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少年Aと少女B

今日もひと仕事するために
まぶしい日差しを避けながらのろのろと駅前に向かう。

いつものカフェのテラス席が見える
植込みのベンチに座り 本を読むふりをして
品定めする。

すぐ横の交差点の信号が赤になれば あっという間に
人も車も連なる。

こんなにもたくさんの人がいるのに
ひとりとして ここにオレがいることを知ってるやつはいない。

存在していないのといったい何が違うのだろう。

一行たりとも目を通したことのない
三島由紀夫のなんだかって本。

読んでもいないのにぼろぼろだ。

三島由紀夫越しに 今日のターゲットを探す。

テラス席にいるボッチ客で
けーたい触ってるかパソコン作業してて
キラキラしてるやつを狙う。

キラキラしてる。がポイントだ。

オレはなぜだか物心ついた時から
人の周りにあるキラキラが見えた。

ある時そのことをあいつに話したら
変なものでも見るような顔された。

周りの人にはたくさんあるキラキラが
ママの周りには少ないんだけどなんで?って聞いたんだ。

それからあいつはますますオレのことを
いないものだとして扱うようになった。
悲しかったけどそれ以上に
ますます光が弱まっていったので 心配になった。

だけど あいつ 怒鳴ってるときは
光が強くなるんだ。

だからオレは怒鳴られながら安心した。

おかしいことだとわかっていたさ。

理不尽に怒られながら 安心するなんて。

オレに言わせると どんな人も必ず光を発している。
光の強さは人それぞれ。

キラキラしてる人は 今が充実してる人。

反対にキラキラが少ない人は 不満だらけの人ってことも
最近になってわかってきた。

だからオレはキラキラしてるボッチ客を狙う。

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