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山桜桃 えみ
2020年5月29日 20:30
江の島にほど近いあの街の、夏の夜の匂いを、よく覚えている。惰性で深夜アニメを流しつつ横になった、部屋の床の匂い。東京の暑さに慣れなくて、上京して初めて夏バテになった。ぐったりと凭れた頬に伝わるフローリングのつめたさと、開け放した窓から流れ込む夜風の涼しさから、夏の匂いがした。ディスコ・キッドの前奏に乗せて流れてくる、汗と風の匂い。はじめての大学の学祭。私たちは浴衣を着て、夜のステー
2020年3月30日 08:00
やばい、って思った瞬間、胸がつまって泣きそうになった。「好きになっちゃいけないって思い始めたらそれはもう好きだし、好きでいなきゃいけないって思い始めたらそれはもう気持ちが冷めてる」なんてことばを、その時ふいに思い出した。・・・とてつもなくやさしい人だった。大切な人のために、自分を犠牲にしてしまうような。それは彼も同じだった。傷つきやすい私は、自分を守るためにはなからやさしい人を選ん
2019年11月2日 21:30
大切な友人の結婚式に、行けなかった。私にとって初めての「友達の結婚式」で、その友達は本当に大好きで大切な人で、だから絶対に行きたかったのに、行けなかった。その日は何十年に一度クラスの台風が関東を直撃した日で、朝からテレビで繰り返し告げられる電車の運休情報や、窓ガラスに激しく打ちつける雨粒に、私はなす術なく家を出ることを断念した。それはしょうがないよ、と言ってくれた人も何人かいたけれど、友