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【読書】犯罪組織の経営から親の子に対する影響まで/「Freakonomics」から

40 か国語に翻訳され、世界中で 500 万部売れた書籍。不動産業者のビジネス、相撲力士、学校の先生、犯罪組織のビジネスモデル、親の子への影響など幅広いテーマを、データやインセンティブ構造から切り込むポップな経済学書。

要約

  • 不動産業者と不動産所有者兼売却希望者のインセンティブのMisalighnment。業者は手頃な価格で早期決着を図るインセンティブが働く。そして業者に比べ情報の少ない不動産所有者は、家が売却されないことを恐れ、その提示金額で納得をせざるを得ない。

  • ドラッグ・ディーラーのビジネスモデルは、マックと同様フランチャイズ方式、各支部から手数料を徴収する方式。

  • 子供の成績に対する親の役割の話。親が子供に本を読んで上げたり、塾にいれたり、宿題を見て上げたりする事は統計的には子供の成績に相関関係はない。




1.本の紹介

本のタイトルは「Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything」(2005年刊行)で、邦訳は、「ヤバい経済学」。

共著で、著者の一人はアメリカ人経済学者のスティーヴン・デヴィッド・レヴィット/Steven David Levitt (1967-)。ハーバード大学で経済学士号、MITで博士号を取得後、現在 シカゴ大学経済学部の教授を勤める。

スティーヴン・デヴィッド・レヴィットさん

もう一人は、アメリカ人ジャーナリストのスティーブン・ジョセフ・ダブナー/Stephen Joseph Dubner (1963-)。

スティーブン・ジョセフ・ダブナーさん

スティーヴン・デヴィッド・レヴィットさんは17年前にTED talksにも登壇、特に薬物売買の犯罪組織のビジネスモデルについて分かりやすく説明しておりおすすめ。

2.本の概要

本書は不動産業者のビジネス、相撲力士、学校の先生、犯罪組織のビジネスモデル、親の子への影響など幅広いテーマを扱う。だが、本書全体を通じて以下の原則を主張している。

  • インセンティブが、現代社会における人々の行動の源泉。エキスパートといわれる人たちは、情報の利点/informational advantagesがある。

  • 社会通念として正しいと考えられていることは、得てして間違い

  • 物事の因果関係は、思ったよりも長期的で意外なところにある。

  • これらを理解するにはデータを見るしかない。

この原則だけだとなんのことか分からないので早速具体例に入る。

まずは不動産業者と不動産所有者兼売却希望者のインセンティブのMisalighnment。両者の動機は物件を高く売ることと思いがちだが、それはあくまで不動産所有者の話。不動産業者の取り分は売却価格の本の数%、仮に販売価格が10kドル上がっても、業者取り分は数百ドルしか上がらない。結果、業者は手頃な価格で早期決着を図るインセンティブが働く。そして業者に比べ情報の少ない不動産所有者は、家が売却されないことを恐れ、その提示金額で納得をせざるを得ないということになる。

次に学校の先生と相撲力士と不正イカサマ/cheatingの話。両職業とも清貧公正と思いがちだが、インセンティブ含め条件次第では次第ではcheatingに走る傾向があることが分かっている。

ドラッグ・ディーラーのビジネスモデルの話。皆儲けてると思いがちだが、実体は異なり多くのギャングが実家暮らしをしている。マックと同様BoDがある本部があり、各地に支部があるが、支部の運営はフランチャイズ方式、各支部から手数料を徴収する方式になっている。結果、本部連中や各支部の支部長他幹部は大きな稼ぎを得られるが、以下兵隊たちは最低賃金レベルで生活、実家暮らしから抜け出せないのが実情。

子供の成績に対する親の役割の話。親が子供に本を読んで上げたり、塾にいれたり、宿題を見て上げたりする事は子供の学校での成績に影響があると思いがちだが、アメリカの学校のデータを分析する限り、統計的には子供の成績に相関関係はない。むしろ両親がどんな人かに強い相関関係があるとの分析結果。両親が高等教育を受けており、社会的ステータスが高く、様々な本が家においてあるような家に生まれた子供は、人種を問わず学校の成績が良い。無論、そういった両親は白人家庭に多いので、自然と白人の子供の方が黒人の子供より全体として/統計的に成績が良くなる。

他にも興味深いのが、同じ成績の生徒が二人いて一人が良い学校、もう一人が悪い学校に入れられた場合、最終的な成績にどんな影響を及ぼすか。いい学校にはいった方が良い成績に繋がると思いがちだが、結果成績にたいした差はなかったとの調査結果が出た(おそらく両者の両親ともそれなりの教育や社会ステータスを得た人だったのだろう)。

他にも、両親が子供に与える名前が、その子の人生や、成功/失敗を左右するかというテーマもあったがここでは割愛、

最後、著者の言葉。

The data by now made ot clear that parents matter a great deal in some regards (most of which have ling been determined by the time a child is born) and not at all in others (the ones we obsess about).

P. 190

3.コメント

おすすめ。相撲力士の話が始まったときには心が折れそうになったが、犯罪組織のビジネスモデルの話にはいった途端、グッと話に引き込まれた。マックと同じくフランチャイズ&手数料回収という戦略を取る犯罪組織。非常に興味深い。

さらに、統計的には、親が子供にしてあげることにはあまり意味がないということも非常に興味深い。結局両親がどんな人かで子供の将来が変わる、という分析は腹落ち。ただ、あくまで統計なので例外はありうる。私も父は中卒、家には大した本も置いておらず教育にも無関心だったが、私は博士号まで取得しており例外となる。

また、両親が子供にたいして行うことに、大した意味がないというのは少し驚いた。私も子供に本を読んだりしてあげるが、それは意味がないんだろうかと思ってしまいそうになった。ただ、著者のデータはあくまでアメリカ、私のすむ多言語国家ではちゃんと子供に多言語読み聞かせるのは大事と思っている。

最後に一言

本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


併せて、他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。


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