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少年Aと少女B

塾の目の前の交差点。
ここで信号につかまると行く気がなえる。
まぁ 青信号で渡れることのほうが少ないんだけど。

今日も赤。
しかも 直前で赤に変わった。
ついてないな。

日曜日だからか信号を待つ人の中に
スーツ姿は少ない。
お休みにしては 
みんなちょっと表情が厳しいんじゃない?

そんなどうでもいいことを思いながら
信号待ちしてると 道の向こう側にいる少年が目に入った。

歳はおんなじ位。

本を読んでるみたい。

それだけなのに なぜだか彼から目を離せない。

丸い背中は、尖ったように骨張ってる。

信号が青に変わる。

と、同時に彼は本を閉じ
カフェのテラス席に入っていった。

ん??落し物でもしたのだろうか。

携帯に夢中になってる女性客の席の下にしゃがんだ。

何を落としたんだろう。

あ、落としたんじゃなくって
盗むんだ。

手元が見えたわけではないけど
はっきりと分かってしまった。

彼はあの幸せそうな女性から
何かを盗むつもりだということを。

そして それをわたしも
黙認するだろうことを。


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