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【マネジメント】間違いだらけの「チームの空気」改革対策

こんにちは。
フォレスト出版の森上です。
 
結果を出す会社や組織、チームは、「場の空気」を大切にしていることは、このnoteでも数回にわたって紹介してきました。
 
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現場に入って、目標を絶対達成させる超人気コンサルタントとして知られる、アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長の横山信弘さんは、「組織を変えよう」と思ったときにとってしまいがちな「間違った対策」があると言います。
 
その「間違った対策」に共通しているのは、「空気」ではなく「人」にフォーカスしている点。「空気」を変えずに「人」を変えようとするため、時間と労力をかけても、なかなかチーム改革が進まないと指摘しています。
 
具体的にどういうことなのか?
 
横山さんは、著書『「空気」で人を動かす』の中で間違った「チームの空気」対策を複数紹介しているのですが、今回は、その間違った対策の1つ「にわかコーチング」について解説している箇所を一部編集して公開します。

にわかコーチング──間違った対策①

 個人の潜在的な能力を開発する手法として「コーチング」は広く知れ渡るようになってきました。「コーチング」という言葉は市民権を得、個人レベルではなく、この手法を採用してスタッフの達成意欲を向上させようと試みる企業も増えてきています。
「コーチング」は、クライアント(個人)の能力を開花させ、目標達成に向けた行動変容を促す手法としてすばらしい技術です。
 しかし、注意が必要です。
 にわか仕込みの「コーチング技術」では、コミュニケーション相手の達成意欲を向上させるどころか、悩みを深め、かえって傷つけてしまうことがあるからです。
 私は「コーチング」の主要テクニックはもちろんのこと、プロのコーチも多く知っています。プロである彼ら、彼女らが、どれほどのトレーニングを通じてこの難解なメソッドを体得したのか、そのプロセスも理解しています。
 その経験を踏まえた上で、「コーチング」がうまく機能しない原因を2つ紹介します。

①コーチ(を名乗る人)のスキル不足

 私は前述したとおり「コーチング」の技術については精通しています。
 しかし、私はコーチではなくコンサルタントです。クライアント(企業)に「コンサルティング」はしますが「コーチング」はしません。私の部下に対してもコーチングはしません。それはなぜか?
 当たり前のことですが、私が「コーチング」のプロではないからです。知識はあっても、膨大な数のトレーニングを積んだ経験がありません。コンサルタントも同じですが、プロのコーチも日々の鍛錬が不可欠です。見よう見まねで実施するものではないのです。
「コーチング」するときに使うコミュニケーション技術は、もっぱら「質問」です。
 クライアントの中にあるリソース(資源)に焦点を合わせた、効果的な「質問」を通して、クライアントの頭の中を整理させ、別の視点から事物を照らして気づきを誘発させ、主体的な行動変容を起こさせ、そして、クライアント自らが設定する目標を達成させる。
 この支援をするのが、コーチの役割です。コーチは
「アドバイス」や「提案」などはしません。
「質問」が基本テクニックと書きましたが、これがまた難しいのです。何でもかんでも「質問」すれば良いということではありません。そして、何でもかんでも「傾聴」すればいいということでもないのです。目標達成のための行動変容を促す気づきを、「質問」によって引き出すのです。想像できるでしょうが、簡単ではありません。
 コーチが「効果的な質問」をするためには、質問の内容のみならず、相手とペースを合わせた呼吸・リズム・話し方に気を配らなければなりません。
 正しくペーシング(話し方や身ぶりを相手に合わせるコミュニケーション技法)できないと、相手は「誘導尋問」されている気分となり、頭の整理もできないし、新たな気づきも得られません。相手の呼吸のリズムや、物事の受け止め方、思考の揺らぎなど、一定の期間をかけてキャリブレーション(観察)し、クライアント特有の認知パターンを知ることが不可欠です。簡易なテストでクライアントを安易に区分するのは危険です。
 数日間の研修を受けただけのリーダーが、見よう見まねで部下に「コーチング」してみようとしたものの、部下が混乱して意欲が向上するどころか、悩みの袋小路に入って抜け出せなくなってしまった、という事例がたくさん出ています。
 コーチングのスキルは、基本要素だけでも多岐にわたります。生半可なトレーニングでは身につかないことを知っておくべきでしょう。

②コーチング対象の誤解

「コーチング」の基本的な考え方は、【答えは、クライアントの中にある】です。これを読んでいる読者の方も、聞いたことがあるでしょう。
 答えは自分の中にある。「わかってはいるのだが、なかなか行動が伴わない……」という場合に、コーチングは威力を発揮します。
 コーチングは、目標達成させるための行動変容を効果的に促すための技術です。
 しかし、ベースである「目標達成意欲」がない、そのための「能力」がない、というのであれば、コーチング対象にはならないと受け止めるべきです。
 今よりももっと速く走りたい、もっと高く飛びたいと願うアスリートに対して、コーチが手ほどきをするのと同じです。一般企業で言うと、経営者やマネジャーといったエグゼクティブがコーチングの対象クライアントにふさわしいと言えるでしょう。
 達成意欲もなく、どのような行動を起こすことで結果がもたらされるのか、皆目見当もつかない人材に「コーチング」は機能しづらいのです。
 この場合、必要なのは「ティーチング」と言えます。
 本書の帯に入ったキャッチフレーズ「『人』を変えるな。『空気』を変えよ」は、ここからきています。
「コーチング」は、チームではなく個人の行動変容を促す技術です。ですから、必ず「1対1」でなければなりません。「1対1」でなければ、「場の空気」をうまく活用できません。後述する「集団同調性バイアス」を利用できないのです。

にわかコーチングによる失敗例

 自分の中に、どうすればうまくいくかという「答え」がない人に、十分なスキルのないリーダーが「にわかコーチング」をすると、どうなるか。
「作話」しか出てこなくなるので、本当に気をつけなければなりません。「場の空気」が悪くなるからです。
 以下の会話を読んでみてください。
 
マネジャー「最近、残業が多いようだが、何か困っていることがあるのかい?」
部下   「困っていることですか。別にありません」
マネジャー「しかし、うちの部で、いつも一番遅くまで残っているよね」
部下   「はい。仕事がなかなか片付かないものですから」
マネジャー「何が原因なんだろう。ちょっと自分で考えてみようか?」
部下   「うーん……。そうですね」
マネジャー「何でもいい。どんなことが問題なんだろうか? 考えてみたまえ」
部下   「まあ、強いて挙げれば、今の仕事に気持ちが入らない、ということでしょうか」
マネジャー「仕事に気持ちが入らない……。なるほど。それは何が原因なんだろうか?」
部下   「もともと私はモノづくりに興味があってこの会社に入りました。ところが、営業に配属されてしまったのです」
マネジャー「確かに、そうだね。でも、確か面接のときに『営業でもかまわない』と君は言っていたと記憶しているよ」
部下   「そう言ったかもしれませんが、やはりモノづくりに対する気持ちは今も変わらず持っているんです」
マネジャー「そ、そうなんだ……。知らなかったよ。今まで一度も言わなかったじゃないか」
部下   「心に秘めたものがあったんです」
マネジャー「しかし君……。営業に来て5年も経ってからそんな」
部下   「営業をやっている以上、今後も情熱が湧くことはないんじゃないかと思ってるんです」
マネジャー「ちょ、ちょっと待て。まずは、営業で結果を出していこう。君の成績は下降ラインをたどっている。このままでは異動だってできない」
部下   「商品開発部に回していただきたいのです。そうじゃないと、どうしても仕事に身が入りません」
マネジャー「思いつきを急に言われても困るよ」
部下   「違います。前々からそう思っていたんです!」
 
 このように十分なスキルもないのに、相手の内面を掘り下げようとすると、混乱させる可能性があります。相手が強く「答え」を持っていない人ならなおさらです。
「ないものを探せ」と言われているのと同じで、質問を繰り返されると、仕方がなく中途半端な答えを無理やり出してしまうのです。
 しかし、いったん口に出してしまうと、「一貫性の法則」が働き、「前々から考えていたんです」などと言って「作話」が始まってしまいます。「場の空気」が悪くなって当然です。

「コーチング」がなぜ日本人に通用しにくいのか?

「コーチング」はすばらしい技術ですが、どういう人に対して、どのような行動変容を、どのような時間軸で実現させるかをキチンと押さえておきましょう。
 ポイントは、スキルと対象クライアントです。
 日本の学校教育は、教師と生徒との「自由な質疑応答」によって学びを深めるスタイルを従来とってきていません。どちらかというと「定型的な訓練の反復」を重視した教育スタイルであったと言えるでしょう(『「関係の空気」「場の空気」』参照)。
 どちらの教育スタイルが良いかということではなく、この事実から、多くの日本人にとっては、質問するほうも質問されるほうも、慣れていないということが言えると思います。
 本書は、スキルがなくても、誰でも人を動かすことのできる技術を紹介する本です。
「答え」を持っていない人を動かすために「場の空気」を変えていくことを推奨しています。
「なぜ動かないのか?」「なぜやらないのか?」の探求は、するべきではありません。人が動くかどうかは、「しっくりくる 」かどうかであり、相手の中に答えなどないのです。何だかしっくりこないので動かないのに、理由を聞かれるので、ついつい「作話」してしまうのです。
 人はどんなときに行動を始めるのか?
「しっくりきたとき」
 逆に、人はどういうときに行動をためらうのか?
「しっくりこないとき」
 ただ、それだけです。
「なんとなく楽しそうだったから、自分も参加してみた」
「みんな頑張っていたら、自然に自分も頑張ろうと思えた」
「まわりがみんなできていたから、自分もできるものと思っていた」
 そういった「空気」が人を動かすのです。

いかがでしたか?
 
「人」は変えるな。「空気」を変えよ。
 
これは、今回紹介した『「空気」で人を動かす』の帯で謳ったメインコピーです。その理由の一端をご理解いただけたのではないでしょうか。
 
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