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読書記録:エロゲのヒロインを寝取る男に転生したが、俺は絶対に寝取らない (角川スニーカー文庫) 著 みょん

【奪われてから始まる恋愛、呪いのような運命に打ち勝つ想い】


【あらすじ】
奪われる前からずっと、「あなたのモノ」ですから。

気が付いた時、エロゲの世界に転生していた。

【僕は全てを奪われた】という寝取られエロゲの主人公・佐々木修ではない。

修を献身的に支える幼馴染ヒロイン・音無絢奈を修から寝取る親友キャラ・雪代斗和に、だ。

幸いゲームのストーリー開始まで一年も猶予がある。

自分に寝取りの趣味はないし、俺が彼女を奪わなければ二人は幸せに結ばれるはずなのに。

「二人っきり、ですね?」

修がいなくなった途端に体を密着させてきた絢奈は膝の上に乗ってきて──もしかしてこの二人、ゲーム開始前からすでに関係しているのか!?

これってNTR(寝取られ)?

BSS(僕が先に好きだったのに)?

どちらでもない、濃厚純愛ラブストーリー開幕!

あらすじ要約
登場人物紹介


エロゲの世界に転生した雪代斗和は、幼馴染の絢奈を修から奪う運命に抗う物語。


NTRのゲームにおいて、間男というのは大概嫌厭される存在である。
大切なヒロインを奪っていく様子は、特定の嗜好が無ければ受け入れられない。
では、そんな最低なキャラの立ち位置に産まれ変わったら?
寝取りの趣味は無い斗和を修が居ない時に誘惑する絢奈。
彼女の思惑が徐々に明かされる中で、呪われた運命に縛られている事に気づく。
そして、斗和はNTRエロゲ世界の寝とる側のキャラに憑依する前の記憶が存在しない謎がわだかまる。

かつて、一世を風靡したNTRエロゲ、【僕は全てを奪われた】というゲーム。
好意を寄せていた幼馴染も、自分を慕ってくれた先輩も。
気が付けば全てを無惨に奪われていた主人公、修の目線で体験していくと言う、人を選ぶような悪趣味なゲーム。
目を覚ました時、この物語の主人公はそのゲームの世界に転生を果たしていた。
しかし、それは修としてではなく。
修から全てを奪う親友であり幼馴染、斗和としてだったのである。

無論、現在の斗和に寝取り趣味も寝取られ趣味も全くない。
ゲーム始動の時間軸まで一年の余裕があるからこそ、修とそのヒロインである絢奈を結びつかせようと動き出す。
しかし、絢奈の様子がどこかおかしい。

呪われた運命と存在しない記憶が恐らく、この状況を打破出来る鍵のはずで。
朧げな前世の知識と彼自身の記憶による違和感を指標にして、日常を過ごしていく。
親友から彼女を奪う最低な人間に成り下がりたくないが、二人きりになると始まる絢奈の恋人距離の濃厚接触。
修がいなくなった途端に絢奈は豹変する。
蠱惑的に誘ってくる絢奈を鋼の自制心で耐え忍ぶ。
記憶のない前世の自分も、それを確かに望んでいるはずで。

未来を先読み出来るアドバンテージを活かしたいが、ゲームの裏設定というものが思いの外、厄介で。
それに加えてこの世界の悪辣さと歪な運命がことごとく、斗和の思惑を裏切っていく。
そして、何故、絢奈は彼氏を裏切るのか、そこに焦点を当てると浮き彫りとなる、斗和への痛烈な純愛と、修一家への隠された呪縛。

抑圧され過ぎて、歪んでしまった心。
幼馴染同士の幸せな恋愛関係という呪いを、家族から押し付けられていた絢奈。
彼女の愛情の裏にある、鬱積したどす黒さを知ってしまう。
やがて、修を中心にした人間関係の歪さが明らかとなる。

一体、彼女は心に何を秘めているのか?
その答えは、ついぞ、予想する事は出来なかった。
だが、ふとしたアクシデントで斗和が怪我をした瞬間に。
靄にかかった記憶がフラッシュバックのように蘇って、絢奈の想いを描いたファンディスクの記憶として、醜悪な真実を指し示す。

修の家族が絢奈にやった事を知ってしまえば、今まで見えてきた様相が、がらりと様変わりする。
彼女の重すぎる愛も、今まで吐き気を催すような環境に傷付けられてきたからで。
絢奈から放たれる激しい感情に打ちのめされながら、彼女の境遇を心の底から不憫に思う。
斗和への一途で濃厚な純愛とそれをあり余るような、修に対しての憎しみ。

それは、ゲーム本編では決して描かれなかった物語の裏側。
生き方を強制され、自分を救う光となってくれた斗和が哀しむのを見た時、周囲が取り囲む闇のせいで、絢奈が抱かずにはいられなかった黒い決意。
彼女を縛る全てを利用して、全てを奪って。
憎しみの終着点で、修から全てを奪わんとする、進み始めたのならば、後戻り出来ない茨の道。

そう、絢奈は斗和と結ばれる事で修に復讐を果たしたかったのだ。
悪意によって、心に憎悪を燃やし、破滅の道は開かれる。
破滅のルートはどうにか回避したいが、歪な闇で磨かれた想いが、斗和を引き留めようとする。

その愛はまさしく、破滅への招待状。
それでも、必ず良い未来を掴むのが自分の役目。
今の「斗和」に託された願い。
ゲームの登場人物ではなく、一人の人間として。
全てを巻き込み破滅の道へと堕ちていく絢奈を救い出すという使命。
それは、この世界の根幹を揺るがす、許されざる行い。
ゲームのシナリオという名の運命が邪魔をしてくるが、もう絢奈の哀しい涙は見たくない。

苦すぎる純愛の中で、人間の闇さえも受け入れて、彼自身の戦いに臨んでいく。
どう足掻いても、道行きは苦悩の道。
それでも、後悔しない為に、最低な運命をぶち壊していく。

果たして斗和は、増悪に燃える絢奈と親友である修の間を取り持ち、己の役目を果たして、二人を救う事が出来るのか?

沸々と燃える恋路の茨の道の先の景色とは、一体どういった物になるのか?

運命に抗う決意をした想いは、苦慮の中でも一途な輝きを放つのだ。








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