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アルカリ性じゃない石けんは「合成洗剤」だということと、健康なお肌を保つケアの話。

前回、お肌のバリア機能を極力壊さず、健康な肌を守りながらも汚れを落とすことができるものとして、「石けん」をご紹介しました。

洗った後、顔であれば、化粧水をつけたりしますよね。今回は、健やかなお肌を保つための洗った後のケアについて、『ウソをつく化粧品』(小澤貴子 著、2015年刊行)より抜粋・編集して、ご紹介します。

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お肌の新陳代謝を促すコツ

 肌のバリア機能がきちんと働いている健康な肌の人の場合、肌のバリア機能を守らなければならないといって、ただ単純に肌を保護するだけでは肌の健康は保てません。
 現代は、肌を過保護にしすぎていると感じます。
「肌は絶対にこすっちゃいけない」
「石けんをよく泡立てて、きめ細かな泡でやさしく洗いましょう」
 最近は急にこんなふうにいわれるようになりましたね。
 昔ながらのお肌のお手入れを調べればすぐわかることですが、私たちの肌は、本来そんなにも弱いものではありません。健康な肌なら、適度な刺激がお肌を活性化させます。あまりに過保護でいると、肌が厚ぼったくなったりして、さらなるトラブルを招きかねません。
 大事にしすぎて栄養なんて与えようものなら、「不全角化」の原因になります。
 触るとぬるっとするアルカリは、安全な洗浄剤として昔から使われてきました。ジャングルの動物は泥や粘土を体にこすりつけて、古い皮脂を落とし、新しい油と置き換えようとします。弱酸性の肌と反対の性質であるアルカリが、肌に適度な刺激を与えます。その刺激によって、新陳代謝がうながされ、より健康で丈夫な皮膚になり、結果的に美容につながります。石けんで、安全に古い皮脂を取り、古く硬くなった角質層を少しずつ溶かしていく。ほんのつかの間、肌が無防備になる瞬間をつくって、皮脂の分泌や強い皮膚が必要なのだと肌に感じさせるのです。
 もちろん、ほうっておいても、皮脂の分泌により、肌は酸性にもどりますが、女性の場合は年齢とともに皮脂分泌の機能が衰えるので、十分な中和には時間がかかります。洗顔後は、酸性化粧水で酸度を補い、中和し、肌を引き締めるといいでしょう。ほんとうに美容のことを考えた化粧水は、適度な刺激があるものです。常に新しい皮脂や角質層でいることが肌のバリア機能を高く保つコツです。ですから、肌の新陳代謝をうながす刺激が美容につながるのです。

アルカリ性の石けんで洗ったら、肌を中和させる

 弱酸性の肌に対して、石けんのアルカリは、古く硬くなった角質層を溶かして、新しい角質層の形成をうながし、残された石けんカスは、お肌に棲む常在菌のエサになります。
 石けんカスになった時点で、洗浄力は失われています。
肌に残ったアルカリは、皮膚上の酸と出合うことで、あるいは酸性化粧水を使うことで中和されて洗浄力を失い安全化します。
 健康な皮膚であれば、酸度を保つ恒常性(本来のあるべき状態に保とうとする性質)がありますので、皮膚を洗浄しても、しばらくするとまた皮脂膜が形成されます。それに、アルカリ性の石けんといっても、よくすすぎ、放っておけば自然に中性の㏗7近くまで下がります。
 よく、水がやわらかい、硬いといいますが、硬い水にはカルシウムやマグネシウムなどが含まれています。にがりに含まれる成分と似ています。ミネラルという人もいます。比較的やわらかい日本の水道水にも含まれていますし、人の皮膚や髪にもこのような成分が付着しています。
 石けんはこうしたものと反応して、石けんカスをつくり、洗浄力を失います。髪を洗ってキシミを感じたり、顔を洗ってつっぱるのも、この石けんカスができるからです。しかし、石けんカスは、酸によって溶けます。だから、髪を石けんで洗ったら、お酢で洗い流せば櫛通りはもどりますし、酸性化粧水を使えば顔もつっぱらないのです。
 アルカリ性の石けんで洗い、酸性化粧水で肌を中和し、常在菌が過ごしやすい環境を整え、酸の刺激で肌を引き締める。これが本来の肌のお手入れです。

弱酸性の石けんは、石けんではなく合成洗剤

 ここで注意していただきたいのが、アルカリ性でない石けんは、石けんではない、ということです。
 石けんは、「脂肪酸ナトリウム」か「脂肪酸カリウム」のみを原料としてつくられます。
 洗顔や浴用の化粧石けんの成分表示には、これらの原料を使用した場合のみ、「石けん素地」と表記することが許されます。
 雑貨扱いとなる台所用や洗濯用は、石けんであれば、裏面に「石けん」と表示されています。裏面の成分に「複合石けん」と表示されているものは合成界面活性剤が配合されたものですが、広告や商品のパッケージも、いかにも石けんをうたうものが多いので、気をつけてください。
「肌は弱酸性。だから、弱酸性の石けんが肌にはいい」とよくいいますが、弱酸性の洗浄剤は、合成界面活性剤を使用することでしかつくれません。通常の石けんをつくる製法で、酸性の石けんができることはありません。本来アルカリ性の石けんに含まれる「脂肪酸ナトリウム」「脂肪酸カリウム」などの洗浄成分は酸性の状態では、洗浄力が激減します。肌の中和能によって石けんは無力化するから安全なのです。しかし、あえて酸性の石けんをつくるには、合成界面活性剤の存在が必要になります。洗浄力を補うために酸性でも効力を発揮する合成界面活性剤を添加するのです。
 つまり、弱酸性石けんは、合成界面活性剤が添加されており、石けんではなく合成洗剤だということです。アミノ酸系石けんも同じです。これらはアトピー肌用や敏感肌用などの医薬部外品として、全成分表示の義務がないボディソープなどに多く見られます。弱酸性石けんに配合された合成界面活性剤は表皮に残って洗浄力を失うことなく、皮脂や角質細胞間脂質を洗い流し続けます。結果として肌は乾燥し、あれてしまいます。

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(編集部 杉浦)

Photo by Kimia Zarifi on Unsplash


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