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大きな夢と小さな夢

昭和の時代、喫煙は当たり前のような風潮で、大人も子供も煙草を吸っていた。

#喫煙

中学生の中でも喫煙率は高く、早い同級生達は入学した頃からすでに煙草を吸っていた。

 ある夏の日、中学二年生の私は同級生の一人が煙草を吸っているのを目撃した。私は好奇心から「煙草って美味しい?」と尋ねた。同級生は「吸ってみれば」と誘うように言った。私は初めて煙草を吸ってみた。
 しかし、私はむせて咳をし、吐き気も覚えた。頭もくらくらし、正直なところ、煙草はまずかった。

#気持ち悪い

 しかし、周りの同級生はみんな自然に煙草を吸っていた。私も何気なく煙草を吸うようになっていった。

 「こんな煙草をやめれない大人はだらしない」と高を括り、いつでもやめられると思いながらも、煙草を吸い続けていた。

#断る

中学三年生になる頃には、授業中でも煙草が欲しくなる感じがした。俗にいうニコチン切れだ。走ると息が切れ、苦しくなることもあった。中学生とは思えないような体調になっていた。

 放課後、学校帰りの途中、煙草の自動販売機で煙草を買っていると、同級生の浩司が声をかけてきた。「俺にもセブンスター買って」と頼まれた。私は首を横に振って断った。「なぜ俺がお前の煙草を買わアカンねん?」と問いただすと、彼はしぶしぶながらもしつこく言い続けた。「セブンスターを買って」私は腹を立てて答えた。「嫌や!」と。

 私は自分の煙草に火をつけた。浩司は自分の煙草に火をつけた。私は浩司に「煙草持ってるやんけ」と言った。彼と一緒に吸い始めた。その後、浩司とはしばらく一緒に過ごすことが増えた。彼はいつも学生服のポケットから煙草を取り出し、また吸い始めた。
 同級生が煙草を吸っていると、必ず浩司は言う「煙草一本恵んで」

 ある日、私は呆れて彼に言い放った。「お前、自分の煙草を持ってるやんけ!」と。彼はうなずきながら言った。「うん」

 煙草を吸いながら浩司と私は大きな夢を語った。「金」

#金持ち

「名誉」

#勇者


「地位」を手に入れたいと思っていた。

#地位

 私たちの夢は、世界的に成功し、豊かさと富を手に入れることだった。浩司も私も金持ちになり、贅沢な生活を楽しみたいと願っていた。また、名誉と評判を得て、人々に尊敬される存在になりたいとも思っていた。そして、地位を確立し、社会の上層部で活躍し、大きな影響力を持ちたいとも思っていた。
 そして、私たちは高校生になった。煙草を吸い続けていた。高校では昼休みに煙草を吸うだけでなく、缶ビールまで飲む同級生もいた。

 そして、卒業後、私たちは大人になった。しかし、煙草はやめられなかった。私たちはもはや情けない大人となっていた。

 時は流れ、煙草は有害であり、煙草の煙は周囲にも影響を与えるということが世界的に認識されるようになった。公共の場からは灰皿が撤去され、煙草を吸うことは社会的にも非難されるようになった。

 禁煙外来に通い始めた私は、そこで久しぶりに浩司と再会した。私達はため息混じりに「情けないな」と言葉を交わした。世間では私達は老害と呼ばれ、さらには煙草を吸うこと自体が公害とされている。

#禁煙

 私たちは煙草税をたくさん納めながらも、肩身の狭い思いをしていた。もう、社会的にも孤立した存在だった。

#税金

 そして、思い返す。この歳になっても煙草をやめられない禁煙外来を受診している自分たちを。もしタイムマシーンがあるのなら、現在から過去の喫煙を始めた自分に会いに行きたいと思った。

そして、「煙草はやめなさい」と警告したい。

浩司と私は言葉を交わす、「煙草なんか覚えるんじゃなかった」と…

 今では浩司と私の少年時代の大きな夢が中年のささやかな夢と変わり、禁煙を実現し、健康を手に入れ、年金を受給することに変わっていた。

#健康

禁煙を達成することで、健康維持に努め、将来の健康を守るための第一歩を踏み出したいと語った。

#年金

 また、年金の受給によって、将来の経済的な安定を確保し、老後を安心して過ごすことができるようにしたいと二人は老後破綻を心配している。

#老後

 これらの小さな夢を達成することで、中年期を充実した人生の転換期と捉え、健康で幸福な人生を送ることが目標だと病院の待合室で浩司と言葉を交わした。

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