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【掌小説】スローな部屋にしてくれ
明るい迷宮だった
天井、通路そして壁・・どこも白く輝き眩しいほどで床にもちり一つない
迷宮と言えば暗く、おどろおどろしい魔物が徘徊するゲームのそれを連想していたがそんなのとは大違いだ
光源がそこら中にあるように空間全体が輝いている
たくさんのドアが通路の両側に並んでいるがそのノブまで白かった
試しにその中の一つを開けてみるとそこそこの広さの部屋に出た
白い壁に囲まれがらんとして窓ひとつない
正面と
【掌小説】わたしはモブ
わたしはモブ
誰でもない者
誰も気に留めない者
そこらへんにいる者
名無しの権兵衛
どこかの馬の骨
ただの通りすがり
端役ちょい役死体役、エキストラエトセトラその他大勢
まあなんとでも呼んでくれ
ある時わたしは漫画の中にいた
どこか見知らぬ街の広場
何やら祭りのまっ最中
大勢の人が繰り出して多くの露店が立ち並び
家族づれに学生たち初老の夫婦に背広姿のサラリーマン
誰も彼も楽しげに
大道
【掌小説】コロボックル
その日、俺は山にタケノコを切りに行った。
といっても食べるためではない。
タケノコが成長して竹になると植林しているヒノキを枯らしてしまうから駆除に行ったのだ。
その時は六月も終わりで暑い日が続いていた。
それでなるたけ涼しいうちに済ませようと早朝家を出た。
件の場所はバイクで10分ほど山あいの道を行きそこの脇道を入ってすぐのところだ。
バイクを道の脇に停め山の斜面を見上げると案の定、ヒノキの間に