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あいいろのうさぎ  短編集

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「あいいろのうさぎ」として活動している私が日々書き溜めている短編をまとめたものです。恐らく文字数は1000字程度なので、サクッと読んでいただけると思います。 巡り合ったあなたの時…
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2024年2月の記事一覧

心まで躍らせて

心まで躍らせて

あいいろのうさぎ

 誹謗中傷なんて、書いた側は投稿した瞬間に忘れているんだろう。でも、書かれた側は違う。胸の底にいつまでもいつまでも残っていて、それは傷跡として機能する。私の場合、それは焦燥感になった。

 毎日のレッスンに加えて自主練を二時間増やした。当然睡眠時間を削ることになる。いつもより練習をしてるというのに、最近は私が叱られてばかりだ。

「美羽、遅れてる!」

「足! 上がりきってない

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熱い以上に温かく

熱い以上に温かく

あいいろのうさぎ

 見慣れた実家。でも実際来るのは今年の八月以来で、緊張する必要なんてどこにもないのに、少し心がピリッとする。十二月の夜闇の中、センサーライトが私を迎え入れた。

「ただいまー…」

 控えめに挨拶すると、耳の良い子供たちが奥からバタバタバタッと出てくる。

「奈津ちゃんこんばんは!」

「こんばんは!」

 甥っ子の俊太と姪っ子の風花。まだ保育園に通っている彼らは会うたびに元気

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山菜を採って幽霊に会おう!

山菜を採って幽霊に会おう!

あいいろのうさぎ

「山菜を採りに行こうじゃないか!」

「……は?」

 春休みで部活も無いというのに先輩に呼び出され、部室に着いた途端言われたのがこれだった。

「ひかる君、聞こえなかったのか? 山菜を採りに行こうと言ったんだよ、私は!」

「声デカっ……充分聞こえてますって。そして呆気にとられているんですよ」

「呆気にとられるだって? 面白い事を言うな、君は」

「どう考えたって面白おかし

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ごめんね、石油ストーブくん。

ごめんね、石油ストーブくん。

あいいろのうさぎ

 私は全力でスマホとにらめっこしていた。

 エアコンと石油ストーブの比較記事を懸命に読み込む。

 一人暮らしを始める私に親が渡してくれた(というか押し付けられた)石油ストーブ。電気代がかからないのは良いけれど、代わりに灯油代がかかって、しかも今はその価格が高騰しているのでエアコンを買った方が良いのでは、と思い始めたのだ。でも今は電気代だって高いし、結局どっちの方が安いのかを

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強面な甘さ

強面な甘さ

あいいろのうさぎ

「もういい加減諦めたら?」

「お前に慈悲はないのか」

「ないね」

 そうハッキリ言われると何も返せなくなる。

 学生時代から使っている喫茶店で喜美子に相談を持ち掛けたらこれだ。

「あんたが強面で近寄りがたいのなんて今に始まったことじゃないでしょ?」

「だから困ってるんだろ、ずっとこの顔なんだぞ」

「整形でもしたら?」

「そうじゃない……」

 喜美子に相談した自

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手編みのマフラー

手編みのマフラー

あいいろのうさぎ

 ……さむい。

 怒った勢いで家を飛び出したらすごく寒いし、頭も冷えてきた。でも、家に帰りたくなかった。

 だって、せっかくの誕生日。変身ベルトが貰えると思ってワクワクしてたのに、いざ出てきたのが母さんの手編みのマフラーって、ガッカリするじゃん。俺、今日のために色々手伝ったりして、母さんももったいぶってたから、絶対貰えるって思ったのに。

 いざ出てきたのがマフラーって。

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未来を灯して

未来を灯して

あいいろのうさぎ

 夜はじわりとやってくる。

 投げ入れようとしたティッシュがゴミ箱に入らなくて、結局床に落ちたそれを拾って入れる、とか。録画番組を見ようと思ってリモコンを手に取ったらちょうど電池切れで、うんともすんとも言わなかった、とか。

 日々に転がっている夜の欠片を知らず知らずのうちに集めていて、心は段々翳っていく。

 心の夜の訪れを感じる度に思い出す。むしろ昼間に忘れている方が呑気

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