【時間の操り合い】チャンピオンズリーグ グループG第2節 マンチェスター・シティ×ドルトムント|マッチレビュー
2日連続の朝4時起きはまぁきついですね。眠気も凄い。それに拍車をかけるかの様に、今回取り上げる、マンチェスター・シティとドルトムントの試合は非常にゆっくり.ローテンポで前半で布団に戻りたくなる様な試合内容。いや、リアルタイムで見ていたサッカーファンの中にはそんな人はいたはず。
しかし、サッカーは90分。眠い目を擦って、早起きした甲斐が後半終盤にやってくることに。
そんな眠い、ローテンポの展開からどう試合が動いたのか?今回は『時間.スピード』を軸に試合を振り返っていくことにしよう。
▪️ゆっくりじっくり引き込むドルトムント
この試合の前日に行われたチャンピオンズリーグ.バイエルン×バルセロナ。この試合はハイテンポ.ハイラインで速い早いフットボールを見せられた。
しかし打って変わってこの試合は非常にローライン.ローテンポのフットボールを見ることに。同じ競技をやっているのか?と思うほどの変わり様。これもまたフットボールの魅力だろう。
アウェイに乗り込んだドルトムントは、世界一ゆっくりプレーするチームに、ゆっくりの展開を持ち込んだ。この試合シティよりもゆっくりじっくりプレーしていたのは彼らの方だったかもしれない。
シティに多くのボールを持たれることを前提に彼らのゲームプランは組まれていた。シティがボールを持つと自陣に撤退し、すぐさまブロックを形成した。
4-5-1の陣形でライン間.バイタルエリアを最大限まで圧縮し、シティのボールを外回りに誘導していった。
当然中央を圧縮すればサイドが開くのがサッカー。シティはサイドからの崩しもお手のものなのはサッカーファンならご存知の通り。
中央を締めるドルトムントに対して、サイドから侵入を試みるシティという構図が前半直ぐに出来上がった。大きなサイドチェンジで幅を取るWGにボールが入る。しかしシティの攻撃はそこで停滞させられることに。
幅を取るWGにボールが入るとドルトムントはDFラインを素早くスライドし、チャレンジ&カバーの状況をすぐ作る。またペップの十八番である、サイドからのポケット侵入も、ドルトムントの中盤3人がポケットへ走り込むIHに絶対についていく約束で防いでいった。
サイド深くまでボールを運ぶことはできたシティだが、そこから先が行き詰まる。ローラインなので背後のスペースも消され、クロスには多くのドルトムント選手に跳ね返されてしまう状況に。穴を見つけられず、後方でボール動かしているだけの状態になってしまい攻撃が完全に停滞いていった。
ドルトムントは焦ることなくじっくり、シティがボールをスペースのない中央へ差し込んでくるのを待ち、ミスを誘った。またサイドに誘導してプレー選択をジリジリ削ぎ落としてシティのボールを取り上げていった。
そしてボールを取り上げると、高い位置をとったSBの背後を狙って、前線の選手がサイドに流れてカウンター発動。一方のサイドの背後を取るとすかさずチェンジサイドで厚みを増しながらカウンターをうった。両サイドが高い位置を取るシティのSBの弱点を突くかの様に。
□いつも以上に突かれたシティのSB背後
シティのSBはインサイドに絞ったり、高い位置に上がったり、相手の出方や試合状況に合わせてその立ち位置を変えていく。
その為、ボールを奪われた際のカウンターの起点としてSBの背後が使われる事が多い。しかしこの試合はいつも以上にそこを突かれた印象。
なぜなのか?
シティのSBがまんまとドルトムントに誘い出された様に感じる。
ドルトムントのブロックは4-5-1の中央を最大限に警戒した陣形。サイドが開きやすい事は先程説明した通り。
その為シティはサイド攻撃が増える→SBの目の前にボールがあるシーンが増える→ストーンズ.ボールに関わらなきゃ!→オーバーラップ→マフレズのパス引っかかる→ストーンズのいなくなったスペース使われる→カウンター受ける
こんな循環を繰り返し、徐々にドルトムントが決定機を作り出していった。サイドにボールがあればどうしてもボールに関わりたくなるSBの心理もなんとなく分かる。でも上がった先のスペースはドルトムントに消され、ボールを回収される。
彼らの罠に自らひっかりにいっている様に感じた。
▪️ボールを持ってもゆっくり
シティの攻撃をゆっくりさせることで停滞させていったドルトムント。
ゆっくりさせる為にハイプレスは仕掛けず、ローラインで背後のスペースを消し、ボールを外へ誘導していったドルトムントのローテンポの守備にシティは完全にペースを乱されていった。
さらにドルトムントはボール持ってもゆっくりだったのがシティにとってまた厄介だった。ゴールキックもただただ長いボールを蹴ることはしなかった。ボールを出来るだけ長く持ってシティの攻撃を時間を削ぐ。プレスを集めてチェンジサイド。
GKと2CBはシティのプレスにビビらない度胸を持ち合わせていたことも大きい。
攻守でペース乱されたシティは後半ドルトムントにまんまと先制点を奪われてしまう。カウンターを起点にロイスに決定機を作られ、そして56分右からのCKからまたロイスに決定機を作られる。こぼれ球を受けたロイスがシュート気味のクロスを入れ込み、頭でベリンガムが押し込み先制したドルトムント。
完全にしてやられたシティ。さぁどうするペップ。背後を消されゆっくりボールを動かしても相手は食いついてくれない。中央も締められて、スピードも上がらず、ドルトムントのDFラインが後ろ向きになるシーンもほとんど作れていない。
ペップがとった策とは?
▪️チェンジオブペース。時間を操ったペップ。
失点直後ペップが怒りの3枚替え。ギュンドアン、グリーリッシュ、マフレズに変えてフォデン、ベルナルド、アルバレスが送り込まれた。
彼らに与えられたミッションは時間を早くすることだった。
まずはフォデン。右利きのグリーリッシュが入っていた左のワイドに左利きのフォデンが入ることで、切り返す事なくワイドでボールを受けるとすぐさまグランダーのクロスを送り込む。これにより少しづつドルトムントのDFラインが後ろ向きに。
お次はベルナルド。ベルナルドも同じく左利き。左のIHでフォデン同様に左サイドに流れた時はすぐさまクロスを送り込む。
そして最後はアルバレス。地味だがやっぱりシティのスピードを上げる上でこの男の役割は大きいと思う。アルバレスが入ったことで右の陣形をやや調整。中央にいたデブライネが右のワイドで。左効きのマフレズから右利きのデブライネが右サイドに入ったことで生まれる狙いは、先ほどのフォデンと似ている。
またアルバレスが入ることでトランジションプレスのペースが格段に上がる。奪われた瞬間のプレススピードが上がり、ドルトムントがボールを捨てるシーンも増えていく。
攻守でペースを上げたシティがドルトムントを押し込む展開に。これに対してエディン・テルジッチ監督が動いた。78分トップのモデストにかえてDFのニコ・シュロッターベックを投入し、後方の枚数を5枚にして逃げ切りをはかった。
しかしそれが裏目に。
後方に人をかけたことで生まれる代償を払うことに。
右の幅をとったデブライネが、手薄になった中盤に走り込んだストーンズへ横パス。バイタルエリアで前向きなったストーンズがミドルシュート。え?そんなシュート打てるの?と誰もが驚いたゴールが突き刺さり同点に。
そしてその僅か4分後。これまた手薄になったバイタルでカンセロが前を向くと、アウトパスクロス。それに合わせたのがハーランド。カンセロの訳の分からないアウトのクロスと、ハーランドの訳の分からないアクロバティックボレーシュートで僅か5分で試合をひっくり返したシティ。
▪️おわり
シティの2ゴール共にドルトムントの交代策直後に生まれた。これは監督の采配がどうのこうのと言われてしまいそうだが、シティのペースアップがそうさせたとも言えそうだ。
逆足WGから順足WGに変更して早い段階でのクロス攻撃へ。アルバレスのトランジションプレスで攻守にペースアップ。
ペースを変えて、時間を操ったペップシティが劇的な逆転を収めた。
今季入って何回目の逆転勝利?こんな逆転出来るチームじゃなかった。それは今までの話で彼らは進化をし続けているって事だね。ほんと飽きさせないペップシティ。毎度楽しませてもらってます。
次は代表ウィーク前最後の試合。プレミアリーグウルブス戦。あ!あの男がプレミアに帰ってきたチームだね。楽しみだ。
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