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商標登録を侵害された時に思ったこと

新潟で商品企画や工業デザインをやっています。主に小規模な工場と日用品を中心に中でも燕三条という地域柄キッチン用品が中心です。自分達でも「FD STYLE 」(エフディースタイル)という名前でキッチン用品を販売しています。

僕らは立場上、意匠や商標と呼ばれる産業財産権に慎重になります。普通の人は何か作ったとき著作権が発生し、保護されます。僕のようなデザインを生業としていると場合によっては著作権では保護されず、産業財産権という特許庁で手続きしてお金を払う行為で初めて保護してもらえます。特許や実用新案や意匠登録や商標登録です。

特許や実用新案や意匠登録といった区分けがあるのは日本国内だけで、アメリカ等では(patent:パテント)として区別はありません。僕らの場合、意匠登録や商標登録は自分達でできるのでそうしています。とは言え、お金はかかるので必要最小限の権利保護を行っています。

僕らの商品が個別の商品名を持たないのはその為です。FD STYLE (エフディースタイル)が登録商標なので「ステンレス鍋」とか「鉄フライパン」といった一般名称で呼んでいます。一つ一つの商品に名前を付けてはコストがかかるし、それ以上に他社の権利を侵害する事を避ける為でもあります。登録していなければ、先に名前を付けていても後から登録する人がいれば名前を変えなければなりません。

「FD STYLE」以外に、鉄表面に独自の窒化加工を施した「OXINIT」も商標登録しています。今回この「OXINIT」という商標を使った商品を大手クラウドファンドでスタッフが発見したことから一連のやり取りを記載します。

修正依頼1

赤線で囲った中に商標登録のOXYNITと弊社デザインのロゴ。

修正依頼3

本文説明内にも同じく使用されています。

鉄フライパンは販売時点で錆びていては売れないので錆びないように塗装した製品と錆びにくく加工した製品があります。前者は鉄の上から塗装がされていて使用前にくず野菜などで焼き取る必要があります。後者は「黒皮(黒皮)」や「ブルーテンパ」と呼ばれる鉄を圧延する際にできる四酸化鉄被膜を保護膜としているものです。どちらのフライパンもシーズニングしながら四酸化鉄被膜を再生し上手に使うことで錆びを抑えられます。鉄フライパンは本来食材の表面を高い熱でサッと焼き、食材の持つうまみを閉じ込める事で、フッ素加工のフライパンとは比べ物にならない美味しい調理を可能にする道具です。一方で上手に使えないとくっついたり、錆びたりと扱いが、難しいと思われる道具です。窒化というのは鉄表面の硬度を上げる加工で摩耗性の向上に使われる加工でその窒化表面を四酸化鉄を発生させればシーズニングなどしなくても長く安定的に鉄フライパンの調理ができると考えました。そこで酸化と窒化からOXYNIT加工と名付けました。

資料1

2011年とか12年の頃です。この頃ユニクロを見て「フリース」がヒットしたけれど他社からもたくさんフリースが発売されて、その後「ヒートテック」が同じようにヒット!けれどもヒートテックは商標だから同じものは出ない。同様の機能性インナーは発売されるけれど、ヒートテックではない。考えてみれば「テフロン」や「シルバーストーン」も同様で窒化したフライパンの加工にも名前を付けて差別化しようと商標登録したのです。

実際に試してみて、ユニクロやデュポンのような大手と違い、僕らのような市場規模では効果は薄いなぁと感じています。これはあくまでも僕らの規模の問題で製品を開発して世に問う時に商標登録が最も強力な権利保護なのは間違いありません。特許や意匠と違い主観の入り込む余地はないからです。

当然の権利としてクラウドファンド運営会社に弊社の産業財産権を侵害しているので修正もしくは変更をメールで依頼しました。

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返事はこれ。

知的財産権の問題というけれど、商標登録は文字列であるので解釈の入る余地はないし、商品化されたものなら販売者に問い合わせろというのも分からなくはないけれど、商品化前のクラウドファンドなのだろうからそれを管理している会社が登録商標の表記を修正するか変更させれば良いだけではないかと考え再度メールで依頼しました。

商品を問題としておらず、私達の登録商標が意に反して使用されweb上に表示されることを管理者としてやめて欲しい。ただそれだけであると。現状のままでは私達の登録商標が使われていて、何かしら私達が関わっているような誤解を生じるので早急に対応して欲しいと。

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それに対する返事はこれ。知財通知窓口というのはこうしたトラブルの専門窓口だと思うのですが。そもそも、コカ・コーラやディズニーやアップル等の商標権を侵害していてもこのような暢気な対応なのでしょうか?返信の名前も間違ってる。

実行者と情報を共有して問い合わせていると書かれていますが「実行者」という人からの連絡もありません。そもそもクラウドファンドを実行する会社として知財の問題はある程度想定できるとして、責任が掛からない対応しか考えていないのだろうか。

企業のコンプライアンスが求められる現代において明らかに権利侵害しているならば強制力を持って対応する事も時には必要ではないか、またそうすることによってクラウドファンドが社会に浸透することにつながるのではないかと思うと残念である。

この後も進展があればnoteに残したいと思う。

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