杞結
詩など。
自作の物語集です。
夏、平日。 公園のベンチにぽつんと座る私。 頭上に広がる大きな青空を見上げながら、そっと呟く。 「大丈夫だよ、イトホ」 夏めいた爽やかな風が、火照った私の…
もう叶わぬと 笑う君 背を眺めては 振向いて あなたはいいと 笑う君 瞳の奥は 自分だけ まだ戻れると 泣く僕は ただ言葉だけ 溢れ出て 冷めた心に 泣く僕の 思…
小川のせせらぎに 小鳥のさえざりに ただ静かなものに、あこがれて 明日の色から逃げ出したのは いつのことか…… たゆたう小舟のように 散りゆく桜のように さまようこと…
ベッドの上の喧騒 いつかの思い出が 波となって私に押し寄せる 真夏の砂浜 手を繋いだ彼の目は きらきらと輝いていた気がする 蒸し暑い夏祭り 荒波に飲まれる熱狂から 抜…
一 心地よい関係であり続けるためには、変化というものにひどく敏感でなければならない。 心地よい関係。例えば、恋仲の幼馴染だとか、相思相愛を気づかぬふりしている…
2024年7月21日 19:46
夏、平日。 公園のベンチにぽつんと座る私。 頭上に広がる大きな青空を見上げながら、そっと呟く。「大丈夫だよ、イトホ」 夏めいた爽やかな風が、火照った私の全身を包み込むように吹く。 どこか懐かしさを感じた私は、ゆっくりと周りを見渡す。 木々がかさかさと音を立てる。 大きな黒い影が同時に揺れる。 砂場に抜き忘れられた草も、一緒に揺れる。 ふふふ。 私は今どんな顔をしている
2024年5月6日 19:07
もう叶わぬと 笑う君 背を眺めては 振向いてあなたはいいと 笑う君 瞳の奥は 自分だけまだ戻れると 泣く僕は ただ言葉だけ 溢れ出て冷めた心に 泣く僕の 思いの矢さえ 命懸けあの子はいいと 笑う君 もうできないと 笑う君昔はできたと 笑う君 死ぬのが怖いと 笑う君伝わりえない 二方の 心なき日の 間違いが僕の心を 閉じ込めた 静かな世界 笑う僕
2024年2月29日 12:53
小川のせせらぎに小鳥のさえざりにただ静かなものに、あこがれて明日の色から逃げ出したのはいつのことか……たゆたう小舟のように散りゆく桜のようにさまようことを、許されたならば想いやまない長雨の夜にも笑っていたのかな……花火の不発弾のように鳴けずに死んだセミのように心に反して儚く消えてしまえたのならあっけなく過ぎていた思い出にも後悔はしなかった……はだかになった冬木の
2024年2月4日 06:29
ベッドの上の喧騒いつかの思い出が波となって私に押し寄せる真夏の砂浜手を繋いだ彼の目はきらきらと輝いていた気がする蒸し暑い夏祭り荒波に飲まれる熱狂から抜け出したのはいつのことだっけ小さな花火夜空の藍と公園の土と私にとってはふるさとみたいなもの病院のベッド白雪と緑葉のコントラストも八月に降った生暖かい雪の精霊ほら、丹光の中だよ私が愛した世界はねああ、神様が
2024年1月31日 13:39
一 心地よい関係であり続けるためには、変化というものにひどく敏感でなければならない。 心地よい関係。例えば、恋仲の幼馴染だとか、相思相愛を気づかぬふりしている男女だとか、一途に片想いし続ける後輩と先輩だとか。 そういう心地よい関係というものは、奇跡の具合で成り立っている。 ひとたびどちらかが告白してしまえば、その関係はすぐに変化してしまうのだ。もしかしたら、いやもしかしなくとも、交際とい