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デジタル技術はアナログのためにある

デジタル最高!みたいな世の中ですが、そこに疲れてアナログ回帰する人もいますよね。
だけどそもそもデジタルの捉え方が人によって違うので、そこはキチンと理解しておく必要があるんじゃないでしょうか。

1. 人間はアナログ

人間ってデジタルですかね?
デジタル人間という言葉も無くはないですが、そもそも人間はアナログな存在なのです。いえアナログです。孫さんも三木谷さんもアナログです。

目で見て眩しいとか、赤いとか青いとか、音を聴いてうるせーとか、心地良いとか、ジャンプして高いなーとか、あの人太ってるとか。
そういう物理的な状態やレベルはみんなアナログなんです。

2. デジタルは論理 (カシオじゃない)

Wikipedia「デジタル」の冒頭に次のように書かれています。

整数のような数値によって表現される(飛び飛びの値しかない)ということ。

Wikipedia

つまり数値に過ぎません。数値です。
「1は2より小さい」は「1 < 2」であり、それは論理なのです。
ロンリー♪♪ではありません。

例えば電圧のレベルを示すのに、あるレベルを1V(ボルト)とした時に、その5倍のレベルのものを5Vと呼ぶのです。
レベル自体はアナログですので、数値でもって1Vから5Vまでの全てのレベルを表現しようとすると、1.00000000000(なんかいっぱい)から、5.000.00000000000(なんかいっぱい)まで、あらゆる値を用いないと表現できません。

状態を数値で表現するということは、そういうことなのです。

3. 昔の電子機器はアナログ

昔の電子機器はアナログでした。テレビもラジオも無線機も。
状態を数値で表さないで、状態を音や光や電波の強さでそのまま表現していたのです。

音は、マイクから入って、中の振動子を震わせて、それがそのまま電気信号として回路に入り、
アンプの場合は、中で増幅されて大きな電圧の振幅になり、それがスピーカーコイルに流れるとコーンを震わせます。
その結果、人間の耳に大小様々な大きさの音が聞こえてくるのです。

4. コンピュータはデジタル

コンピュータのない太古の時代から数値は存在していたし、それで計算もしていましたよね。
だけどそれを機械にさせたいと人間は考えたんです。

数値キーを作りました。
0から9と小数点を機械に知らせるために、それらのキーを作って、人間がそれを押せば数値が機械に入るという仕組みです。(入力装置・ユーザーインターフェイス)

機械は入力された値をどこかに記憶しておかないと計算に使えないので、記憶装置ができました。メモリとか磁気テープ、フロッピーディスクなどそういうものです。

a. アナログのデメリット

数値を記憶するのに、テープに音を録音するみたいなアナログな方法の場合、レベルの強弱だけで数値を表現するのは無理があったんです。

  • 磁気の強さで数値を表現すると磁気の誤差で数値が変わってしまう

  • 扱う数値の範囲によってどの磁気レベルに対応させるかが変わってしまう
    (大き過ぎて対応できないかもしれない)

などのデメリットがあります。デメリットというより不可ですね。
記録装置の精度・誤差によって数値が違ってしまうなんであってはならないです。

b. デジタルのメリット

コンピュータでは取り扱う電気的なレベルを2つの値だけに決めたのです。
例えば0Vと5Vの2値。さらに言うと、例えば2.5Vを境にしてそれ以下(未満)を0、以上を1という数値だと決めました。

そうすれば、基本0V(電圧なし)の場合は0、基本5V(電圧あり)の場合は1と認識できて、多少の誤差やばらつきがあっても、必ず0か1のどちらかの数値が得られるということが約束できたのです。

ここで2進数というものが出てくるわけですね。数値を0と1だけで表す方法です。人間が日常的に使う数字は10進数なので2進数を10進数に変換すれば10進数が扱えます。

そうして記憶装置から数値(2値)を引っ張り出して計算をします。その回路が演算装置で、その中心になるのがCPU(中央処理装置)です。

計算結果はディスプレイに表示させます。初期は8セグメントLEDのようなもので、数字だけが分かるディスプレイでした。のちにブラウン管や液晶パネルで表示するディスプレイ(モニタ)が生まれたのです。(出力装置
出力はモニタだけでなく、紙に印字する方法もとられました。それがプリンタの始まりです。

5. コンピュータとの対話はインターフェイスを介して

人間はアナログ、コンピュータはデジタルなので、その橋渡しをするものがないとお互いに理解できません。
それが入力装置出力装置というインターフェイスなのです。

  • 入力装置はアナログをデジタルに変換するもの(AD変換)

  • 出力装置はデジタルをアナログに変換するもの(DA変換)

となります。
インターフェイスを介して人間とコンピュータがやりとりをする、あるいは人間がコンピュータに命令を与えてその結果を得る、ということを「コンピュータと対話する」といいます。

上記のようにコンピュータのために開発されたデジタルデータを扱う技術のことをデジタル技術(Digital Technology)といいます。

インターフェイスの性能が良いと、リッチなデータをやりとり出来るのです。例えば高画質の映像や、ハイファイな音声など。
もしインターフェイスが無かったら、人間はコンピュータとお話さえできないのです。

6. 通信に応用されるデジタル技術

記憶装置の説明のところで書いたデジタルのメリットは、通信にも応用されました。

有線でも電波でも、アナログ通信をすると、長距離になったり、なんらかの障害があると信号に影響が出て、伝送される内容にも影響が出ます。
遠くの放送局の番組を聴いているとザーザーとノイズが入って聞こえにくくなりますよね。ひどい場合には内容が全く理解できなくなります。

アナログは信号が減衰すると送る内容の品質も下がってしまうのです。

そこで信号をデジタルデータに変換して、2値の信号レベルを送るようにしました。1か0か(有るか無いか)だけの簡単な信号です。
例えば 111001010011101000 のような感じで順番に送るのです。
そうすると、遠くなどで信号レベルが減衰しても、信号が有るか無いかは判別できます。かなりレベルが落ちても、信号の有無だけが分かれば良いのです。昔からあるモールス符号による通信みたいなものですね。

デジタルは信号が減衰しても送る内容にほとんど影響しないのです。

音声や映像も、コンピュータで処理しデジタル信号に乗せて送信し、受信側でもコンピュータで処理して内容を取り出せば、音声や映像のデータとなって復元できるのです。

不思議ですよね。音声や映像が0と1だけで表現できて、伝送して相手に届けられるわけですから。

7. 通信・伝送に求められるインターフェイスの性能

インターネットを通じて高品質な映像や音声をやりとりするためには、高品質なアナログデータを正確にデジタル化して届ける必要があります。つまり

  • アナログデータが高品質であること(アナログの品質)

  • アナログデータを正確にデジタル化すること(インターフェイスとAD変換の品質)

  • デジタルデータを正確にアナログ化すること(インターフェイスとDA変換の品質)

などが求められます。高品質なデータを送ろうとするほど、ますますその要求レベルは高くなります。デジタル技術におけるインターフェイスの役割はとても大きいのです。

8. インターフェイス(アナログ)を無視するなかれ

デジタル化、デジタル化と声高に叫ぶのは良いのですが、単純にデジタル技術だけを高度にしても意味がないのです。
デジタルがいくら立派でも、インターフェイスが無かったら声は聞こえないし映像も見られないのです。アナログの品質が悪かったら、リッチな体験は絶対に出来ないのです。人間の体験(Experience)が最も大事なのですから。

9. デジタルリソースの多くはアナログのために使用されている

コンピュータは数値と文字を扱うところから始まったのですが、それが扱いやすかったからです。データ量が少なくて済むのです。
記憶容量があれば、論文などの文字情報を沢山、記録することができました。

それに、文章は論理を記述することが出来ます。言語ですね。
人間の意図をコンピュータに伝えるのに、専用の言語(プログラミング言語)を使えば効率的にコンピュータを操作することができるのです。

コンピュータが一般の人々に幅広く使われるようになると、映像や音声の情報を処理して記録する要求が増えました。

映像や音声を細密にデジタルデータに変換すると、膨大なデータ量になります。文字の比ではありません。
コンピュータそのものの維持管理に使用する文字データよりも、人間が利用する映像・音声のデータ量の方が遥かに多くなってしまいました。

そのために記憶装置の容量CPUの処理能力が使われるようになりました。
今後は更にその割合が増えるでしょう。伝送するための通信設備も高度なものにアップデートしていく必要があります。

人間の活動をサポートするために、デジタル技術も、インターフェイスを中心としたアナログ対応技術も、更に高度なものが求められる時代になりました。

この記事には続編があります。よろしければ下記もお読みください。

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