神秘の泉
小さい頃から無意識に寂しさと友達で
いることを選びがちだった。
両親は共働きで、日中の世話は祖母がしてくれていた。
ひとりっこで周りが大人だらけだから
一人で遊ぶ時は空想力が必要だった。
そんな私の楽しみのひとつは、デパートに
連れて行ってもらえることだった。
デパートにつくと私は決まって
子供広場に走っていった。
祖母からもらった100円玉を強く大切に握りしめて、いつものところに100円玉を入れた。
私は久しぶりに望遠鏡を覗きこむ。
恐らく、「白鳥の湖」だったと思う。
神秘的で美しい世界が日常の寂しさや
虚無感を忘れさせる。
そして、物語が終わると画面は一気に暗くなる。
儚く美しい物語は、儚く一瞬で終わってしまう。
「また来るね」
そう言って、私は何度同じ物語の世界に遊びに行ったのだろう。
あの世界に居る時、私は解放されていた。
もう、昔話のように昔のことだけれど
もしもあの遊具に出会えたら、私は
もう一度少女になってしまうのだろう。
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