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お肌のバリアを守りつつも汚れを落とすにはどうする?

先週、秋雨前線から一転して、残暑が厳しいと書いたのですが、また一気に肌寒い日々ですね。今日は近所の銭湯の熱めのお湯にどっぷり浸かりに行こうかなと思います。

前回は、油と水を混ぜる力が強力なために健やかな肌環境を壊しているという「合成界面活性剤」についてお話ししました。

私たちの皮膚を守る皮脂膜は、合成界面活性剤が配合されたクレンジングやシャンプー、ボディシャンプーなどの洗浄剤を使うと洗い流されてしまうのだそうですが、安全に肌の汚れを落とすにはどうしたらいいのでしょうか?
『ウソをつく化粧品』(小澤貴子 著、2015年)より抜粋・編集してご紹介します。

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安全に肌の汚れを落とすには?

 肌のしくみのところで説明したように、皮膚は、「皮脂」という油の膜で守られています。
 大切な革のバッグや靴に、クリームを塗って保護膜をつくっておくと、傷みにくくなり長持ちします。同じように、皮膚から分泌される「皮脂」という天然のクリームが肌を守っているのです。
 皮脂の成分は水と油からできています。ですから、肌のバリア機能を強化するためのクリームも油分と水分でつくります。ただし、単純に油分と水分を混ぜただけではすぐに分離してしまい、顔に塗ることはできません。そこで、界面活性剤を使って、油分と水分を混ぜているのです。現在化粧品や日常生活で使われている界面活性剤は「石けん」程度の作用の弱いものと、それよりも作用の強い合成界面活性剤の2つに分けられます。
 ただし、ここでの石けんとは、製品の成分表に「石けん素地」もしくは、「純石けん分(脂肪酸ナトリウム)」「純石けん分(脂肪酸カリウム)」とあるものにかぎります。詳細は書籍に譲りますが、石けんはアルカリ性のみで、弱酸性・中性・アミノ酸系と記載されているものは合成界面活性剤でつくられた石けんもどきです。それらを総称して「複合石けん」と表記することもあるので気をつけてください。
 化粧品成分としては、2007年の調査で、約8000強の成分が登録されていますが、合成界面活性剤は、そのなかでもっとも多く、全体の30~40%を占めています。

 化粧水やクリーム、クレンジングなどの基礎化粧品をはじめ、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、チーク、口紅、マスカラ、アイシャドウ、ムース、ポマード、染毛剤など、ほとんど全種類の化粧品に配合されています。
 化粧品製造に欠かせないものであり、化粧品成分の王様といってもいいでしょう。
 同時に、肌あれや乾燥肌など、肌トラブルの最大の原因となっているのも、この合成界面活性剤なのです。

「石油系の界面活性剤だから悪い」は間違い 

 石けんよりも作用が強い界面活性剤が「合成界面活性剤」です。
 では、界面活性剤のなかで、どんなものが危険で、どんなものが安全だと思いますか? 
 次のなかから危険だと思うもの、安全だと思うものを選んでみてください。

①合成界面活性剤
②石油系界面活性剤
③植物系界面活性剤・弱酸性界面活性剤
④オーガニック系界面活性剤

「①と②が危険。③と④が安全」と考えた方が多いかもしれません。残念ながら、はずれです。実は、肌に対する界面活性剤の危険度は、種類や濃度によって異なります。
「合成界面活性剤だからダメ」「石油系だから怖い」「植物系だから安心」「オーガニックなら大丈夫」といった単純な区分けで判断することは難しいのです。
 では、なにを基準にすればいいのでしょうか。
 次のように危険度の基準を考えればいいと思います。

【危険度の基準】
・危険な界面活性剤
 自然のものでも、合成のものでも、洗浄力や乳化力(混ぜ合う力)を保ったまま、皮膚に長く残って、皮脂を水に流出させやすくするもの。たとえば、洗浄力の強い合成界面活性剤。
・安全な界面活性剤
 自然のものでも、合成のものでも、皮膚のうえで洗浄力(または乳化力)が消えて皮脂を流出させないもの。たとえば、石けん。

 石けんはなぜ安全なのか? 

 説明したように石けんも界面活性剤の一種です。洗浄剤であり、乳化剤にもなります。
 それなのに、なぜ、石けんは安心なのでしょう。
 石けんはバリアを壊す力が弱いためです。「皮膚の汚れを落とす」という役割を終えたあと、石けんの成分はすばやく洗浄力のない物質に変化します。
 石けんには弱アルカリ性という性質があり、肌は弱酸性の性質を持ちます。洗顔後、石けんの成分(アルカリ性)は、皮膚の酸によって中和され、洗浄力を失って無力化します。つまり、肌のバリアを根こそぎ流出する恐れはありません。だから、皮脂を流出させにくいのです。
 しかも、肌に残った石けんカスは、常在菌のエサとなります。常在菌がエサを食べて元気になると、肌も健康になります。
 ただし、たとえ石けんでも一度に皮膚を何度も洗顔するなど、間違って使えば皮膚にプラスにはなりません。
 化粧水がしみたり、石けん洗顔でさえも痛みを感じるようなときは、石けんが使えないくらい肌が弱っているというときです。そんな状態の人はいくら石けんでも使用してはいけません。石けんも化粧水もメイクもなし。肌の健康がもどるまで水洗いです。
 皮脂の分泌は年齢とともに低下しますし、とくに女性は男性よりも皮脂の分泌量が少ないので、敏感肌や乾燥肌など肌の弱い方や高齢の方は注意が必要です。無水型のコールドクリームで古くなった皮脂を溶かしてぬれたコットンでオフします。肌の状態が許せば、蒸しタオルで顔の血行をよくしたのちに、石けん洗顔するのがおすすめです。肌に若干残留したコールドクリームが石けんの洗浄力をマイルドにしてくれます。けっして石けんで2度洗いはしないでください。そうやって古い皮脂と新しい皮脂をやさしく置きかえること、それがまた、皮脂を分泌する力を保つのに役立つお手入れなのです。石けんで洗えないという方は、焦らずに徐々に石けんが使える肌を目指してほしいと思います。

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(編集部 杉浦)

Photo by Claudio Schwarz on Unsplash

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