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高校生が読んでおきたい教養書:「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎


理系学生の研究キャリアについて知る

本著はバッタ好きをトコトン突き詰めた理系学生のキャリアについて知ることができる。フィールドワークをしながらバッダの生態についてひたすら研究を続ける生活を垣間見ることができる。
アフリカの現地住民との交流をしながら、日本で研究室の中で行われる実験と、アフリカの野生のバッタ研究に大きな違いがあることを知り、フィールドワークの大切さ(大変さも)を知ることができる。
また、好きを突き詰めたが故に京都大学の白眉プロジェクトの審査に通り給料を貰いながら研究するという研究者としての道を切り開いていく。
アカデミックの世界というとガリヒョロのいわゆる研究員が実験室に篭るのをイメージしがちだが、実際は野外に出てバッタの検体を採取したりと想像以上にアクティブで、アフリカという異世界に飛び込んでいく思い切りと、粘り強さがキャリアの道をたくましく切り開く姿を高校生に知ってほしい。

フィールドワークとは?

昨今は探求の時間から、高校生でもフィールドワーク活動をする場合がある。野外あるいは実験室外の作業・仕事・研究。野外研究。あるいは現場または現地での探訪・採集。実地調査のことを指す。
実際、本著でもバッタが虫かごの上部に集まる理由は日本の実験室ではわからなかったが、アフリカでは藪の上部に集まることで、朝の光を浴びて活発になる温度を待つということが観察によってわかる。一方で、外敵が来れば藪の中に隠れる習性や生態も明らかになる。それらの発見は日本の実験室では決して分からなかった事実だろう。

一方で、アフリカの地に長期間滞在し、現地住民と人間関係を築きながら生活をする大変さが語られている。食事だけでなく言語の壁、金銭面、思う通りに進まない研究などフィールドワークの大変さもある。

アカデミックキャリアについて

博士号を取得後、学生から研究者として、研究所、⚪︎⚪︎センターの研究員や大学非常勤講師として働きながら研究実績を積み上げる。より内容の濃い研究論文を書き、査読のある研究雑誌に掲載される。または学会での発表を行うことが必要になる。もちろん学会発表を通じて共同研究に誘われたりと、その界隈で認められていくことが必要になり、大学教授として採用されることを目指す。その後も研究を続け、テニュアtenure(大学教授として終身雇用が保証されること)を目指す。

本著ではフィールドワークでの研究成果が認められて京都大学が実施している白眉プロジェクトの研究員として採用される。若手研究員としては十分な給料が保証されている。このプロジェクトに採用されること自体が優秀であることの証明となっており、その後のアカデミックキャリアは明るいことを意味する。同じ白眉プロジェクトの卒業生(aluminiアルミニ)とのつながりも得られる。

高校生の進路選択

高校生の進路選択では、やりたいことがボンヤリしていることが多い。好きなことに出会えていないと言うのが原因かもしれない。
探求の時間がキャリア教育として広がり現状の改善が期待されており、本著が高校現場での探究活動の指南書になりうる。
現状まだまだ高校生へのキャリア教育は課題が多い中で、やりたいことがあっても、突き抜けて専門性を高めていく熱量や覚悟が足りないことが多い。本著の内容のように成功者バイアスはあるものの、将来に不安を抱きながらも好きなことをやり続け道を切り開く若手研究者(高校生からすれば人生の先輩)のエピソードは高校生の将来のイメージや夢を与えるはずである。

その他:高校生が読んでおきたい教養書

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