本好きな50代男。 素人ですが朗読や私訳をしています。 最近は小説や俳句、書評も始めま…

本好きな50代男。 素人ですが朗読や私訳をしています。 最近は小説や俳句、書評も始めました。

最近の記事

俳句

クルマ消す 正月の 朝の光かな 白鳥の 直進せるや 空の道 ウグイスや 小さな突破を 繰り返し オリオンの 西に隠れて フクロウ啼く 春散歩 名のない世界を 歩いてきたよ 白鳥の しらとりと読めば 親しきかな 青空に 無心に紡ぐ クモの脚かな 遠回り すれば咲いてる 山躑躅 タケノコも 深き闇もつ 鬼の角 春猫や 日に日に 奥に入りたがり 若き芽や 春の大気に 包まるる 日めくりの 痩せるばかりの 師走かな 秋の庭 部屋の灯火 こぼれけり

    • 名探偵ポワロ「ABC殺人事件」 昨夜視聴した。 犯人役の俳優さんがどうもミスキャストっぽいのが残念。 原作はあんなに年いってたかなと。 陰の主役?カストさん役の人は好演。 全体的には長さを感じず最後まで楽しめた。

      • 名探偵ポワロ「三匹の子豚」面白かった。一度見ただけではわからないところがあったので見直します。超おすすめです。

        • 輪ゴム

          あのね 今日もね 母ちゃん ゴム パチンパチンやってたねん 左の手首にはめてる輪ゴムや それを右の指でつまんで はなして パチンパチンって なんでそんなことしてんのや 痛うないんかって聞いたら バツやから良いよってん なんのバツやって言ったら ヘンなこと思い出すからそのバツや こうしたらそのうち思い出さなくなるからって ヘンなことってなんやってまた聞いたら何もこたえなんだ あいかわらずまじめな顔でパチンパチンやってんねん 赤うなっとるからもうやめときって言ってもやめへんねん

        • 名探偵ポワロ「ABC殺人事件」 昨夜視聴した。 犯人役の俳優さんがどうもミスキャストっぽいのが残念。 原作はあんなに年いってたかなと。 陰の主役?カストさん役の人は好演。 全体的には長さを感じず最後まで楽しめた。

        • 名探偵ポワロ「三匹の子豚」面白かった。一度見ただけではわからないところがあったので見直します。超おすすめです。

          【掌小説】スローな部屋にしてくれ

          明るい迷宮だった 天井、通路そして壁・・どこも白く輝き眩しいほどで床にもちり一つない 迷宮と言えば暗く、おどろおどろしい魔物が徘徊するゲームのそれを連想していたがそんなのとは大違いだ 光源がそこら中にあるように空間全体が輝いている たくさんのドアが通路の両側に並んでいるがそのノブまで白かった 試しにその中の一つを開けてみるとそこそこの広さの部屋に出た 白い壁に囲まれがらんとして窓ひとつない 正面と左右にドアが一つずつあるだけだ 私は部屋を横切って正面のドアへ入った  するとま

          【掌小説】スローな部屋にしてくれ

          【おすすめ本】 『物語 イタリアの歴史』(藤沢道郎著・中公新書)

          タイトルに偽りなし、歴史書というより物語。しかも危険なほど面白い。 全十話で一話につき一人の重要人物。彼らの生涯を軸にその歴史的背景を織り込み、西ローマ滅亡からイタリア統一までを描いている。 読み始めて舌を巻いたのはその力強くも品格ある語り口。 複雑なイタリア半島の情勢をここまで整理して面白い「物語」にしたのは凄い。 各話コンパクトでありながら、ずしりとした重みを感じるのは、構成が緊密で展開に無駄がないせいだろう。何をどのように切り残せばベストか確かな眼を感じさせる。まるで腕

          【おすすめ本】 『物語 イタリアの歴史』(藤沢道郎著・中公新書)

          【プチ書評】 『ヨーロッパ史入門 原型から近代への胎動』(岩波ジュニア新書)

          山川の詳説世界史研究を一通り読み終えたのでおさらいのつもりで読んだが、あれもこれもと盛り込みすぎ&アカデミックな固い文体で読み辛いところがある。入門、ジュニアという割にはハイレベル。 しかしその一方でどれだけキリスト教がヨーロッパの土台を作るに影響大であったか俯瞰的な視点で知ることができたのは良かった。また古代以来のヨーロッパの「他者」イメージについての記述は興味深く示唆に富み、色々考えさせられた。学習の進んだ方にはより多くの知見が得られるかもしれない。

          【プチ書評】 『ヨーロッパ史入門 原型から近代への胎動』(岩波ジュニア新書)

          【掌小説】車輪虫

          「おいきゅうりはどこにいった」 その日散歩から帰ってきた柏原は妻に尋ねた 「きゅうり?」 流しで朝食の準備をしていた留美は振り向いた 「前にここにたくさんあったろ。どこに置いたんだ?」 「もう全部漬けちゃったわよ 明日にはおいしく食べられるけど、なんで?」  柏原は答えず冷蔵庫を閉めるとツカツカと妻の隣までくると流しを覗いた。 「ちょっと何?」  「あった」  彼は三角コーナーからひょいと小さなものをつまみ上げた  留美がきゅうりを浅漬けする際に捨てたきゅうりのヘタであっ

          【掌小説】車輪虫

          【童話】クジラの死

          (仲間のくじらが語る) 爺さんあんたはもう歳だ、ふさぎこんでため息ばかり  ろくに動きもしやしない 昔は四海を股にかけ あっちへこっちへ旅してた 北の果てから南の果て 東の果てに西の果て 行ったことない場所なんてなかったもんさ シャチどもに囲まれて戦ったこともある  ニンゲンに殺られそうになったこともある 頭や腹の傷はそのあかし それがどうだい、今じゃ日がな日向ぼっこ 若い奴がジャンプするのを見てるだけ おまけに最近は食欲もガタ落ち 若い時は逃げるニシ

          【童話】クジラの死

          【掌小説】蛍

          夫が亡くなりましたのはもうかれこれ10年になりますか、はい、そうです、高校の英語の教師でした。退職してからは翻訳の仕事をして本も何冊か出しました。ええ、それはもう根っからの学者肌といいましょうか、分厚い辞書に囲まれて朝から晩まで机に向かっておりました。 亡くなる一週間前でしたか、病院のベッドの中でこういいました。 ほんとうに幽霊というものがいるなら、俺が死んだら閻魔大王に頼んで必ず幽霊になってでるからおまえよくみておけ。スマホを枕元に置いていつでもとれるようにしておけ。足

          【掌小説】蛍

          【童話】ぽんぽこ

           定吉じいさんの家の玄関前にはたぬきの置き物がおいてありました。  おじいさんの肩までもある大きなたぬきで笠をかぶって右手にとっくり、左手に帳面をもっています  そうして少し首をかしげてまん丸い眼をいつも驚いたようにあけて立っていました  このたぬきは定吉じいさんのおとうさんのそのまたお父さんのもので、昔からここに置いてあるのです  たぬきの左の耳の先が少し欠けているのは おじいさんの孫が遊びに来た時あやまって倒してしまいその時できたものです  おじいさんはこのたぬきの置物を

          【童話】ぽんぽこ

          【短編小説】ホドキ神 

          ラズカ大陸東南にある小国ツラ。 南を海に面したこの国では古くから漁業を中心に栄え、賢明な国王のもと人々は長い間平和に暮らしていた。 ところが年老いた王の後継者を巡り宮中で内紛が絶えなくなった頃、この国を突如として「コブ禍」と呼ばれた災厄が襲った。 後に大陸全土で猛威を振るったこの怪異現象がなぜこの時期ツラで発生したかは不明であるが、記録によると、ことの発端はとある漁村でのことであった その日ひとりの漁師が納屋に行ったところ壁にかけておいた筈の縄が床に落ちていた そればかりか、

          【短編小説】ホドキ神 

          【掌小説】珈琲店にて 

          根津は外回り中よく喫茶店に立ち寄って仕事をする。 よく行くところは全部で5軒、中でも最近気に入ってるのが「玄」という珈琲専門店であった。 まだ開店して間もない店で黒を基調としたシックな店内は広く清潔で客層も中高年が多くノマドには絶好だった。 「根津さん」 ある日その店でpcに向かっていると近くで声がした。 ふりむくと大学の後輩の山上だった。 会社の飲み会で何度か話したことがあるが部署が違うから普段はあまり顔を合わせることがない。 すらりとした長身に真新しい紺のスーツがよく似

          【掌小説】珈琲店にて 

          【掌小説】わたしはモブ

          わたしはモブ 誰でもない者  誰も気に留めない者 そこらへんにいる者  名無しの権兵衛 どこかの馬の骨 ただの通りすがり   端役ちょい役死体役、エキストラエトセトラその他大勢 まあなんとでも呼んでくれ ある時わたしは漫画の中にいた どこか見知らぬ街の広場 何やら祭りのまっ最中 大勢の人が繰り出して多くの露店が立ち並び 家族づれに学生たち初老の夫婦に背広姿のサラリーマン 誰も彼も楽しげに 大道芸を眺めたり 写真を撮ったり 木陰のベンチに休んだり 噴水では子供たちが歓声を上

          【掌小説】わたしはモブ

          【掌小説】コロボックル

          その日、俺は山にタケノコを切りに行った。 といっても食べるためではない。 タケノコが成長して竹になると植林しているヒノキを枯らしてしまうから駆除に行ったのだ。 その時は六月も終わりで暑い日が続いていた。 それでなるたけ涼しいうちに済ませようと早朝家を出た。 件の場所はバイクで10分ほど山あいの道を行きそこの脇道を入ってすぐのところだ。 バイクを道の脇に停め山の斜面を見上げると案の定、ヒノキの間にタケノコがあちこち顔を出している。 皮を落として既に竹になったのも何本かあるよう

          【掌小説】コロボックル

          【掌小説】放し亀

          ある朝、散歩の途中いつもと違う道を行きたくなった。 こんないい天気に道草の一つもしないのは勿体無い。 今日は休日だし、たまには寄り道をしてもいいだろう。 それでいつも通る橋を渡ると左へ折れた。 ここは川沿いの小高い土手になっていて左手は川、右手には似たような平家が土手沿いにずらずら並んでいる。 その中の一軒の庭に色とりどりの花が咲いていた。 写真に撮ろうと石段を降りたが、スマホを家に忘れてきたのに気づいた。 舌打ちしてバラが家の柵から覗く横を通り過ぎる。 いくらも行かぬうちに

          【掌小説】放し亀