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谷脇康彦著(2023)『教養としてのインターネット論』日経BP

インターネットの時代を俯瞰して理解できる良書

仕事の昼休みの時間にiPadでkindle版を読んでみた。難しい用語も無く、誰でも読み進めることができるだろう。

インターネットについては、漠然と便利なネットワークとして理解している人も多いし、わたしのように通信工学系でアメリカの軍事的なネットワークの仕組みから学んだ者もいて、同じインターネットを論じても様々な観点から違いが生じるものである。

本書は、昨今のコロナ禍やウクライナ戦争等を手始めに、広くデジタル技術やその利用に関して、客観的な検知から俯瞰して物事が論じられていく。

第2章のデータ資本に関しては、まさに現在注目されているところであり、それらのデータを用いた社会生活への応用が取り組み始めている最中でもある。

第4章のデジタル民主主義についても、どのようにガバナンスを効かせていくのかは難しい課題でもある。

第5章でインターネットの未来として、10の論点を挙げているが、個人的には論点1の有形資産と無形資産については興味をもっている。本書でも記載されている通り「無形資産であるデータの経済的価値を測定することが現時点ではできていない」訳で、これを数値化できるか否かに関わらず、これからの経営には必要で、かつ重要性が高い観点であることに違いない。特に、クラウドにあるデータが企業の盛衰に直接影響を与えている現在において、無形資産の重要度は日増しに高くなることが予測されるからである。

そして論点10のセキュリティと利便性とプライバシーについて、これら3つは相互に牽制し合っている対立関係でありながら、これらの要素の安定的なバランスが確保されている状況が、サイバー空間における信頼確保されている状態であるという見解は、まさにそのとおりである。

わたしは実務で情報セキュリティとDX推進を行っており、この論点10の相互に牽制する対立関係の中で、未来に活かせる信頼されるものを具現化する作業をしているため、この言葉の重さを日々感じているところである。

個人的には著者の谷脇さんが、今現在総務省の事務次官になっておられたなら、未来を託すべき政策に期待が持てたのではないかと思っている。その点は残念だが、しかし、こうして書籍となり、その考え方や知見を公開していただけることに感謝している次第でもある。

さらに、著者に新たな知見を期待するのは、欲張りだろうか…

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