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【マネジメント】「会社・チームの空気」を変えるテクニック

こんにちは。
フォレスト出版の森上です。
 
結果を出す会社や組織、チームは、「場の空気」を大切にしています。会社やチームの空気を変えたい――。
 
そう思ったときに、間違った対策をしては逆効果であることは、このnoteでもお伝えしてきました。
 

では、「自分の組織やチームの空気を変えたい」と思ったら、具体的にどのように変えていけばいいのか? リーダーとしてやるべきことは何か?
 
横山さんは、著書『「空気」で人を動かす』の中で、「チームの空気」を変えるためのテクニックを複数紹介しているのですが、今回は、そのうちの1つのテクニックを解説している箇所を一部編集して公開します。

「空気革命」基本テクニック

 これからいよいよ「空気」を変える基本テクニックをいくつか紹介していきます。
 ここでは、部下が5人ほどいるリーダーを想定しています。部下5人という想定は、「統制範囲の原則」(Span of Control)に基づいています。
 これは、チームの規模や立場を問いません。社員10万人・1兆円企業の会長であっても、社員50人の会社の社長であっても、「リーダーが直接影響を与えられる人数は、5〜7人程度である」という原則に基づきます。
 では、さっそく解説していきます。なお、これらのテクニックは、複数組み合わせて実践しないと効果がないことを頭に入れておいてください。
 3つのテクニックで「空気革命」を実行しましょう。

「空気」に向けて発信する──「空気革命」テクニック①

 人を変えるのではなく、「空気」を変える。
 そのために大事なことは、「空気」が変わるまで、「空気」に向かって、部下に伝えるべき情報をリーダーが発信し続けることです。
 まずは、表面的な空気を整えていきます。この段階では、まだ空気革命は起きません。まずは「下地」をつくることからスタートするのです。

①「1対1」の環境では声をかける

 あまりにも「当たり前」「普通」のことですので、短めに説明します。
 メンバーに対する、日ごろからの挨拶、ねぎらいの声がけをしましょう。相手に関心を寄せることによって「存在の承認」ができるからです。「行動の承認」ができなくとも、相手の存在自体を認めることはできます。
 リーダーが従業員やスタッフに対して「無視」「無関心」を装っていたら、「場の空気」が良くなるはずはありません。
 これから「空気革命」を起こそうと決めたら、これまで以上にメンバーに声をかけていきましょう。
 仕事の悩みを聞くとか、問題解決のために協力するとか、そういう深い内容ではなく、「おはよう」「お疲れさま」「今日は天気がいいね」「昨日のテレビ見た?」「週末、天気崩れるらしいよ」「お子さん元気?」といった挨拶や雑談でいいのです。
 私の場合、短ければ数秒、長くても「2分以内」で終了する雑談を心掛けています。
 これを習慣にします。気がついたらするのではなく、1日1回ぐらいは実践するのです。
「空気革命」の下地をつくっていくために不可欠のことです。

②「1対多」の環境をつくって発信する

 リーダーと上司が「1対1」で向き合い、面談などをするのは、人を変えようとするやり方です。「空気」を変えるには「1対多」の状況で、リーダーが情報発信を行なっていくべきです。
「1対多」とは、朝礼や会議の冒頭に、メンバー全員が同じ場所に集まっている環境、あるいは、一斉メールなどリーダーからチームメンバー全員に同時に情報発信できる環境のことです。
 誰か特定のメンバーに向けてではなく、全員に向かってリーダーが情報を伝えていくのです。
 下記の3つを使って、アクションをとることをおすすめします。

◉朝礼や会議などの講話……チームメンバーをできるだけ集めて、繰り返し同じことを言う。
◉協調者との対話……あなたの意見に同意してくれる人間と会話をし、その内容がチーム全員に聞こえるようにする。
◉メールによる情報配信……メンバー全員に向けて、何度も伝えたいメッセージを送る。

 なかでも、「①朝礼や会議などの講話」のように、直接会って発信する「単純接触」のコミュニケーションは、「③メールによる情報配信」などに比べ、表情やしぐさといった非言語データを伝えられるので、特に有効です。話す内容に関しては後述します。

③「8カ月間」は続けるつもりで、同じことを発信する

 チーム全体に染み込ませる感覚で、何度も同じ情報を発信しましょう。繰り返すことがとても重要です。すぐに成果を求めるのではなく、長い時間をかけて変革していくつもりで発信するのです。
 1人ひとりに伝えるのではなく、チーム全体の「空気」に投げかけるイメージで行ないます。
「部屋の空気が少し汚れてきたな」と思ったら、消臭剤をシュッとひと吹きしますよね。すると、霧となって広がり、フレッシュな空気になる。「シュッ、シュッ」とひと吹きするあの感覚で、チーム全体に向かって何度も伝えるのです。
 私たち人間を含め、動物は、ある「刺激」を受けると、脳が「刺激」という情報を受け取り、その情報を身体に伝達して「反応」させます。
「条件反射」という言葉を聞いたことがあると思います。生理学者パブロフ博士によって発見され、「パブロフの犬」の実験で世の中に知られています。
 この実験では、「犬にある音を聞かせ、その後にエサを与える。犬はよだれを垂らしながら、エサを食べる。これを繰り返し続けていくうちに、犬は音を聞いただけでよだれが出るようになる」ということが証明されました。
 実際、私たちも「すっぱいレモンを思い浮かべるだけで口の中に唾液が出てくる」などの出来事を通して「条件反射」を体験しているはずです。「条件反射」とは、脳の「刺激│反応モデル」の象徴的な例と言えます。
 リーダーは、この脳の「刺激│反応モデル」を把握し、空気を変える仕組みをつくっていきます。
 同じことを何度も伝え続けることにより、チームメンバーの脳に「刺激─反応モデル」を形作ってしまうのです。そして、頭ではなく、身体が反応するレベルにまで落とし込むのです。
 これを「インプリンティング(刷り込み)効果」と呼びます。まさに「ブレない」ということです。
 8カ月間、誰か特定の人に同じことを言い続けるのは疲れるでしょうが、空気に向かって発信するのだと考えれば、それほど抵抗はないはずです。

④省略した「ぼかし表現」をしない

 第1章でも述べたとおり、日本語は省略されやすい言語です。そのせいで独特の「空気」が形成されていきます。
 ですから、正しい対策として、「省略」せずに情報発信することを心掛けましょう。意識の高い「自燃人」には伝わっても、「可燃人」「不燃人」には伝わらない可能性があります。
「今期こそは積極的にいこう」
「ベストを尽くすつもりでやってくれ」
「コスト削減を徹底してほしい」
 このような表現を「ぼかし表現」と言います。言葉をぼかしているので、空気もぼやけてくる、と覚えてください。
「積極的に」「前向きに」「ベストを尽くそう」「全力でいこう」というのはスローガンですから、こういった「ぼかし表現」を繰り返し浴びせても「場の空気」は変わりません。

⑤「4W2H」を使う

「ぼかし表現」を避けるため、細かいディテール(細部)をつくり込みましょう。
 英文法で皆さんよくご存じの「5W1H」は、「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」です。
 しかし、私は「なぜ(Why)」を省きます。これまで解説してきたとおり、「理由」など必要ないからです。
 これを変形させ「4W2H」とします。「誰が(Who)、いつまでに(When)、どこへ(Where)、何を(What)、どれぐらい(How much)、どのように(How)」となります。
「今期こそは積極的にいこう。新規開拓を徹底してやろう」
 ではなく、
「会社が始まって17年。今期で17期となる。最初の3年は10名弱でやってきたが、4期からは急激に人が増え、今では100名も超えた。営業所は4カ所に増え、東京営業所にいたっては60名を抱える大所帯となった。しかし問題も多い。前期、4つの営業所のうち、新規の開拓が目標に達したのは福岡営業所だけだ。そこでみんな知ってのとおり、今期は福岡を除く3営業所に2人の新規専門の営業を配属した。今期中に最低でも50社の開拓をしてもらう。想定外のことがあると思うが、なんとか達成しよう。毎月15日の経営会議で各所長から進捗を報告してもらう」
 時間、人、場所、物、数量、手法……、それぞれの軸で、細かく掘り下げて話すことで「改まって話している」という印象を与える効果があります。
 しかし、当たり前ですが、これを期初の方針演説で述べるだけで、それから省略しっぱなしでは困ります。

ぼかさずに、「空気」に向かって、何度も発信する

 前述したように、朝礼や会議、メールなどを使って、事あるごとに同じことを発信します。1カ月、2カ月、3カ月、4カ月……と、たとえ空気に向かってであろうが、毎回「改まって話している」という印象を与えることにより、表面的な空気は変わっていきます。
「社長、今回は本気だな」
「今期は、やらないとマズイかもしれない」
「そういう雰囲気になってきた」
 と敏感な人は察します。これだけで「自燃人」は水を得た魚のように、「やろう」
「新規開拓に力を入れよう」と受け止めるはずです。
 
 もう一度まとめます。
「ベストを尽くすつもりでやってくれ」
「コスト削減を徹底してほしい」
 といった「ぼかし表現」を数回、短期間のみ発信しても、効果はありません。
「4W2H」で落とし込んだメッセージを「空気」に向かって発信し続けます。8カ月以上は繰り返すつもりで実践してください。
 もちろん、これだけで「空気革命」が成し遂げられることはありません。ただ、こうして新しい「空気」が浸透しやすくなる下地をつくっていきます。

いかがでしたか?
 今回は、複数ある「空気革命」テクニックのうちの1つをご紹介しました。
 
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