訳ではなく、当時の西側諸国が一丸となり露を襲った訳だ。大体100年毎に西側が集まって対露戦争を始めるという計算だ。その時々の露の過ちは、世界に自ら提供できるイデオロギーは明確でなかったことだ。そして今は、そのイデオロギー、そのイデオロギー故、得られる具体的な価値が明確になりつつあり、自らの有利な立場を保ちたいG7を中心とした西側諸国以外の世界は、そのイデオロギー=ルースキー・ミールに共感するのではないだろうか。さて、プーチン大統領は、どこまで考えつくし、どこまで世を変えようとしているのか?引き続き見ていきたい。

今日はここまで。

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