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創作の種になりそうなものを書き込んでいこうと思います。

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記事一覧

素数ゼミの本を読んだ

吉村仁さんの素数ゼミの本を読んだ。とても面白かった。 素数ゼミっていうのはアメリカに生息する蝉のこと。これには和名がなくて、日本にはいないので、たぶん聞いたこと…

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1年前
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夏目友人帳の感想

アニメ一期から六期まで全部見た。赤ちゃんを抱いたり見守ったりするだけの時間を優しさで埋めてくれた。 人と妖怪という価値観の違う者たちが交わり合うところがよい。一…

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2年前
3

心を開いて

会社でリーダーは何をするべきかという講演があった。繰り返し語られていたのは、胸の内を明らかにし、意思、信念、理想など目標となるものを指し示すこと。そして、自らの…

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2年前
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そういう日常があります

めずらしく早朝に目が覚めた。雨が地面に染みていくしとやかな音とそれを跳ねのける車の音が聞こえる。掃除をしようかと迷っていたら、めったに無い電話がかかってきてごめ…

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3年前
3

アイスクリーム

夜更かしをして、それから目を覚ましたら、不思議と火が消えたみたいに意気消沈していた。遠い目標はいつまでも遠くて、夢をみるにもおぼつかない。残っているのは自分を憐…

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3年前
7

生物

緊急自体宣言の終わり頃、布団に転がって天地創造デザイン部という漫画を読んでいた。この本は、動物たちがどんな風に生きているか、体の仕組みがいかに優れているか、その…

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4年前
2

ときに消え去りたい

勤めている会社が八周年ということで、ちょっとしたお祝い会があった。まだ緊急事態宣言は明けていないため、数百人の社員が各自ビデオ会議に接続する。社長の web カメラ…

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4年前
2

方丈記

方丈記の序文は高校の教科書に出てくるくらい有名だ。 ゆく河のながれは絶えずして、しかもゝとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくと…

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4年前
5

箸置きを見るたびに

ちょっと値段の高い和食店に行くと、箸置きがちょこんと並べてあることが多い。 どれも右利きが取りやすい向きに置かれているので、左利きである自分には使いにくい。これ…

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4年前
4

砂丘を越えて

やがて私は砂丘へとたどり着いた。絵で見た砂浜のように美しいものを思い描いていたが、それとは似て非なるものだった。あちこちに折れた枝、枯れ葉、黒く変色した何かの漂…

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4年前
4

サービスしない

実家で両親と話していて気づいた。僕は、家族に対するサービス精神がない。たとえば「仕事の調子はどう?」と聞かれたときの返事が圧倒的につまらない。「ボチボチやね」そ…

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4年前
2

ただ二輪だけ桜が花開いている。日向は暖かいのだが、日陰は寒々としている。また、風の強い日でもあった。コートを脱ぐにはまだ早い。 久しぶりの外出だったので、買い物…

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4年前
5

夢を語る力は持ち合わせていない

自分らしく行きましょう。自己実現しましょう。不意に、そんなことばを目にして、思わず顔をしかめた。胸から湧いてくる苦々しさはなんだろう。 僕は、いつからかわからな…

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4年前
3

不確かな生き物

私は芯のないぐにゃぐにゃの人間だ。今日には自信満々に言っていたことが、翌日には他人の意見で裏返ってしまう。そんな風に、意見がいつもフラフラと漂ってブレにブレてい…

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4年前
1

たくさん寝た

日曜日。午前十一時に目を覚ます。昨日の牛丼の残りを温めて、白菜の漬物と一緒に食べる。寒くて何かをする気になれなかったので、まずはエアコンを付けた。それでも気力が…

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4年前
7

非合理化推進委員会

なんかね。わかんないんだ。ぎらぎらしすぎてて嫌いなんだ。あれが大事これが大事。あれが欲しいこれが欲しい。成長。健康。将来。展望。計画。野心。評価。そういう生き方…

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4年前
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素数ゼミの本を読んだ

吉村仁さんの素数ゼミの本を読んだ。とても面白かった。

素数ゼミっていうのはアメリカに生息する蝉のこと。これには和名がなくて、日本にはいないので、たぶん聞いたことがないと思う。この蝉は13年ごとに大発生するという変わった性質を持っている。17年ごとに出てくる種類もいる。どちらも素数周期を持っているんだけど、どうしてこういう振る舞いをするのかはよく知られていなかった。そもそも、アメリカでは蝉という生

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夏目友人帳の感想

アニメ一期から六期まで全部見た。赤ちゃんを抱いたり見守ったりするだけの時間を優しさで埋めてくれた。

人と妖怪という価値観の違う者たちが交わり合うところがよい。一方にとってとても大切なことが、他方にとってそうではない。人の十年はとても長いけれど、妖怪にとってはそうでもない。その極端さが切ない。かなわない約束を十年でも百年でも待ち続けてしまう。人間では決してありえない純粋さに心を惹かれる。

主人公

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心を開いて

会社でリーダーは何をするべきかという講演があった。繰り返し語られていたのは、胸の内を明らかにし、意思、信念、理想など目標となるものを指し示すこと。そして、自らの理想だけでなく、チームメンバーの意思、信念、理想も汲み取って、両者をすり合わせること。これが大事なようだ。

その路線に沿ったものだろうか。つい先日も会社のスタッフで相互理解を深めようというイベントが行われた。コンテンツはメンバー同士の相互

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そういう日常があります

めずらしく早朝に目が覚めた。雨が地面に染みていくしとやかな音とそれを跳ねのける車の音が聞こえる。掃除をしようかと迷っていたら、めったに無い電話がかかってきてごめんねと言われた。今日の予定はなくなった。

いつでもどうでもいいと思っているけど、時々気がかりな、しょうもない事がひとつあったのでそれを片付けることにした。ひきだしの五段目に押し込んである厚紙をつまみ出す。それは年金の催促だった。無職だった

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アイスクリーム

夜更かしをして、それから目を覚ましたら、不思議と火が消えたみたいに意気消沈していた。遠い目標はいつまでも遠くて、夢をみるにもおぼつかない。残っているのは自分を憐れむ気持ちくらい。あれもこれも、まあ手につかない。洗濯をするには天気が悪い。勉強をするにしても、遊ぶにしても心の雲行きが怪しい。食欲でさえも、けだるい気持ちに勝てないでいる。おやこんなに生きにくいのは久しぶりだ。困った困ったと思いめぐらして

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生物

緊急自体宣言の終わり頃、布団に転がって天地創造デザイン部という漫画を読んでいた。この本は、動物たちがどんな風に生きているか、体の仕組みがいかに優れているか、そのデザインを面白おかしく紹介している本なのだが、読み進めているうちに、なんて人間はちっぽけなんだろうかと声が漏れた。

さまざまな生物がもっている生きていくための仕組み、生き残るための仕組み。それらすべてをひっくるめたデザイン。空を飛ぶための

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ときに消え去りたい

勤めている会社が八周年ということで、ちょっとしたお祝い会があった。まだ緊急事態宣言は明けていないため、数百人の社員が各自ビデオ会議に接続する。社長の web カメラにロウソクの火が灯ったケーキが映された。一人が音頭をとって誕生日の歌をうたい始めたが、通信の時差があるため揃わなかった。そんな様子を笑う声も聞こえてくる。記念写真をとりたいので、皆さん十秒くらい動かないでくださいと指示があった。

私は

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方丈記

方丈記の序文は高校の教科書に出てくるくらい有名だ。

ゆく河のながれは絶えずして、しかもゝとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。

端的な言葉を使って、河というものの性質から無常を導いている。現代語にはない重みがある。

知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。また知らず、現世においての仮の宿り、誰がためにか心をなやま

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箸置きを見るたびに

ちょっと値段の高い和食店に行くと、箸置きがちょこんと並べてあることが多い。

どれも右利きが取りやすい向きに置かれているので、左利きである自分には使いにくい。これはちょっとした差別ではないだろうか。少数派はいつも無視される。そんなことを思いながら箸を逆さに向けていた。

けれどあるとき、 秩序だって右にならえをしている箸が尊いものに見えてしまった。そのかたちを乱す自分が、卑しい悪人に思えたのだ。そ

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砂丘を越えて

やがて私は砂丘へとたどり着いた。絵で見た砂浜のように美しいものを思い描いていたが、それとは似て非なるものだった。あちこちに折れた枝、枯れ葉、黒く変色した何かの漂流物がちらばっている。そして、見たこともないグロテスクな植物たち。びっしりと細かな毛を持ち、触手のような細く肉厚な葉を持つもの。ひょろ長い茎に一切の葉をもたず、鋭く尖った種だけを持つもの。どれもがほとんどは枯れ萎びている。それらが風に虚しく

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サービスしない

実家で両親と話していて気づいた。僕は、家族に対するサービス精神がない。たとえば「仕事の調子はどう?」と聞かれたときの返事が圧倒的につまらない。「ボチボチやね」それだけだ。無味乾燥に過ぎる。

職場がどんなところか、働いている人はどんな人がいるのか、いまどんな仕事に取り組んでいるのか。探せばいろいろな話題があるというのに、それを一切話さない。話を広げない。

なぜそれほど冷たくなるのか。意地悪をして

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ただ二輪だけ桜が花開いている。日向は暖かいのだが、日陰は寒々としている。また、風の強い日でもあった。コートを脱ぐにはまだ早い。

久しぶりの外出だったので、買い物ついでに公園へ足を伸ばすことにした。人影は少ない。ボールを蹴って遊んでいる母子、バドミントンをする若い二人、ベンチに腰掛けた老人、それで全てだった。あまりにも静かで、花壇のパンジーは生き生きとしている。乾ききった噴水の広場も、閑散としてい

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夢を語る力は持ち合わせていない

自分らしく行きましょう。自己実現しましょう。不意に、そんなことばを目にして、思わず顔をしかめた。胸から湧いてくる苦々しさはなんだろう。

僕は、いつからかわからないけれど、ゲームを作る人になりたいと思って、なんとなくコンピューター関係の大学に進んだ。そして、ゲームというものがどのように作られているか、おおよそ想像できるだけの知識を得た。知り得た技術を使って、自分なりのゲームを創作した。何かができた

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不確かな生き物

私は芯のないぐにゃぐにゃの人間だ。今日には自信満々に言っていたことが、翌日には他人の意見で裏返ってしまう。そんな風に、意見がいつもフラフラと漂ってブレにブレている。たまに自分がなさすぎると思って、強引に物事を決めたりする。

価値観さえもブレている。厳しくなければ人は成長しない。自分を追い詰める修行僧のような生き方が最高だ。みたいに考えていたこともあれば、優しさだけが唯一普遍に世界を救う。最後には

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たくさん寝た

日曜日。午前十一時に目を覚ます。昨日の牛丼の残りを温めて、白菜の漬物と一緒に食べる。寒くて何かをする気になれなかったので、まずはエアコンを付けた。それでも気力が湧いてこなかったし、何かをする予定もなかった。だから、布団を敷き直して体を横たえた。携帯を少し触って、誰かとのつながりを求めたけれど、何もなかった。動画のチャンネルを回ってみるが、見たいと思えるものがなかった。とりあえず三十分ほど流してみた

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非合理化推進委員会

なんかね。わかんないんだ。ぎらぎらしすぎてて嫌いなんだ。あれが大事これが大事。あれが欲しいこれが欲しい。成長。健康。将来。展望。計画。野心。評価。そういう生き方じゃなくて。うまく生きることじゃなくて。きらびやかに生きることじゃなくて。スマートさじゃなくって。

珍しい雲の形をぽやっと見つめているみたいな。なんら過去と未来と自分に関わりのない微かな変化に心を温めること。イルミネーションの周期がぴった

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