そういう日常があります

めずらしく早朝に目が覚めた。雨が地面に染みていくしとやかな音とそれを跳ねのける車の音が聞こえる。掃除をしようかと迷っていたら、めったに無い電話がかかってきてごめんねと言われた。今日の予定はなくなった。

いつでもどうでもいいと思っているけど、時々気がかりな、しょうもない事がひとつあったのでそれを片付けることにした。ひきだしの五段目に押し込んである厚紙をつまみ出す。それは年金の催促だった。無職だった期間に払っていなかったものだ。これが何度も繰り返し送られてきているのでうんざりしている。

払うべきものを払っていないという立場から送ってくるので、払っていない事実と、払う方法しか書かれていない。それが正当かどうかはともかく、人を苛立たせる書類だなあと思う。

自分が手掛けるとしたら、年金という制度がどのようなものかということをおさらいしておいてから「これだけ金額を払っておくとお得ですよ」と書くだろう。そうしたら受け取る人も、気持ちよく払うことができるに違いない。まあ、それはたわごとだ。当事者でもないのに、俺ならうまくできる、というのは、そういう遊びでしかない。

コンビニでまとまったお金を引き出してから、近くの郵便局へ向かった。郵便局にお世話になったことは人生で数えるほどしかないけれど、働いている人たちは忙しそうにしていた。待合室のソファは空っぽなのに、整理券をお取りくださいと言われた。当然、すぐさまが呼び鈴がなって自分の番になる。プログラムみたいに正しい。請求書といくらかの金額を渡すと、領収書と控えが帰ってきた。切り取り線から少しずれてちぎれていた。

あとあとわかったことだけど、実は年金の支払いはコンビニにも窓口がある。ようするに、お金を引き出してから移動する必要はなかった。今日はそういう日なんだと思って、めちゃくちゃ遠くまで歩いてみることにした。せいぜい隣町の公園に行くくらいだけれど。

車がとにかく騒がしいのでイヤホンを耳に押し込んで、ランダムな音楽をかけた。まあまあセンスが合う。当然自分がダウンロードしているのだからそうにきまっている。いろんなものに対してくだらねーと思った。型通りの会話をすることや、同じ定食を食べ続けることや、健康を気にしている自分など。そういうものを振り払うことが未だにできていない。汗のへばりつくシャツが不快だったので、全裸でリングフィットをやった。腹の肉が揺れているのがわかる。客観的にかなり痛ましいことだなと思った。

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