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英語力を向上させろ!今すぐやめるべき中学校の悪癖

中学校の生徒の英語のテストを見るとがっかりします。

コミュニケーションが目的のはずなのに、中心となっていることは翻訳のような何かです。

例えば:

ここでは、なぜ英単語をそのまま日本語に置き換えて英語を学ぶ逐語訳はダメなのかを説明します。そして、逐語訳の代わりに、どのようなことを中学校がやれば生徒の英語力が向上するかを提案します。もちろん、英語教師、あるいは文科省がこの提案を取り入れることは難しいでしょう。しかしながら、ここで書くことはとても有用なので、ぜひ採用してもらいたいと思っています。

1.翻訳は自然な理解を邪魔する

言語というものは単語の集まりによるものではありません。言い換えると、ある言語を勉強することは、その言語の考え方を身につけることです。そして、本当の翻訳とは、元の言語を理解してからもうひとつの言語で意味が通るように表現することです。つまり、翻訳は対象言語をマスターしてから学べるスキルです。

しかし、中学校のように翻訳を最初の勉強方法として使うと、逆効果になります。なぜかというと、勉強方法として翻訳を行うことは、対象の言語の考え方を身につけないまま他の言語で表現するような無謀なことだからです。まず、元の言語それ自体がわからなければなりません。

とはいえ、母国語を通して外国語を学ぼうとすることにもメリットがあります。それは、対象言語の考え方を身につけるよりも母国語を通して学ぶ方が最初は早く学べることです。

しかし、デメリットの方が多いです。すべてのデメリットを一言でまとめると:翻訳は本当の理解を邪魔します。なぜかというと、異なる考え方の形式に基づく対象言語を日本語に変えようとするという悪習慣が定着してしまうからです。

今までの話は抽象的すぎるかもしれませんので、ちょっとドリルをしましょう。

以下の日本語を英語にしてください:

「すみません」

どうでした?

「すみません」は簡単かもしれませんね。"excuse me"あるいは "sorry"に訳されます。しかし、英語では "sorry"の代わりに"excuse me"と言ったら、変です。日本語で「すみません」は声をかけるときにも謝罪するときにも使われますが、英語では”excuse me”と”sorry”とここまででも2つありますよね。

"Sorry I'm late." = 遅くなってすみません。

"Excuse me I'm late."はまず変に聞こえますし、「遅くなったけど、許してよ」や「遅くなっているから、先に行かせてもらいます!」に捉える可能性があります。

そして、"sorry"は謝罪以外の場面でも使われています。"I feel sorry for Jim."はジムのことを可哀そうに思うという意味です。"He's a sorry bastard"は彼は惨めなヤツだという意味です。お葬式では、遺族に同感を示すために、 "I'm sorry"を言う習慣があります。

ちなみに、英語では、 普段、"I'm sorry"の代わりに、"I appologize"といってもいいです。しかし、お葬式の場合は、"I appologize"と言ったら、責任をとることになります。

これで分かるでしょう。「すみません」はよく "sorry"に訳されますが、どっちも別の概念です。確かに、オバーラップしているところが多いですが、それでも、異なる考え方の形式に属する別の概念です。

ここでちょっとラカンを入れさせていただきます。ある言語は独特の世界です。(ラカンの用語では「象徴界」または「象徴的秩序」です)。言語を構造している単語は現実の世界とつながっているのではなく、他の単語とつながっています。対象言語という世界に入らないと対象言語をちゃんと理解できません。勉強方法としての翻訳は対象言語という世界の入り口にあるバリケードです。

2.翻訳はコミュニケーションをややこしくする

対象言語という世界に入らなくても対象言語を使えるのではないかと思っている人がいるかもしれません。たしかに、頭の中で翻訳しながら会話したり本を読んだりできないわけではないです。

しかし、初心者レベルに留まります。なぜなら、いちいち訳して理解していると頭が疲れてしまうからです。

対象言語を聴いて(あるいは読んで)、それを頭の中で日本語に訳して、日本語で返事を決めて、その返事を英訳して言う(あるいは書く)というややこしい過程になります。時間やエネルギーが掛かりすぎます。そのせいで、語学学習に挫折して、諦めるかもしれません。

大人になってから語学を始めるなら、翻訳は必要悪かもしれません。しかし、子供は対象言語を自然に身につけられます。

僕の経験を話します。日本語初心者の時、翻訳で日本語を勉強していました。宿題やテストはいつも満点でした。しかし、自然な日本語をあまり聞き取れなかったし、僕の話している日本語は日本人の普通の話し方とだいぶ異なりました。日本語勉強を始めて一年後、東京に留学しました。英語話者のいない部活に入部したので、日本語を使うことが日常になりました。翻訳しながら会話するのは不可能ではなかったですが、1ヶ月で頭が疲れました。頭の中での鍛えられた翻訳機は壊れました。しかし、壊れてから日本語はだいぶ楽になりました。4ヶ月の留学で、初心者レベルから日常会話ができるレベルになりました。

もちろん、頭の翻訳機がなくても、知らない単語やフレーズなどは翻訳機を使ったことがあります。しかし、復習する時、単語やフレーズの対応する英語を覚えるのではなく、単語やフレーズと意味と直接につなぐことをしました。3年前から和英辞典じゃなく、国語辞典を使っています。

頭の中での翻訳機が壊れなかったら、もし今も英語を通してだけ日本語を学んでいたら、僕の日本語は中途半端なレベルで留まっていたでしょう。

3. 中学校は翻訳の代わりにどう英語を教えればいいか

子供であれ、大人であれ、勉強は楽しくないイメージですね。なので、抵抗を起こす「勉強感」をできるだけ少なくしたほうがいいです。

  • 文法のルールを覚えるより、文法のセンスを育ませることです。たくさんの文を読んだら、パターンが自然に身につきます。もちろん、文法の説明も多少必要かもしれません。しかし、英語教育の目的は文法のルールを無意識に(考えることなく)理解することであるべきです。

  • 単語の意味をできるだけ文脈から捉えさせることです。文脈から捉えるのは難しい場合、単語をイメージとつなぐことです。

  • 生徒の理解を確認するために、文を訳させるだけではなく、文や文章の意味を説明させましょう。

1. "If you aren't busy tomorrow, how about going out to eat?"
訳:明日空いてたら、一緒にレストランに行かない?
説明:相手を提案の形で気軽に家に誘っている。

2. "If you aren't busy tomorrow, let's go out to eat."
訳:明日、空いてたら、レストランに行こう。
説明:問題1のように、相手を提案の形で家に誘っているが、ちょっと押し付けているという感じだ。

上述した提案は抜本的な変革ではないですが、根本的な問題を解決できると思います。



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