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2024年1月(後半)の読了本+感想

ラフォーレ原宿『愛と狂気のマーケット』にお越しいただいた方、ありがとうございました!
一冊、一冊とお手元に自分の本が届くことをとても嬉しく思っています。
感想など伝えてくれた方もありがとうございます!!

一月後半のまとめです〜。


これからの予定

1) 第2回『第一芸人文芸部』公開配信 in 芳林堂書店高田馬場店

stand.fmの公開配信です。

日時:2024年2月23日(金・祝)
開始:14:00(開場13:45)
場所:芳林堂書店高田馬場店8Fイベントホール

参加料無料です。ぜひ、お気軽にお越しください。

当日会場にて物販をいたします。
『第一芸人文芸部 創刊準備号』 またはゲストの著作をお買い上げ頂いた方にサイン会にご参加頂けます。お待ちしております!

2) 『文学フリマ広島』

こちら第一芸人文芸部での遠征です。
と言っても、行くのは僕ひとり。中国地方の皆さま、ぜひ会いにきてください!

日時:2024年2月25日(日)
場所:広島県立広島産業会館 東展示館 第2・第3展示場
時間:11時〜16時

第一芸人文芸部の活動

1) stand.fm配信

毎週水曜日、22時からstand.fmの生配信で、今週読んだ本について語ったり、活動報告も行なっているので、ぜひ聴いてみてください!

次回(2/7)の放送のテーマは、文學界三月号に掲載される又吉さんの『生きとるわ』です。

2) Amazon Audible『本ノじかん』 配信中

「本の魅力を語らないか?」の一言からはじまった、本を愛する方々、そして本にあまり触れてこなかった方々に向けて本の魅力をお伝えするブックバラエティです。

番組のパーソナリティを担当させていただいております!豪華なゲストと本や創作について、めちゃくちゃ語っているのでぜひ!

また番組では『クチヅタエ』という企画で、バイク川崎バイク(BKB)、しずる・村上、3時のヒロイン・福田、ニッポンの社長・辻、レインボー・ジャンボたかおのリレー小説を朗読連載中。

読んでくださっているのは、声優の白井悠介さんです!
登録30日間は無料なので、ぜひ聴いてください!

これまでのゲスト(敬称略)

第一話 ピース・又吉
第二話 オズワルド伊藤
第三話 バイク川崎バイク(BKB)、しずる・村上、3時のヒロイン・福田、ニッポンの社長・辻、レインボー・ジャンボたかお
第四話 ピース・又吉
第五話 レインボー・ジャンボたかお
第六話 バイク川崎バイク(BKB)
第七話 サルゴリラ・児玉
第八話 吉本ばなな
第九話 フルーツポンチ・村上
第十話 田丸雅智
第十一話 ラランド・ニシダ
第十二話 しずる・村上
第十三話 クリープハイプ・尾崎世界観
第十四話 見取り図・リリー
第十五話 ニューヨーク・屋敷
第十六話 Aマッソ・加納

より詳しく、読書大学さんが書いてくれましたので、ぜひこちらも読んでみてください!

3) 文芸誌『第一芸人文芸部 創刊準備号』の発売店まとめ

【東京】
古書ビビビ
本屋B&B
透明書店
芳林堂書店 高田馬場店

【京都】
ホホホ座浄土寺店
恵文社一乗寺店

【大阪】
水野ゼミの本屋(大阪工業大学の学生が運営するシェア型書店)の「まつよしの本棚」

【静岡】
ヒガクレ荘

【沖縄】
山ブックス

【オンライン】
FANY MALL

2024年1月後半に読んだ小説

1) 『ゴリラ裁判の日』 須藤古都離

『私はゴリラなのに、人間のように考え、人間のように行動する。今まではそれが嬉しかった。私は特別な存在で幸せだった。だが、私が普通のゴリラではないからこそ、こんな苦しみを味わうことになった。他のゴリラや野生動物が決して知ることのない、屈辱と挫折』

『ゴリラ裁判の日』 須藤古都離

2023年発売。自分の本と発売日が近いこともありよく本屋でプロモーションを見かけてめちゃくちゃ気になっていた。

タイトルが面白く、どんな話かずっと気になっていて、やっと読めた。

———あらすじ———

第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。

カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。

ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。
手話を使って人間と「会話」もできる。
カメルーンで、オスゴリラと恋もし、破れる。
厳しい自然の掟に巻き込まれ、大切な人も失う。

運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。

政治的なかけひきがいろいろあったようだが、ローズは意に介さない。動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。順風満帆のはずだった――。

その夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。

なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの?
人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの?

だめだ、どうしても許せない!

ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む!

アメリカで激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。

—————感想—————

動物×法廷ものという唯一無二の小説。
さすがメフィスト賞受賞作と思えるほど、健康的に狂っていた。

物語のクライマックスである上訴シーンは圧巻だった。
『人間は動物より優先されるべき存在』という常識を、どのような論理で、どのような作戦で、どのような熱量と信念で打ち破るか。完全に釘つけだった。

そしてローズの人生を解像度高く描き切ってくれたおかげで、まさかのゴリラに感情移入できた。いやゴリラに、という表現は正しくない。ローズに感情移入できた。

夢中になって読めるエンタメ小説だし、人間と猿人類の関わり方について考えさせられる一作。

2) 『霊長類 南へ』 筒井康隆

「なんでや。なんで死なんならんねん。馬鹿で阿呆で、愛嬌があって、おっちょこちょいで、おもろい人間が、その人間が、なんで全部死んでしまいよるねん。そんな阿呆なこと、あるかいな」
おれたちは抱き合い、わあわあ叫んだ。「こんなしょうもないこと、あってたまるか」

『霊長類 南へ』 筒井康隆

1969年に創刊された筒井康隆の中編SF。1970年には第1回星雲賞(日本長編作品部門)を受賞。

ドタバタ騒ぎから偶発的に始まってしまった核戦争によって、人類が滅びゆく阿鼻叫喚の大惨事を、皮肉の利いた軽いノリで書いている。

読んでいて気持ちが良い。

———あらすじ(公式より)———

毎読新聞の記者澱口は、恋人の珠子をベッドに押し倒していた。
珠子が笑った。「どうしたのよ、世界の終りがくるわけでもあるまいし」

その頃、合衆国大統領は青くなっていた。日本と韓国の基地に爆弾が落ちたのだ。

大統領はホットラインに手を伸ばした。だが遅かった。爆弾はソ連にも落ち、それをアメリカの攻撃と思ったソ連はすでにミサイルを……。

ホテルを出た澱口と珠子は、凄じい混乱を第三京浜に見た。破滅を知った人類のとめどもない暴走が始ったのだ。

———感想———

めちゃくちゃ面白い。

瀋陽ミサイル基地での軍人のモメ事から、ミサイル係がボタンを押してしまう。玉突きの核戦争が始まり、北半球の都市はほとんどが壊滅してしまうものの、東京は無事。

偏西風に乗ってやってくる放射能からどのように生き延びるか———人間のエゴにまみれた逃亡劇が最高すぎる。

高速道路はパニックで事故の嵐。要人を乗せたヘリコプターは国会議事堂に激突。羽田空港では飛行機にしがみつき逃げようとする群衆たち。

筒井節で綴られたドタバタ悲劇(喜劇?)が面白すぎて、何度も声に出して笑ってしまった。

無数の死に様を表現することで、澱口や亀井戸の生への執着が際立っているのもさすがでした。

めちゃくちゃおすすめです。

3) 『これはちゃうか』 加納愛子

以前からエッセイも小説も面白いと評判の加納さん。

文芸誌への寄稿も多く、業界関係者からの評価が高いことも伺える。

ずっと読みたいと気になっていたら、まさかの『本ノじかん』にゲストで来てくれることになり、手に取った。

————あらすじ(公式より)—————

Aマッソ加納、初の小説集!

終わりのないおしゃべり、奇想天外な町、日常から一歩はみ出したホラー、変化球のハートウォーミング。時代の最前線で笑いをつくる著者が多彩に編み出した全6篇の陽気な作品集。

そこには“意味”も“救い”も“共感”も、あるのやらないのやら——。

「元気なときに余力で、クッキーこぼしながら読んでくれたら嬉しいです」——加納愛子

人間をシビアに見つめてよく知っているのに、底のところがぬくいままで、ずるい。(高瀬隼子)

その才能の可視化! お世話になったはずなのに、忘れてたな。
『これはちゃうか』は紙媒体だ。そういうことか。
(ハマ・オカモト OKAMOTO‘S)

<収録作品>
「了見の餅」同じアパートに住む友人が元気ないっぽい
「イトコ」イトコという存在の不思議についてバズり記事書きたい
「最終日」美術展の最終日に駆け込んでマウントとってくる奴
「宵」映画研究会の言い伝え、〆切間近になると現れる怪奇
「ファシマーラの女」駅がいっぱい生えてくる変な町で
「カーテンの頃」失った両親の友人“にしもん”と二人暮らし

—————感想—————

「了見の餅」
同じアパートに住む友人が元気ないっぽい
いきなりすごい小説を、純文学を読んだ。普通の短編集なら、これを一作品目には持ってこないと思う。度胸がある。

餅を茹でながら、ああでもない、こうでもないと階下に住む友人の家に行く理由を考える主人公。「こう喋ったら、こう返してくると思うから、それに対してなんと言おう」と奥の奥の奥の思考まで考えるクセのある主人公。バラエティのスタジオ収録にのぞむ芸人もこんな気持ちだ。

「イトコ」
webライターの主人公は“イトコ”という存在の不思議についてバズり記事書きたい。極論や曲解も多いが、なぜか納得させられる主人公の見解を面白く読んだ。

「最終日」
美術展の最終日に駆け込んでマウントとってくる奴について。自分も最終日マニア。最終日は普段の展示には見られない光景が見られるという。そこに注目して小説を書き上げるのがすごい。

「宵」
めちゃくちゃ面白い。主人公の所属する映画研究会には言い伝えがあり、それは〆切間近になるとデータが消えるというもの。その怪奇に翻弄される主人公。撮影が大変だった夕暮れのシーンを探し回り、なんとか締め切りの延長を希望する様子はなぜか身に覚えがあった。

「ファシマーラの女」
駅がいっぱい生えてくる変な町での話。主人公の女性がこの町で生きていくことを選んだ理由が、同僚の女性との関係性から浮かび上がる。面白い。

「カーテンの頃」
両親を失った主人公は、両親の友人であり結婚の仲人を務めた、“にしもん”と二人暮らしをすることに。にしもんのキャラクターがまず最高。ぶっきらぼうで不器用な関西弁の男は年頃の主人公に何も気を使うことなく暮らしている。繊細な主人公はそれに嫌気がさしながらも、毎日をしっかり生きていくことに心を打たれた。ラストシーンも最高だった。

4) 『東京都同情塔』 九段理江

読んですぐ書きたくなって、以下の記事にまとめました。

5) 『ともぐい』 河﨑秋子

『俺は食いたいもの、金になるものを殺し、生きる。変わらなくてきい。それでいはずだった。』

『あの阿呆が連れてきた糞熊は、熊爪を舐め腐って縄張りを主張した上に、小熊を食いさえした。余りにも、道理から外れている。余りにも、悪辣だ。
(中略)
この先に、あの穴持たずの、小熊食いの、道理知らずの糞熊がいる。仕留めるならば確実に。あの野郎に怪我など負わされては太一の馬鹿と同じ轍を踏むことになる。』

直木賞受賞。日本最高峰の熊文学。

知床、登別の熊牧場、サホロリゾート・ベアマウンテンに訪問し、三毛別羆事件、福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件、OSO18などを調べまくって眠れなくなった経験のある私にとって、読まずにはいられなかった。もちろんめちゃくちゃ面白かった。

———あらすじ———

舞台は明治時代、北海道東部の手付かずの山。
零下三十度の中、熊爪という男が村田銃を鹿に向かって構えるシーンから話は始まる。
見事に鹿を仕留め、解体し、とれたての肝臓を口に放り込む。
熊爪は、自分で撃った獲物を食べ、体の一部にすることに生きがいを感じている。
そして「春には、熊だ」と意気込む。

熊爪は小屋で鹿を解体すると、米と芋と銃弾を手にするため、釧路の東側にある白糠の町へ肉を売りに向かう。
狩り、食べ、売り、また狩る、それが生活の全てなのだ。

門屋商店では、白糠一の金持ちである店主の良介に、他店より値段で肉を買ってもらう。良介は熊爪から聞く森の話が好きで、毎回、酒の肴にしているのだった。

陽が暮れ泊まることになった熊爪は、翌朝、陽子という盲目の少女に出会う。
町に馴染めず、人間も嫌いな熊爪だが、なぜか陽子のことは気になるのだった。

それから山に入ったところで事件が起きる。
小屋付近に、熊に目をえぐられ、血まみれになった男が倒れていたのだ。
男は阿寒湖周辺の村出身で、「穴もたず」を追ってここまできたという。
穴もたずというのは、冬眠しそびれたがゆえに凶暴になったヒグマ。

余計なことをしやがって……。

熊爪は男の手当てと、穴もたずの撃退という二つのことをやらないといけなくなるのだった。

————感想————

熊爪という男の人生譚。
そのキャラクター、考え方、行動、人生観すべてが面白い。

まず、熊を狩るであろう主人公の名前が「熊爪」なのに驚きながら読んだ。
ややこしいやん。
なんで熊じゃない方も、熊がついてんねん、と半分おもしろがりながら。
読み進めていくうちに、その理由が明かされてさらに驚いた。

また、熊爪は猟犬を飼っているのだが、名前はなく、犬と呼んでいる。
名前をつける理由がわからない、というのがその理由だ。

物語は、穴もたずと赤毛の激闘あたりから、想像とは全く違う方向に進んでいく。
熊文学であり、大衆文学の賞である直木賞を受賞していることから、主人公VSヒグマのアクションシーンが満載の王道エンタメ作品だと先入観を持っていたが、全く違った。

主人公VS凶暴な熊のクライマックスではなく、良い意味で期待を裏切られた。

タイトルの「ともぐい」は、何と何の「とも」を指しているのか、理解できたときにゾッとした。

2024年1月後半に読んだエッセイ

1) 『今更のはじめまして』 ニューヨーク

———紹介とあらすじ(公式より)———

人気芸人ニューヨーク初のエッセイ本が完成。

田舎での学生時代、東京での浮かれた大学生時代、芸人生活など屋敷、嶋佐それぞれが自身の人生を振り返る。

NSCで出会う前の2人になぜか多い共通点や、売れる転機となった出来事など。

テレビに出始めたタイミングが同じでニューヨークにとって自然体でいられる存在「マヂカルラブリー」との対談も掲載!

第一章【激変する環境】
第二章【子供の頃】
第三章【学生時代(AD時代)】
第四章【NSC時代】
第五章【順調な芸人人生のスタート】
第六章【挫折】
第七章【YouTubeとM-1グランプリとキング オブ コント】
第八章【相方のこと】
第九章【結婚】
第十章【これからのニューヨーク】
特別企画【マヂカルラブリー×ニューヨーク スペシャル対談】

————感想————

そもそもファンである。NSC時代からめちゃくちゃ面白いふたりの、これまでの軌跡。興味深く読んだ。

地元で過ごした生い立ちから高校時代、大学時代、そして芸人時代の栄光と挫折。

二人の考え方やスタンスの違いが文体に現れていて、そこも面白かった。特に芸人時代になってからは同じ出来事を体験しても、互いの言葉で語られるので受け取りに少し差異があるのも良かった。

それでいて笑いの感性が似ていると互いに認識していることこそが、面白いネタを作りづつけられることにつながるのだと思った。

同世代で良かった。一生見ていきたいコンビ。

2024年1月後半に読んだ絵本

1) 『ももからうまれたおにたろう』 リリー(見取り図)

「おにと くらせて ぼくは しあわせだった」

『ももからうまれたおにたろう』 リリー(見取り図)

Amazon Audible『本ノじかん』にゲストで来ていただいたのをきっかけに、拝読。

番組「見取り図じゃん」の絵本プロジェクトから完成した絵本。キングコング・西野さんの教えのもと、分業制で作ったのも面白い。

————紹介とあらすじ(公式より)————

大人気芸人、見取り図・リリー初の絵本!
「もしも桃太郎の桃が鬼に拾われたら?」

みんなが知っている童話「桃太郎」のだれも知らないアナザーストーリー。

桃太郎と鬼のあいだに芽ばえるまさかの「愛」にきっと誰もが涙する——!

美大卒のお笑い芸人が描きだす子どもはもちろん、大人も楽しめる、懐かしくて新しい童話えほん。

(あらすじ)

おばあさんにひろわれるはずの桃は、川をドンブラコ、ドンブラコとながれていました。

ところが病でおばあさんが倒れてしまい、そのまま桃は川をながれることに。

やっとのことで桃がたどりついたのはなんと「鬼が島」!

鬼にこん棒で桃を半分に割られ、絶対絶命!?
と思いきや、桃から生まれたのは、桃がくさったせいで顔が赤くなり、こん棒のトゲが頭に刺さったせいでツノの生えた、すっかり鬼みたいな男の子。

こうして鬼に「おにたろう」と名づけられた少年の、鬼が島でのくらしははじまったのです。

しかも、その生活は鬼の愛情にあふれた「おにたろう」にとってかけがえのない日々となるのでした。

————感想————

まず昔話『桃太郎』の桃はたまたまおばあさんに拾われただけで、もし誰にも拾われず、ただ流れていった場合はどうなる!? という視点が面白い。

その桃が鬼ヶ島にたどり着いたら——という二次創作。そこからまさかの絆や愛のお話へ。

ほっこり温まる+実の親と育ての親について考えさせられる。

子どもはもちろん、大人も楽しめる、懐かしくて新しい一冊です。

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