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支那川之穂乃宮(シナカワノスイノミヤ)
2020年4月25日 12:09
隣からすごくいい匂いがしてくる。食欲!何かを強く食べてみたいと思ったのは初めてかもしれない。おいしそうと思ったのも。目の前の珈琲。琥珀色ではないよね、これ。大人が飲んでいるのを見て すごくおいしいものかと思っていたけど違った。香りはすごく好みだけど飲まなくてもいい、飲まないほうが好き。この人のようにナポリタンにすればよかった。漂う玉ねぎとピーマンの香ばしい香りぷりぷ
2020年4月13日 16:19
カウンターの中の初老の人。いわゆるマスターというものなのだろうか。丸いガラスの不思議な装置に珈琲豆をセットしてゆっくりとかき回している。厨房では若い男がオレが頼んだナポリタンにハムとケチャップをふんだんに入れた。カフェが主流の現代でここだけ時が逆流しているような錯覚を受ける。お待ちどおさま。意外にも オレの方が先にきた。珈琲は目の前のガラスのなかでぽこぽこと音
2020年3月27日 17:03
オレは 携帯を取り出した後開いたままになっていたピンクのバッグから素早く財布を取り出した。 キラキラとした空気が足元まで満ちている。 誰もかれも 四角い画面に夢中だ。さっと中から数千円を取り バッグに戻す。あとは待ち合わせでもしてるかのように友人を探すふりをして うろうろとしながら交差点を渡ってきた大量の人ごみに紛れた。今は現金を持ち歩くやつも少ないから1回目でカ
2020年3月21日 10:07
塾の目の前の交差点。ここで信号につかまると行く気がなえる。まぁ 青信号で渡れることのほうが少ないんだけど。 今日も赤。しかも 直前で赤に変わった。ついてないな。日曜日だからか信号を待つ人の中にスーツ姿は少ない。お休みにしては みんなちょっと表情が厳しいんじゃない?そんなどうでもいいことを思いながら信号待ちしてると 道の向こう側にいる少年が目に入った。 歳はおんな
2020年3月20日 22:30
今日もひと仕事するためにまぶしい日差しを避けながらのろのろと駅前に向かう。いつものカフェのテラス席が見える植込みのベンチに座り 本を読むふりをして品定めする。すぐ横の交差点の信号が赤になれば あっという間に人も車も連なる。こんなにもたくさんの人がいるのにひとりとして ここにオレがいることを知ってるやつはいない。存在していないのといったい何が違うのだろう。一行たりとも目
2020年3月7日 23:12
「そろそろ塾の時間ですよ。」「はい。」 「もうすぐ模試なのよね。期待してるわよ。」返事をしようか迷ったが聴こえないふりをして予習をしていた手を止めてテキストと筆記用具をバッグに詰める。「いってきます。」 テキストでパンパンになった重たいバッグを抱えドアを開ける。 眩しい。良く晴れて風のない気持のよい日。でも遊びに行けない私にとってはただ忌々しいだけ
2020年3月4日 11:43
あぁ また目が覚めちまった。淀み切ったくそ重い空気を瞼に感じる。リアルだ。眠りにつくたびに このまま目覚めなければいいのにと願う。残念ながら今日もそうはならなかった。諦めを決めて 重い瞼を開けると そこにはさまざまなものが行き場を無くしたままに放置されている見慣れた部屋。いつ食べたかもわからないカップラーメンのカップには割りばしと乾涸びたつゆ。ほぼエタノールの焼酎のペ