#1 医療知識ゼロの人間がコロナ対応に追われるようになるまでの経緯
2021年の春まで保健所で感染症対応をしていた自分だが、恥ずかしながら医療知識は一ミリもない。
大学もド文系の学部を卒業している。
そこで、今回はそもそもなぜこの仕事をするに至ったのかを書き記したい。
転職先、県庁もありじゃない?
以前にも書いたが、私は新卒の時に就活に失敗していた。
それ以来地元で仕事していたが、特定の人とずっと顔を合わせ続ける生活に閉塞感を覚えた。
一生に一度しかない人生。どうせならいろいろな仕事を経験したいと、転職を決意。
かつて大学で行政学の授業も取っていたし(単位は落としたが)、行政機関で働くことに漠然とした興味はあった。
たまたま友人に都道府県の職員が多く、彼らの話もよく聞いており、仕事のイメージもつかめていた(つもりだった)。
県職員になるのもありなんじゃないか。
働きながら勉強し、採用試験に挑戦したら、運良く一発で内定を得た。
採用前の面談で、どんな分野で働きたいかを尋ねられた。
希望分野は伝えたが、医療や公衆衛生の話は全く出さなかった。
しかしながら人事担当者から、保健所配属になったとの連絡を受けた。
配属先の第一印象:犬のやつ
配属先が保健所だと聞かされたとき、
「え、保健所って犬のだよね? 犬のやつ。
犬の何かやるの? 自分犬触るの?」
と、頭に犬のことしか思い浮かばなかった。
まいったな、自分犬触るの苦手なんだけど……
というか保健所って何? 地元の保健センターとは何が違うの?
全くわかっていなかった。
ちなみに、保健所と保健センターの違いについて大雑把にいうと、
保健所の役割は「公衆衛生」。たとえば飲食店の営業許可とか、病院の開設とか、私がイメージしていた犬のことが中心。
保健センターの役割は「住民の健康増進」。予防接種や、健康診断など。
自治体によって若干の差はあるが、だいたいこのように区分けしているところが多い。
地方公務員はたいてい、事務の職員をいろいろな分野に配置している。
そのため、私のように全く医療知識のない人間が保健所にやって来ることもままある。
ほんとに何でもやらされるのだ。
感染症担当と同じグループにいたがために
配属先で、私は医療費助成の担当になり、不妊治療の助成金の事務などをしていた。
上司や先輩に恵まれ、毎日健やかに働いていた。
だが2020年初頭、同じグループにいた感染症担当の職員がハチャメチャに忙しくなった。
コから始まってナで終わるアレのせい。
上司からは、非常事態なので職種問わずグループ全体で手伝ってくれと頼まれた。
何が何だかわからぬうちに、私も電話対応を手伝った。
しだいに頼まれる業務が増えていった。陽性になった患者さんの送迎、健康観察、接触者調査……
最終的に、事務職の立場でありながら保健師とほぼ同じ業務をこなしていた。
確かにいろいろな仕事を経験したいとは思っていたけど…
ほんとに何でもやらされるねえ!
「たまたま」の連続
要するに、感染症の仕事をすることになったのは、たまたまが重なった結果であった。
あと数年早く転職していれば、
配属先が違っていれば、
仮に保健所配属だったとしても
感染症とは無関係の担当になっていれば、
こんなことにならなかったのに。
タラレバの話をしても仕方ないとわかっていても、当時は自分の不運を恨んでいた。
だが見方を変えれば、医療知識ゼロの自分でも感染症対応の現場に立つという、めったにない経験ができたとも言える。
知識がないなりに感じたことを、記録に残していければと思った。