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煮物

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時間をかけて丁寧に。煮詰まりぎみ
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あまりにも強靭な

「旦那に世間話でもしようと庭先に足を踏み入れた僕は障子から垣間見たその雰囲気に気圧され
ただその畏怖にへなりと座り込んでしまったのです。罪深き僕の眼はその様子を映してしまいました。
なんの因果かおびき寄せられ引き寄せられ
僕はことの次第を覗き見ているのです。
白状いたします。」

青年が目撃した障子の中は次のようであった。

まだ障子から漏れる光が幾分か残る
冬の日の昼下がり
所々藺草が傷んでいる

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はりぼての「家族」 本当はちっぽけと気づきたい

はりぼての「家族」 本当はちっぽけと気づきたい

結構前に、家族に関係するとある作品を作って、多くの人に見てもらいました。
それは今までおおっぴらに話さなかった体験がベースとなっているもので
家族に煮詰まっていた何年間か前、自分を守るために作り始めたのを原作として改良した物語でした。
別に、いつまでも自分のためだけにこの物語があればいいと思っていたのに、ある時、誰かのプラスになる可能性もあると思っちゃって、世に出すことにしました。
今まで多くの

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告白の勝ち負け

告白の勝ち負け

7月から、もっというと6月下旬から、私の生活に大きな変化があった。
詳しく書くと、好きな場所に、前々から予定を決めてハイペースで行けるようになった。しかも、財布の厚さ薄さに関わらず。
ただ「いる」beingよりずっとdoing「も」する役割だけど、とても充実していて楽しい。

この役割を頂けたきっかけにある種の告白が絡んでいるので、恋愛感情じゃない告白について考えてみたい。告白の経緯をふりかえりな

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人生のトリミング

人生のトリミング

こないだ、同い年の人に偶然会って、「春からどうするの?」と問われた。
笑いながら暫定の予定を言ってごまかしたけど、苦しいな。
笑うしかない自分も、笑うしかない相手も。
将来は、あんまり考えないようにしていたことだ。時々電話する人たちも、遠慮し避けている話題。
きっと問うた人は来春の予定を胸張って言えるのだろう。私には苦しいから聞けない。
会えて嬉しいだけなのに、あの場面が返しのついた針のように抜け

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8月31日の感傷はウソ

8月31日の感傷はウソ

8月の終わりだから、軽率に文章を書きたくなった。

何かと8月31日は目立つ日だなと思う。31日の中では大晦日、12月31日の次に注目を浴びている。もはや夏の大晦日だ。

8月31日には何らかのイメージが共有されている。

多分最初に感じたのは通信教育・チャレンジの夏休みの課題に追われる主人公のマンガ。焦る少年の背景には8/31が刻まれた日めくりカレンダーがあった。

テレビでもnoteでも9月1

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引き合わせすれ違って越えていく

引き合わせすれ違って越えていく

三月の匂いと共に、
あの人は去っていった。
あの人のことは
好きじゃなかったみたい。

色々なことを
思い出すために、私は。

あーあ、忘れたくないのにな。

(「寂しさが、マジで鳴るなんて思ってなかったのに、まだ、あなたはそこにいるの?」フライヤーより)

今日は二駅隣の場所に用事。
電車に乗って数分で目的の駅名が呼ばれて、立ち上がる。

ここは大学入学時に知り合った友達が住んでいる駅。
二人と

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すずらんとうふふ

すずらんとうふふ

先日、下北沢で山本健介さんのテガキゴト展を観に行った。

ジエン社主宰の山本健介さんは会場にいて、話し込んでしまった。
気に入ったテガキゴトは持ち帰ってもよいということで、お賽銭を入れていくつかいただいた。

ふりかえったら生と死、人生に関するテガキゴトを持ち帰っていたことに気がついたよ。
あとは日向坂。山本さんのnoteのサムネイルに使ってる二枚をもらってしまって後からこれは作者の元にあるべきで

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関心・意欲・態度

関心・意欲・態度

「だってあなた、あたしに全然興味ないでしょう」

隣に座る彼女が、俺の顔を覗き込むようにして言った。何もかもが突然だった。
ふいに、嫌いになったの?と問われ、わけを聞き返すとそう答えられたのだ。

「いいや」
「ないのよ、わかるの、もう無理なんでしょ」
「そんなことないさ」
「ごめんね、あたしわかんないの。関心がないってことは好きじゃないってことでしょ、なんで?なんで一緒にいるの?」
「なんでって

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さけないの酒 のまないの酒

さけないの酒 のまないの酒

今日からちょうど一ヶ月後の八月二十一日。
初めてお酒を飲む、予定。

成人を迎えても、お酒は飲まなかった。誕生日の日はノンアルコールカクテルを嗜んだ。
親族から誕生日の贈り物としてワインが郵送されても押入れに入れた。花瓶にもなるようなデザインの瓶は、栓さえ抜かれない。
飲み会とはソフドリを飲む会だった。一つでもジュースになるよう率先して空のピッチャーを渡す時間。

飲まないことはさして苦しい事でも

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くつうへのひとくふう

くつうへのひとくふう

近頃は、うまくいかないことによく出会っているような気もするけれど、
ときどきは、自分なりのらいふはっくを思いつくので、まとめておく。
あくまで自分のために、今のところ、どんなことがうまくいかなくて、どんなふうにやってみてるかのまとめ。

昔はやみくもにできないことを悲しむばっかりだったけど、今はやり方を変えていこう、手段を変えようとじわじわ思うようになってきたな。

やれないときはやってないから、

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誰のせい

私が性別のことを意識せざるを得ない状況に長くいたからなのか、自分が生まれ持った性別を他人に指摘されるのが苦手となりつつある。
別に自分がこの性別であることに今強く嫌悪している訳でもなく、昔に比べたら受け入れている方なのだけど、どうにも男や女という言葉、特に書き言葉では、抵抗がある。
まあ、使っちゃうこともあるけど。男や女を使う文体というのも、すっきりしてて、飄々としてて、自分にはない文体だから面白

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いき、つづけて

いき、つづけて

死にたい人の何にもなれない

死別というものを経験したことはない
少なくとも記憶のあるうちは
近しい人を死によって失ったことはない

けど大切な人に会えなくなるということはあった
気持ちをつのらせても話すのは憚られ
重い想いを抱えてるのは悪いことで
教えてくれた音楽も香りも悲しい

そのうえ死が出てくるお話は全部その人が重なる

最近読み終わった小説、いっぱい人が死んでしまうんだ
ヒロインが自死

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