支那川之穂乃宮(シナカワノスイノミヤ)
少し未来の 日常を描いていきます。
2年前に書いた小説です。 加筆しながら改めて投稿してみようと思いました。
かみさまへ 何かの本で かみさん とか かあさん は 太陽を表す言葉だと書いてあった。 かみさま。と かみさん。 なんとなく不思議なつながりを思う。 男女のかけらが子宮に辿り着き 気が遠くなるほどの数の分裂を繰り返す。子宮に護られ からだができるとそこに魂が宿り 子宮から産道を通って この世に人として生まれおちる。 生物である限り 誰にでも「かあさん」は在る。 「ヒトには自分と他人を見分けて、 他者を拒絶する免疫というしくみが備わっています。 僕たちが
あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか オリオンの綱を解くことができるか 旧約聖書「ヨブ記」第三十八章第三十一節より 初めに地球を眺める科学者(創造主)になってもらいました。科学者は実験や研究結果を常に記録します。今度はその創造主(科学者)のしていることを眺めてみます。それが源(ソース)の視点です。源にはすべての情報(データ)が送られています。この源とは宇宙の源、【はじまりのすべて】わたしたちのソース。源の視点になれるという事はつまり私たちは源(ソース)と繋がっている
人の意識はとても深く広大で 自分の中に相反する存在をいくつも抱いています。それが人間が、光の子でもあり闇の子でもある所以です。自分の内側にあるものを受け入れずにいると、いつの間にかそのことしか考えられなくなってしまいます。闇に囚われるとはそういうことなのだと思います。 源は生きとし生けるものすべてに生命エネルギーを与え続けています。私たちの心臓が意識せずとも脈打つという事は源が見えないエネルギーを送ってきてくれているという事。源のエネルギーとは愛なのではないでしょうか。
しかしこのままでは帰ることもできない。どうしたらこの地に教えを広められるのか。希望で胸を膨らませてついてきてくれた息子、故郷の妻、あの不幸な少女たちは、私たちが帰れなければどうなってしまうだろう。追い込まれた父親は小さく独りごちた。 「クリートの信者を取り込めれば・・・。」 その言葉がギルダーの胸の奥に小さな種を落とした。父親は、クリートの名前を出し信者たちを集め、まずは話を聞いてもらう場を作ろう。と言った。元々はこの国の神と同じ神を信仰しているのだからとキリスト教をクリ
熱い想いとともに海を渡ってきたものの 言葉の通じない国、ましてやもう自国の宗教がある国にあたらしい宗教を広めるのは困難を極めた。食べ物も合わず 胸が焼けるほどの埃と日差しの中で父もギルダーもひんやりと湿った故郷の石畳に強く焦がれるのだった。教会は宣教活動の成果が見えないうちは迎えの船を寄こしてはくれなかった。それどころかこのままでは 故郷の家と母親たちの生活の保証はできないと仄めかすのだった。 食べるものもなく、焦りが焦りを生み出し、ただ時間ばかりが過ぎていく。親子は途
ギルダーは神父の父を誇りに思っていた。正義感が強く、誰もが自分のことしか考えていないこの町で父はまず人のことを優先し行動していた。人に奉仕することが自分を救うことになると。早く大人になり父と同じくキリスト教をたくさんの人に知ってもらうために活動をしたいと考えるようになったのはごく自然の成り行きだった。 時々教会に現れる真っ黒な髪の女の子。自分より二、三年下だろうか。サイズの合わない服、裾から伸びた細い手足。イエス様の正面に跪きいつも熱心に祈っている。ある日、彼女の体が痣
ニーサの暮らしは相変わらずだったが心はあたたかかった。母を知らず運命に恵まれない弟妹に同情したのも初めてだった。貧しい毎日のままではあったが 自分が以前とは違う世界にきてしまったのではないかと疑うほどだった。夕日が美しいと感じたのも初めてだったし 自分の売っていた花はこんなにも色鮮やかだったのかと驚いた。 人としての心を少しずつ取り戻した彼女の耳にギルダーから「ここで一緒に暮らさないか。もちろん君の弟と妹も。」という言葉が届いた。あまりにも不意の言葉に、喜びよりも戸惑い
この町では誰が何をどれだけ所有しているのかが皆の一番の興味の対象となっていた。想像力が乏しく、自分の事、目先の利益しか考えられない者たちが、他人を利用し、騙し、奪って、肥えていく。こうして人々の間に深刻な貧富の差が生まれていった。 ニーサは三人兄弟の長女であり弟妹の母親代わりでもあった。末っ子のマーリーを生んですぐ母親が家を出てしまったからだ。母親はやさしく弱い人だった。父親もまた弱い男であった。自分より弱い者を暴力で支配し威張り散らすが、権力者や所有者にはへらへらと媚
村の真ん中に大きな男が一人立っている。 (彼がこの村の者なのだろうか。だとしたら野蛮人というよりむしろ聡明で信頼のおける相手のように見えるのはなぜだ。) ワカミケヌはよく分からなくなっていた。 「ワカミケヌ様、騙されてはなりませぬ。きっとあのようにして人を懐に誘い込み喰らうのでしょう。」 「そうか、そういうことか!私は騙されぬぞ。」 ワカミケヌは男の目をしっかりと見て言葉を発した。 「おい、そこの者。私は北の地から来たワカミケヌだ。この国のためこの地を制圧に来た!」
「ここは島国だ。隣国に比べると人材は少なく、資源にも限りがある。自然災害も多い為、皆で協力して自然の猛威に備える必要がある。そして何よりこの豊かな土壌を略奪に来る諸外国の輩に立ち向かうためにも早急にこの国を統一しなければならないのだ。わかるな。」 父はそう言ってまだ幼いワカミケヌの肩を叩いた。ワカミケヌは一度も楽しいと感じたことはなかったが、剣の修行に励んだ。ほとんど家にいない父が剣術だけは時間をつくって教えてくれたからだった。本当は森の泉のほとりに座り、うたを歌ったり
三人はアクルに言われた通り動いた。ニナとリヤンは急いで山にへ向かい細工をした。テムトもうなずくと同時に駆け出し、友達のライの家に向かったが、目の前まで来るとなぜだか恐ろしさのあまり言葉が出てこなくなってしまった。 「あれ?テムトどうしたの?」 ライが後ろから声をかけてきた。あまりにも唐突だったので驚きのあまり気づいたら逃げ出していた。 (僕は何をやっているんだ!早くみんなに逃げろと伝えなくては!) だが体が思うように動いてくれない。言葉の代わりに汗が滝のように吹き出
遠い昔 この地にはそれはそれは高い山があったとアクルは聞いていた。いまは見渡す限りの平野だ。噴火により山は崩れたという事で確かに土は赤茶けていて乾燥してはいるが、美しく美味しい水があちらこちらからふんだんに湧いている。おかげで森は豊かな実りをもたらしてくれた。人々は森から葉や、木の皮、実をいただいたり、協力して狩りを行い動物や魚の命をいただ生活を営んでいた。 アクルは幼いころから聡明かつ穏やかで誠実な人柄で皆から好かれ、自然とアソと呼ばれるこの地に住む人々の中心となってい
ヤンをはじめとした人々の半数は無有に落ち着き暮らし始めた。テトと長老たちは女王に言われた彼の地へと向かった。東や南へ向かう者もいた。 レムリア人たちは辿り着いた場所にアスカと名付けレムリアの痕跡を残した。長老たちは重くなってしまった皆の魂がこの新しい世界によって磨かれ更なる高みに登るまで アトランティスの技術とレムリアの叡智を西の果ての地に隠した。テトはまたみんなに会うことだけを願い長老のもとで懸命に働いた。過ちを悔やんでいる時間があるなら その時間でやれるだけのことをし
長老たちは 村人と無理に距離を縮めようとはせず、自分たちは危険ではないことを少しずつ知ってもらおうとした。無有での暮らしは住むところも道具もないゼロからの始まりだったため、感情に支配される暇もなく皆日々に追われた。絶望の底にいても体は生きることを選択する命の不可思議さ。多くの者が生きる力を取り戻しつつあった。アトランティス人もまた大陸を沈めたレムリア人を恨んではいたが、いがみ合ってももうお互いの国はない。助け合わなければ生きていくのが難しかったため、はじめは仕方なくではあっ
今まで感じたことのないあたらしい感情、数えきれない別れ(実際レムリア人は非常に寿命が長く事故や病もなかったため 死による別れの経験が少なかった)を一度に経験し テトの魂は深く傷ついていた。 だがこんな風になって初めてこれまで興味の持てなかった愛や奉仕、祈りについて考えるようになっていった。まだ誰とも話す気になれなかった彼は、常に自らに問いを投げかけた。自分は今何をすべきか。亡くなったみんなのために出来ることはあるだろうか。祈るとは何だろう。アトランティスの科学が悪かったの
見たこともない大きさの紅い月が海の上に浮かんでいる。こんなことは初めてだった。風が静かすぎる。テトはちょっとばかり口うるさくてお節介なマーナから逃げ出し、もう日課になりつつある昼寝をしに村はずれの丘にやってきたところだった。普段だったらリンドウやスズランの花が風に揺れて そのはかない香りが漂ってくるのだが、辺りはしんと静まり返りただならぬ様を肌で感じた。 (これは昼寝どころじゃない。皆に知らせたほうが良いだろうか。)テトは悩んだ。この国の者は皆働き者で奉仕を喜びとしている