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或る物語。

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自作の物語集です。
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記事一覧

青空を手に取って

 夏、平日。  公園のベンチにぽつんと座る私。  頭上に広がる大きな青空を見上げながら、そっと呟く。 「大丈夫だよ、イトホ」  夏めいた爽やかな風が、火照った私の全身を包み込むように吹く。  どこか懐かしさを感じた私は、ゆっくりと周りを見渡す。  木々がかさかさと音を立てる。  大きな黒い影が同時に揺れる。  砂場に抜き忘れられた草も、一緒に揺れる。    ふふふ。  私は今どんな顔をしているだろう。  人生に疲れきって絶望した、偽の笑顔か。それとも必死にもがいて生き方を

スウィートビター・チョコレート

一 心地よい関係であり続けるためには、変化というものにひどく敏感でなければならない。  心地よい関係。例えば、恋仲の幼馴染だとか、相思相愛を気づかぬふりしている男女だとか、一途に片想いし続ける後輩と先輩だとか。  そういう心地よい関係というものは、奇跡の具合で成り立っている。  ひとたびどちらかが告白してしまえば、その関係はすぐに変化してしまうのだ。もしかしたら、いやもしかしなくとも、交際という関係にはいけるかもしれない。  しかし、それは必ずしもプラスであるとは限らない