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【怪我なく帰ってきてね!】ぺップシティ定点観測 PART①〜マンチェスター・シティ 22/23シーズン 戦術分析

いよいよ始まる、4年に一度のサッカーの祭典W杯。サッカー選手なら誰もが夢見る夢舞台。

今大会のW杯は非常に変則。欧州のシーズンが真っ只中約1ヶ月間の中断を経て行われる大会となっている。

そこで今回はマンチェスター・シティの22/23シーズンの定点観測と題して、開幕からW杯途中前までをPART1とし、今季の戦いぶりを振り返っていこうと思う。

ここまでのマンチェスター・シティの戦いぶりを簡単にまとめると、

ハーランド効果によるピッチ内外で大盛り上がりを見せた序盤。今までのペップシティにない豪快な形でゴールと勝点を積み重ねた。しかし調子は段々と下降傾向へ。

加わった豪快さや培った繊細さは徐々に影をひそめ、個人に頼る戦い方へと。

そしてW杯前最後の試合では今季ホーム初黒星。やや後味が悪い形で、選手たちを各国の威信をかけた戦いへと送り出す結果となった。

それではもう少し解像度を上げて、ここまでのペップシティの戦いぶりを振り返っていきましょう。

▪️新加入選手たちのフィット感

W杯イヤーと言うこともあり、今季夏の移籍市場は騒がしかった。マンチェスター・シティもここ最近で1番選手を入れ替えることに。

【シティ22/23夏の主な移籍】

IN:
ハーランド(ドルトムント)
アルバレス(リーベル・プレート)
オルテガ(アルミニア・ビーレフェルト)
カルバン・フィリップス(リーズ)
セルヒオ・ゴメス(アンデルレヒト)
アカンジ(ドルトムント)

OUT:
フェルナンジーニョ(アトレチコ・パラナエンセ)
ジンチェンコ(アーセナル)
ジェズス(アーセナル)
スターリング(チェルシー)

新加入選手がすぐにチームに溶け込むことは簡単なことではない。ましてや複雑なタスクが与えられるペップ・グアルディオラのチームでは、その難易度は他のチームよりも高くなるとよく言われる。

しかしそんな声を吹き飛ばすように、今季加入した選手たちはここまでよくフィットし活躍する姿を見せている。

◎アーリング・ハーランド

世界のどのクラブも喉から手が出るほど欲しい選手をシティが射止めた。

ハーランドはマンチェスター・シティに加入して即スタメンを獲得。そしてすぐさまチームにフィットしてみせた。

プレミアリーグのシーズンゴール数記録を悠々と超えるスピードでゴールを量産中。

ここまでプレミアリーグで奪ったゴール数は13試合で18得点。CLを合わせると17試合で23得点と超超ハイスピードでゴールを量産している。

シーズンが終わった時に何ゴール奪っているのか本当に楽しみだ。

◎フリアン・アルバレス

ペップシティに再びアルゼンチンの風が。

リバープレートからフリアン・アルバレスがやってきた。豊富な運動量と確かな技術、そして両足から繰り出される強烈なシュート。

ハーランドという絶対的な存在に影を潜めることなく、新たなシティの攻撃のピースとなっている。

ここまでシーズン7得点を奪っており、少ないチャンスの中で本当に献身的にプレーしている。

ゴールを決めると伝説のアグエロ先輩を彷彿とさせるパフォーマンスを見せ、マンチェスター・シティファンの心を鷲掴みしている。

◎カルヴィン・フィリップス

鬼才ビエルサの愛弟子

リーズ時代ビエルサの下、イングランド代表の主力まで成長した中盤のレジスタがやってきた。

フェルナンジーニョという中盤の要を失ったペップシティにとって申し分ない選手がやってきたと言えるはずだ。しかしここまで怪我の影響でスタメン出場はなし。

カタールW杯メンバーにはギリギリの選出。この夢舞台を皮切りにコンデションを上げまくり、後半戦チームを引っ張る存在になってほしい。

こんな時にフィリップスがいれば!というシーンや戦術が私的にたくさんあったので怪我なく帰ってきてね!

◎シュテファン・オルテガ

エデルソンのライバル出現か!?

絶対的守護神GKエデルソンのバックアップとしてやってきたオルテガ。

しかしその立ち位置をひっくり返すかもしれない!と期待を膨らませるほどのパフォーマンスを見せている。

出場はここまで3試合と決して多くはない。しかし出た試合では大きなインパクトを残している。

特にFAカップでのチェルシー戦では大活躍。チェルシーの決定機をビックセーブ連発でクリーンシート。攻撃でもビルドアップの起点となりMOMを獲得した。

バックアップには本当に勿体無いほどの力を発揮してくれているオルテガ。これからのシーズン、もっと彼の力に頼ることになるだろう。

◎セルヒオ・ゴメス

弟子から師匠へ渡されたバトン

マンチェスター・シティのキャプテンとは?
と質問された時、私は一目散にあの男の名前を挙げるだろう。

ヴァンサン・コンパニ

マンチェスター・シティを離れてからコンパニは母国のアンデルレヒトへ。その後現役を引退しそのままアンデルレヒトで監督のキャリアをスタート。

そこでコンパニ監督の下育ったのがセルヒオ・ゴメスだ。

セルヒオ・ゴメスは元々は攻撃的なポジションでプレーする選手だったが、コンパニが彼を左SBへコンバート。コンパニらしいというか、師匠であるペップらしさも伺えるコンバートだ。

そしてゴメスは左SBで才能を開花しマンチェスター・シティへやってきた(きっとコンパニがペップに薦めたに違いないと勝手に思っている)。

CLコペンハーゲン戦では退場処分を受けてからやや出場時間が減っていった印象。しかしまだまだ成長する余地のある選手なのは間違いない。

偽SBをやらせたらピカイチのスキルを発揮するゴメス。改善すべきはボール非保持の局面。

コンパニの下で成長したように、ペップの下でもさらに進化することを期待している。

◎マヌエル・アカンジ

「NEWコンパニ」になるのか

移籍市場ギリギリにDFアカンジがハーランドに続いてドルトムントからやってきた。

ハーランド同様に即チームに溶け込み、ここまで多くの試合でスタメンに名をつらねペップの信頼をガッチリ掴んでいる。

足元の技術はもちろん、対人の強さも際立っている。マンチェスター・ダービーでみせたラッシュフォードに走り勝つシーンは驚愕だった。

そしてこの選手にはまだまだ伸び代がある印象。年齢的にもキャリアの折り返しに差し掛かっているアカンジ。

熱狂的なマンチェスター・ファンで有名なリアム・ギャラガー氏(oasis)が発言したように、「NEWコンパニ」になれるのか。そんな期待感のある選手であり、ここまでのプレーぶりを見せている。

▪️加わった戦術と薄れた戦術

ここまで新加入選手.個人にフォーカスした話をしてきた。当然選手が入れ替わればチームの色は当然変わっていく。

ここからは、チームにフォーカスをあてた話をしていく。入れ替わった選手によってもたらされたメリットとデメリットとは?

◎ハーランド効果

ハーランドはペップシティにいなかったタイプの大型9番。そんな選手が入ったことで今までにないペップシティの形が見られた。

今までよりも早く豪快な攻撃

ハーランドという素晴らしい得点力を持つ大型9番がいることで、ペップシティの攻撃は今まで以上に早くなった。

手間暇かけることなくクロスを上げる。

ビルドアップを完了させ、サイドにボールが入ると早い段階でクロスを上げる。相手の守備が整う前に。そして中にはハーランドというストライカーがいることで得点を奪う形が増えた。

デ・ブライネの高速クロスに合わせる選手がとうとう出てきたのか!と思わせるゴールシーンも多く見られ、確実にペップシティの新たな形となっている。

◎ファイヤーフォーメーション

長年ペップシティは、ゴール前に大きなバスを置くチームの攻略法に頭を悩ませている。

それに対する一つの解答としてハーランドを獲得した。そしてそのハーランドの攻撃火力に油を注ぐように、新たな陣形を見せている。それが

6トップでクロスを浴びせる3-1-6陣形

プレミアリーグ第3節のニューカッスル戦、そして第16節のブレントフォード戦で今季みせた形だ。

どうしても点数が欲しい状態が条件で発動されるのが1つの特徴。なぜなら6トップということでリスクが高い戦術だからだ。

中で合わせるのはハーランド.アルバレス.ギュンドアンの3人のストライカー。左からは守備時には左SBを務めるフォーデンが、右からはデ・ブライネがクロスを上げまくる、非常に攻撃火力の高い戦術だ。

この形でニューカッスル戦では2点差を見事に追い付いたが、ブレントフォード戦ではカウンターをくらいは失点をした。まだまだ完成度が低い戦術だが、これをペップがどうこの戦術を使い分けていくのか楽しみだ。

◎失った繊細さと右の順足WG

攻めが早くなり豪快な攻撃が増えたことで、ペップシティの繊細な攻撃が少なくなった印象。

手間暇かけて相手のポケットを攻略し、トランジションプレスから何度も攻撃を仕掛ける形。複数の選手たちがぶつかることなく絡み合う攻撃。

そんな従来のペップシティらしさはやや影を潜めている、と感じるここまでの戦い。

また右効きの右WGがいなかくなったことが少しづつ戦術の幅や、攻撃の厚みを薄めてきている。

右効きのスターリングとジェズスが退団したことで、シティの右WGを務めるのはマフレズ、ベルナルド、パーマーと全員左利きの選手となっている。

相手や状況に合わせて、WGの利き足を変えて戦術を変えるのもペップシティの特徴。しかし今期は選手の退団に伴い右サイドで利き足の入れ替えが出来なくなってしまった。

それを補完するようにデ・ブライネが右サイドを務めることもあるが、やっぱり物足りなさもあるし、勿体なさもある。

デ・ブライネはやっぱり左右自由に動いてこそ攻撃を活性化させる男。

また左サイドから上がったクロスを合わせる、逆サイドの厚みと精度が落ちているのも気になる点だ。

後半戦、手に入れた戦術はより練り度を増すのか。そして従来のペップシティらしさが戻ってくるのか。

W杯期間中にペップはじっくり頭を整理し、きっと私たちサッカーファンに、ワクワクを与えてくれるプレーを考えているはずだ。

▪️ホームの声援

開幕からW杯のブレイクに入るまでのマンチェスター・シティの戦歴はこんな感じだ。

開幕から13試合無敗と好調の滑り出しを見せた今季のペップシティ。

CLグループリーグを首位通過。
プレミアリーグは2敗したものの、首位アーセナルを勝ち点差5で追う2位につけている。

14試合で首位に5ポイント差は開けられすぎだ!という声もちらほら聞こえるが、優勝した昨シーズンとここまでの勝点は一緒なのでそこまで落ち込む必要はないと思う(10勝2敗2分)

首位アーセナルとの直接対決もまだ2試合あるので、今の勝点差をひっくり返すチャンスと可能性は十分あるだろう。

そして開幕から際立っていたのが、ホームでの勝負強さだ。ホームサポーターの声援が、ピッチの選手たちの後押しとなり力となった。そんな試合が非常に多かった。

昨シーズンの優勝を決めた、最終節で見せたスーパー逆転劇のような、劇的な試合が今季ホームエディハドスタジアムで何度も見られている。

PL第3節.vsニューカッスル
後半2点差を追いついた同点劇。

PL第4節.vsクリスタル・パレス
前半奪われた2点を倍返し。後半一気に4得点で逆転。

CLグループリーグ第2節.vsドルトムント
1点のリードを許したまま残り5分。ストーンズのスーパーミドルに加えて、ハーランドのアクロバットシュートで一気に逆転。

PL第9節.vsマンチェスター・ユナイデット
衝撃の6発でダービーを快勝。

リヴァプールのアンフィールドのような。レアル・マドリードのサンティアゴ・ベルナベウのような。そんな難攻不落のスタジアムとエディハド・スタジアムも言われるような場所に是非なって欲しいな!

▪️後半戦の楽しみ

それでは、今季ここまでのマンチェスター・シティの定点観測が終わりに近づいてきました。

最後に後半戦の楽しみをお話しして終わりたいと思います。

◎ビックゲームが目白押し

シティはW杯前にプレミアリーグのビック6と対戦したのはたった2試合だけだった。よってW杯明けにはビック6との試合が目白押しなのだ。首位アーセナル、ポッター率いるチェルシー、天敵スパーズとはまだリーグ戦が2試合残っている。

またW杯明け1発目の試合はFAカップリヴァプール戦が待っている。

CL決勝トーナメントも始まり、前半戦以上に目の離せないビックゲームがマンチェスター・シティを待っている。

◎カルヴィン・フィリップス

怪我で出遅れているこの選手のプレーが本当に待ち遠しい。怪我からの復帰でぎりぎりカタールW杯のメンバーに滑り込んだフィリップス。

怪我なく、そしてコンディションも上がって帰って来てくれたら最高だ…

中盤の底でロドリと横並びに使われるのか。IHで起用されるのか。CBもあるのか?(かつてのバルサのマスチェラーノみたいな)パワープレーに出た際にロドリを前線に送り込み、フィリップスがカウンターを防ぐ役割…

妄想が膨らむばかり。

この男の存在はペップシティに新たな手札を増やすことは間違いない。後半戦彼の存在は要チェックだ。

▪️おわり

ここまでマンチェスター・シティの開幕からW杯前の戦いぶりを振り返ってきました。大変長くなってしまいましたが、最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました。

カタールW杯の影響で例年より過密日程で行われる今シーズン。本当に怪我なくマンチェスター・シティの選手たちが戻ってくることだけを祈っております。

ペップシティから送り出された16人の選手たちが、無事に帰って来れたら、今季、マンチェスター・シティがまだ見ぬ景色に出会える。それだけの戦力、チーム力があると思うので、本当に、

「怪我なく帰ってきてね!」

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