株式会社エデュテクノロジー
教員対談シリーズ 「 評価について考える 3 」後編
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教員対談シリーズ 「 評価について考える 3 」後編

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「 教育について語ろう! 」と題して、メルボルン大学大学院で教育評価について学び、現在オーストラリアで働くアセスメントデザイナーの髙木俊輔氏と現役教員の勝田浩次氏が対談。

今回は、専門家である髙木氏に聞く「 評価について 」全3回シリーズの第3回目後編を紹介する。

前編の対談では、「評価=情報収集」と捉え、「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」のうち、最初に行われる「診断的評価」と、最後に行われる「総括的評価」について解説した。後編となる今回は、学習の途中に行われる「形成的評価」について紹介する。
評価について語ろう3 前編はこちら

勝田浩次 先生


形成的評価:「学びのための評価」


髙木氏によると、「形成的評価」とは「学びのための評価」と言われ、指導の途中で行われる「評価=情報収集」だという。学習者が学んでいく中での学びの現在位置、つまり、どこまでできているのかという情報を収集し、その後の指導に生かしていくというものだ。

このような話をすると、「形成的評価に使えるテストや課題の作り方はありますか」と聞かれることが多いそうだが、これはテストの作り方というよりは使い方の問題で、期末試験などで使っている問題を情報を集めるための「形成的評価」の手段として使うことも可能だ。ここでもフォーマルとインフォーマルがあり、「形成的評価」は「5秒から5年」と言われているという。例えば、授業で何か新しいことを説明した際、生徒たちが首をかしげていたら、説明の仕方を変えるだろう。この間、5秒である。

「形成的評価」に対してハードルが高いと考える必要はなく、まずは今授業で行っていることの方法を少し変えて意図的に行うと、より効果的にできる可能性がある、と髙木氏は語る。

髙木俊輔 先生


学習者の情報を活用して学びを改善


では、どのように進めていくのか。もう少し掘り下げると、「形成的評価」において、生徒が何ができて何ができていないのか、というのを把握して分析することで、例えば、「今はこんなことができているから、次はこんなふうにするといいよ」というフィードバックをしたり、学習者のデータを使って、「ここはうまくいっていない、ここはうまく理解されていないみたいだから、次はここの復習から入ろう」といった授業デザインに活かしたりすることができる。

あるいは、Scaffoldingといって、自分で乗り越えられるように足場をかける。これは、小学生の漢字ドリルをイメージしてもらうとわかりやすいだろうか。最初にモデルとなる漢字があり、その次に漢字をなぞって書けるようになっており、最終的には自分で書けるようにする。これと同様に、学習者ができないことをアシストし、だんだん足場を外してあげて、自分でできるように促していく。「このような形で、学習者の状況をちゃんと観察して情報収集をすることで、より的確な指導を行うという意味で形成的評価はすごく大切なんです。」と、髙木氏は言う。


学びのサイクルを作る


また、「形成的評価」とは、サイクルを作ることが重要だという。ゴールを定義し、学習者の状況を情報収集し、集めた情報を分析して解釈し、それを活用して改善する、そしてまた次の課題を定義づける、このような循環を作り、それがスパイラルのようにぐるぐる回って上を目指していくというのがイメージとしての「形成的評価」だと髙木氏は解説する。

そして髙木氏は、「すごく大切なのが、その形成的評価のプロセスの参加者というのは先生だけが頑張ってもダメなんです」と強調する。「学習者が自分がエラーを起こしているということを自覚して、改善していかないといけないので、このプロセスの参加者には、生徒、学習者というのがすごく重要なパーツとなっているんです」と付け加える。

「そういう意味では、その学習者と先生との関係性も結構重要になってきそうですね」と言う勝田氏に対し、髙木氏は、「それはすごく大事なポイントで、先生が『君なんかどうせやったって無理だよ』と考えているなら絶対伸びない。そうならないような場作りとか雰囲気作りというのはすごく大切。エラーが起こるのが前提の考え方なので、エラーフレンドリーな環境にしていく必要があると思います」と述べる。

自律的な学習者を育てる


では、なぜこの「形成的評価」が必要なのだろうか。ここまでの話の中で、「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」、それぞれ目的が違うということが伝わっただろうか。それぞれ目的が異なり、それぞれ大事なのだが、ほとんどの先生が「総括的評価」に過度に偏ってはいないだろうか。

髙木氏によると、「形成的評価」の最大の目的とは「自律的な学習者を育てること」だという。この自律的な学習者とは、研究者たちにより、「個人の目標を達成するために自ら何をすれば良いのかを考え、自らを動機付け、自発的に行動する循環を作り出すことができる人」と定義づけられている。

「評価のプロセス自体を自分の学びの中に取り込んでいくことができたら、自分でどんどん学べる人になっていく可能性があるんです」と髙木氏は述べる。「自分でやる気を出して、課題設定して、どれくらいできているか自己評価しながらまた調整して、こういうところができていないから、ここを変えてみよう、とやって、振り返って、次の目標を設定して、というのを、例えば、クラスの40人全員ができていったら素晴らしいじゃないですか」これに対し、勝田氏も「すごい。夢のよう。でもそれが本当の学びなんじゃないかなというのを聞いていて、すごく思いました」と続ける。髙木氏は「もちろん、そんな簡単ではないが、評価を変えると、こうなっていく手助けができる可能性があります」と語る。


教師の評価観


さらに話題は、教師の評価観に及んだ。髙木氏によると、教師の評価観というのは、自身が学習者だった時にどのような評価を受けてきたかという経験に大きな影響を受け、それら評価される側としての経験が教師自身の評価観を形作る。日本で教育を受けてきた教師にとっては、自身の評価経験が色濃く影響を受け、どうしても総括的な評価が中心となってしまう。今回の対談の最初に提示した「評価=成績」とイメージする先生が多いというのは自然なことで、これは日本だけでなく、いろいろな国で同じ問題を抱えており、世界的な動きとしてこの研究が進められているという。

髙木氏「システムの問題もあり、すぐに変えることは難しいと思いますが…何から変えていきましょうか」
勝田氏「まずは『成績 ≠ 評価』じゃないですけど、成績以外の評価もあるんだ、というところから始めてみようかなと思いました

まとめ


最後に、勝田氏は「評価」について次のようにまとめた。「最初に行う評価が『診断的評価』で、ここでいう評価とは、学習者がどんなレディネスを持っているのか、その学習に対するニーズや関心、どれくらい理解できているのか、というのを測ったり情報収集をする。一方で、最後にするのが『総括的評価』で、学習者がその学習を通してどのようなことができるようになったのかを確認する。その間に行うのが『形成的評価』で、学習者がわかったりわからなかったり、できたりできなかったり、腑に落ちたり落ちなかったり、というのをつぶさに見て、それを還元していく。観察して、情報収集して、授業に生かす。もっとわかりやすいようにするとか、そういうために使う。」

そして、教員対談シリーズ「評価について考える」は今回で最終回だが、またどこかでこの続きができることを期待しています、と締めくくった。


教育評価研修のご紹介


教育評価について学ぶことができる「評価を使って学びを支援!ゼロから学ぶ評価理論と実践」は、教育評価についての基本的な考え方と、学習者の学びを評価を使って支援するための方法を、講義とワークショップを通じて学ぶことができる研修です。教育評価の専門家である髙木氏が講師を務め、教育評価の理論を分かりやすく、実際の教室での実践に結びつけやすい形で学ぶことができると、多くの現職教員から好評をいただいています。


【お申し込みについて】
お申し込みは、電話またはメールにてお問い合わせください。
こちらの研修は「ICT × 学びアンケート」とのパッケージ、または研修単体でもお申し込みいただけます。

電話 : 03-5953-7820
メール:contact@edutechnology.co.jp
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