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高校生が読んでおきたい教養書:今井むつみ「言語の本質」

現代文や小論文の課題文としてよく出題される今井むつみ先生の著書(厳密には秋田先生との共著)

課題文として出題されるのは「学びとは何か」や「ことばと思考」だが、今回の著書は今井先生の最新刊ということもあり読んでみた。

高校生が自身の進路を決める際に言語学、国語教育、外国語教育などを子供の言語発達を学びたいなら読んで損はない。

大学で学ぶ専門的なことを新書レベルに落とし込んで説明してある。この本を読んで、さらに興味が湧けば専門にして楽しく学ぶことができるだろう。逆に本を読んでピンとこなければこの分野を専門とするのは避けても良い。もちろん言語学は幅広いので、一冊だけで決めずに、もう一冊ほど読んでみるとよい。

本著は今井先生の専門である認知言語学Cognitive linguisticsのオノマトペについての研究から、人間が言語を習得する過程に身体性が必要であることなどが説明されている。

例えば「甘い」という言葉は実際に味覚で甘さを感じて初めて理解する。この身体性にオノマトペが寄与する。ブンブン振り回す、スタスタ歩くなどがそれである。そう言った意味でAIの言語学習が単なる記号操作である一方で、人間の言語学習は身体的な理解が伴っている。

また人間の言語習得はアブダクション推論(仮説形成)では人間の言語習得の傾向や特徴が説明されている。驚くべきなのはその学習能力は非論理的であり間違いを繰り返しながら正しい理解に近づいていく。そう言った意味でAIの学習プロセスや動物の言語学習とは質的に違うのである。

例えば、猿に、丸三角四角を示したら、それぞれ赤青黄色を選ぶことを学習させても、逆に青色を見せては何も反応しない。だが人間は青色を見て丸三角四角の対称的な推論ができる。

本書には言語学で有名なチンパンジーのアイやガヴァガイ問題など説明されており、冒頭で述べた様に高校生が進路について模索する際に十分価値を発揮する。
言語学に限らず、学問の根底が人間の理解、「人間の人間らしさ」の理解であると感じる一冊である。

その他、高校生が読んでおきたい教養書は以下

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