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茜色のグラデーション④

第十話

(ユリ)


冬の制服に身を包み、街路路を歩くとき。
冷たい風が脚を通り抜けて、タイツを履けば良かったと後悔する。カフェが目に入ると、温もりを求めてなんとなく足早になった。

カラン。

ドアを開け、君に向かって会釈をする。
すると君も会釈で挨拶をして「いつもの?」と聞くので「いつもの」と答えて、いつもと同じ席で勉強を始める。しばらくすると、ホットココアが運ばれてきて、ちょっと一息。

今日のは少し、ミルク多めかな。

特別なことないこの一連の流れに、私はいつの間にか安心感を覚えるようになっていた。その中にあるまだ安定していない味もちょっと楽しみになったりしている。

皿が重なった音、コーヒーを淹れている香り、人が会話をしている声。全てが、好き。

そんな気持ちに浸りながら勉強に集中していると、あはははは!!という大きな聞き馴染みのある笑い声が、カランという音と共に耳に届いた。身体が頭と心が理解する前にビクっと反応し、一瞬で胸の奥底が凍りつく。

私の通う高校に、この地域から電車に乗っている学生がいる可能性を想定していなかったわけではなかったけれど、完全に油断していた。


ああ…。

やめて…。

温もりのある大切な、”私”が生きる大気圏を壊さないで。

彼女たちが私に気づかないことを、心から願った。


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