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新潟でものづくりをするデザイナーです。フリーランスから30年デザインの役割を高める活動…

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新潟でものづくりをするデザイナーです。フリーランスから30年デザインの役割を高める活動を行っています。FD STYLEという名前で新潟の工場で商品を作り世界へ伝えています。

最近の記事

FD STYLE 湯たんぽの10年

FD STYLEの湯たんぽは2014年Good Design賞受賞しているので10年経つ。取扱いを始める時は製造ロットを販売できるだろうか?とかなり悩んだ。当時の僕には(今も変わらないが)資金的な余裕が無かった。 湯たんぽを使うときは何かしらのカバーに入れるからカバーに入った状態で「湯たんぽ」では無いか?と考えた。燕三条では湯たんぽ本体に最低限のカバーをセットした製品が普通であった。堅牢なステンレス製湯たんぽを売りにしているのだから、カバーはあくまで「おまけ」でしかない。お

    • ワイスケドリッパーのデザイン

      2023年10月26日から新潟県燕三条エリアで開催される「工場の祭典」に合わせてデザインしたコーヒードリッパーが発売になった。このドリッパーはツバメコーヒー店主依頼でデザインしたわけだが、そのことについて書いてみよう。 ツバメコーヒー店主とは10年くらいの付き合いになる。以前にコーヒー豆の計量スプーンを頼まれて作ったことがある。彼はその後もそれを使ってくれている。同じようなノリで「ドリッパーを作れないか?」と言われた。商品をつくるのは簡単ではない。多くの工場の人たちでさえモ

      • 鉄フライパン

        「日本製が魅力で商品には間違いないとのことでお客様が購入しておりました場合、日本製でもこんな程度かと思われてしまうことが弊社としても大変悲しいです。」 商品を販売していて、取扱店舗の方からこのようなメールをいただいた。 悲しいのはこちらの方だ。 30年にわたり産地で調理道具を中心に、商品をデザインしてきて、クライアントが恐れるのもこういう指摘だ。欠点があっても利点があるのだからと考えた商品開発をすると欠点の方を指摘される。そして商品はどんどん説明を省いても良い簡単なもの

        • 思わぬ展開に権利は何かと考える。

          新潟で工業デザイナーをやっている萩野と申します。先日自社の製品に使用している登録商標が大手クラウドファンドで使用されていて、止めてもらうべくメールを送りましたが、一向に進展しないというところまでnoteに書きました。起業等で新しいビジネスを始める人も商標登録について知っておいて損はないです。 なるべく下手にでながら至急の対応をメールでお願いしていると、はじめは自社は直接関与しないので、実行者(クラフトストアとかいう会社)と交渉するようにという逃げ腰の対応が少し変わってきまし

        FD STYLE 湯たんぽの10年

          商標登録を侵害された時に思ったこと

          新潟で商品企画や工業デザインをやっています。主に小規模な工場と日用品を中心に中でも燕三条という地域柄キッチン用品が中心です。自分達でも「FD STYLE 」(エフディースタイル)という名前でキッチン用品を販売しています。 僕らは立場上、意匠や商標と呼ばれる産業財産権に慎重になります。普通の人は何か作ったとき著作権が発生し、保護されます。僕のようなデザインを生業としていると場合によっては著作権では保護されず、産業財産権という特許庁で手続きしてお金を払う行為で初めて保護してもら

          商標登録を侵害された時に思ったこと

          地方でもプロダクトデザイナーが面白くなって来た。

          東京で働いた事も無い私が書くのも何だが、TENTのアオキさんが書いたnoteを読んで共感したので書いてみる。 https://note.com/aoki_tent/n/n586a6fea0a82 地方でもプロダクトデザイナーが面白くなって来たと。プロダクトデザインが請負いだけであったその昔、新潟でプロダクトデザイナーをする私に所属するJIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)の人は「良く地方でプロダクトでやれますね」とか言われたものです。 自分なりに理由として思いつ

          地方でもプロダクトデザイナーが面白くなって来た。

          挽物屋さんとペンをつくてみました。

          昨年までは「ててて見本市」という名前で毎年2月に開催されていた展示会ですが名称が変更になり、今年は商談会でした。 展示会には何かしら新製品を出そうと考えていて、今年はいつも商品の部品を加工してくれている株式会社和田挽物の長谷川さんにペンをつくりませんか?と提案して協力してもらいました。長谷川さんとはササゲ工業の棒さんの紹介で3年くらいのお付き合いです。 株式会社和田挽物は昨年40周年を機に会社名を変更し、社長が交代して若い長谷川さんが社長になりました。FD STYLEでお付

          挽物屋さんとペンをつくてみました。

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          包丁のデザイン

          包丁のデザイン

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          鍋について書いてみる

          ちょうど20歳でフリーランスになって30年経つ。「デザイナーって何をデザインしてるのですか?」と聞かれた時には「鍋やヤカンです。」と答えてきた。親戚の人からは「鍋やヤカンをデザインする人がいるのか?」と不思議がられるけれど、すべての製品はデザインされている。もちろん常に鍋のデザインをしている訳も無く、商品をイメージしやすいからそう伝えている。 実際に30年前は鍋のデザインを良く頼まれていた。燕や三条はステンレス製のキッチン用品を製造する工場が多く有り、中でも鍋は設備も多く必

          鍋について書いてみる

          何をつくれば良いのだろう?

          産地でものづくりをしていると「何をつくればよいか」という漠然とした相談を受ける。何をすればよいのだろう?漠然とした不安感の様なものがある。情報が爆発的に増え、既存のメディアが信頼できなくなるように、既存の流通からの情報に信頼がおけないのだろう。百貨店や専門店や量販店といった実店舗に加え、カタログ通販も良くないらしい。ネット販売が広がったのだから当然のことなのだけれど、既存店の中でも売れるものもある。一方で新しい流通やクラウドファンドの様な話題性で売るマーケティング手法が成功し

          何をつくれば良いのだろう?

          出来る事をやろう。

          廃業増えていますね。先日もNHKスペシャルでも大廃業時代と題したドキュメンタリーやってました。皆さんはどう思いますか。私はモノを作る事しか出来ないのでそれを止めようとは思いません。周りの賢い友人はモノが余ってるのに作ってどうすると言います。モノよりコトだよと。 今の日本は白物家電はほとんど作られていません。情報通信機器も部品は別にして製品の多くは国内で製造されていない様に思います。頭の良い人が考えた結果なのでしょう。生産設備は日本製だと言う人もいますが気休めにもなりません。

          出来る事をやろう。

          私がやっている事

          文房具店の友人から「燕三条製のペーパーナイフ知りませんか?」と聞かれました。この時は会社の20周年記念で配るので、2500円で250個欲しいとの事でした。皆さんも普通にありそうと思うでしょう。これが意外と無いのです。産地で製造はしていてもOEMがほとんどで、特にギフト用の3千円位の製品を持っている工場が無いのです。逆に景品レベルの安価な製品は有るのです。 私はオリジナルのペーパーナイフを提案しました。300個くらい有れば可能だと考えました。加工工程さえ見えていれば、コストに

          私がやっている事

          地方でデザイン活動のススメ

          今でこそ、ネットの普及で起業とかフリーランスの情報が沢山あるけれど、私が始めた28年前は殆ど情報はありませんでした。今は良い時代ですよね。以前であれば、仕事を受ける為には「人の繋がり」しか頼れるものはありませんでした。地方だからかもしれませんが、何処の誰かもわからない人物に、自社の商品開発を頼もうなんて奇特な人はおりません。誰かの紹介にはじまり、それまでの実績とか経験とか共通点が有って初めて仕事を依頼されるという感じです。人の繋がりが無くては仕事も探せませんでした。 当時の

          地方でデザイン活動のススメ

          産業観光の話

          工場の祭典を知ってますか?三条市が行っているオープンファクトリーを中心にしたイベントです。大勢の人が燕や三条の工場を見に来るのです。実際に工場を見て楽しんで帰られるのかは分かりません。私から見ると主な工場が参加していはいません。産業観光は歴史的・文化的に価値ある工場や機械などの産業文化財や産業製品を通じて、ものづくりの心にふれることを目的とした観光をいうそうです。歴史的・文化的な価値という所とイベントの要素を合わせる難しさが有るのでしょう。 ただ実際に多くの方が三条市や周辺

          産業観光の話

          ステンレスの陽極酸化について

          新潟で工業デザイナーをしています。ステンレス製品はピカピカのモノを使い込んでつや消しになった状態が好きです。キチンと手入れして細かな傷が作り出す表面が美しくて、サテン仕上げと呼ばれる状態とは違います。デニムのジーンズに似ていると感じています。作為的にダメージを付けたデニムよりは履き込んだジーンズの方が素敵だと思います。 FD STYLEというブランドで商品を販売しています。ステンレスの製品が中心ですが、ほぼステンレス色の製品はありません。多くのモノがアノニマス化したものが好

          ステンレスの陽極酸化について

          誰のためにデザインするか。

          新潟でプロダクトデザイナーをやっています。グラフィックデザイナーは地方でも多いけれどプロダクトだけでやっているデザイナーは極めて少ないと思います。私がフリーランスになった25年前は今よりも少なかったと思います。理由はきっと仕事が無いからでしょう。振り返って見て、デザインを頼まれると言っても、デザイナーとして認められ頼まれるのと、クライアントの代わりに「作業」させられるのとではそもそもが違う。工場に例えれば自社商品を作れるのとOEMをする事の違いに似ている。 25年前の私は、

          誰のためにデザインするか。