野中大輔

認知言語学、英文法を研究しています。翻訳書にシッダールタ・ムカジー『不確かな医学』(T…

野中大輔

認知言語学、英文法を研究しています。翻訳書にシッダールタ・ムカジー『不確かな医学』(TEDブックス、朝日出版社) があります。大修館書店『英語教育』で連載「実例から眺める『豊かな文法』の世界」を担当しました。

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『英語教育』執筆記事公開(2021~2022年)

これまで大修館書店の月刊誌『英語教育』に何度か記事を書かせていただきましたが、このたび執筆記事をウェブ公開する許可をいただきました。本ページに、2021年度に1年間担当した連載記事と2022年に書いた2つの記事へのリンク (1)~(3) を掲載しましたので、アクセスしていただけたら幸いです。今回は、それらの記事を、関連する書籍や論文などにも触れながら紹介します。また、2024年の新作記事についての告知もしたいと思います。 [3月6日追記:新作記事についても公開の許可をいただい

    • 論文「TED Talksのデータを検索して英語を学ぶ、教える、研究する」の紹介

      今回は、以前私が書いたこちらの論文を紹介します。 野中大輔 (2021)「TED Talksのデータを検索して英語を学ぶ、教える、研究する : TED Corpus Search Engineの可能性」『東京大学言語学論集』第43巻, 183−205. 英語プレゼンテーション動画のTED Talksとその検索システムTED Corpus Search Engineを取り上げた論文で、上のリンク先から無料でダウンロードすることができます(リンク先の「ggr_043010.p

      • とにかく明るい安村さんのI'm wearingから日英語について考える

        Don't worry, I'm wearing.先日、お笑い芸人のとにかく明るい安村さんがイギリスのオーディション番組Britain's Got Talentに出演し、話題になっていました。 安村さんは、水着一枚でさまざまなポーズを取り、裸に見えそうな姿を見せたところで「安心してください、はいてますよ」と言う芸でおなじみですね。今回はその英語版を披露して人気を博していました。出演部分は以下から見ることができます。 安村さんは「安心してください、はいてますよ」に当たる英語

        • 名詞転換動詞とbone/deboneのペアについて

          英語では特定の接辞を付けずに名詞を動詞として使うことが多い。たとえば、butterを動詞で使えば「バターを塗る」という意味になる。butter the breadのように付着対象は直接目的語で表現する。grease the pan(フライパンに油をひく)やsalt fish(魚を塩漬けにする)など、動詞にした場合に付着を意味するものは少なくない。 一方、boneを動詞で使えば「骨を取り除く」という意味になる。この場合もbone a turkey(七面鳥の骨を取り除く)のよう

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        『英語教育』執筆記事公開(2021~2022年)

          「いさぎ悪い」という表現を考える

          先日、ウェブ上で「いさぎ悪い」という表現を見た。試しにGoogleで検索して見ると、よく聞くことばの間違いとして取り上げられることもあるようだ。 私が「いさぎ悪い」を見ておもしろいと思ったのは、ちょっとおかしい表現だなと感じたものの、その意味は十分理解できることだった。 「いさぎ悪い」という表現が用いられるのには、次のような推論が関わっているのだろう。 (1) 「いさぎよい」という語を、「いさぎ」+「よい(良い)」と分解 (2) 「気持ち良い」に対して「気持ち悪い」のよ

          「いさぎ悪い」という表現を考える

          講演会「『豊かな文法』のための言語学入門」のお知らせ

          2022年3月20日(日)に、教育研究会Festina Lente主催の講演会でお話する機会をいただきました。講演タイトルは「『豊かな文法』のための言語学入門:日本語を見つめて英語に生かす」です。日本語・英語の文法に興味がある方であれば、学生の方でも日本語や英語を教えている方でも、言語学の勉強をしたことがある方でもそうでない方でも、どなたでも楽しめるお話ができればと思っています。以下からお申込みできます。 [3月18日追記:会場開催(渋谷)+オンライン配信という開催形式で確定

          講演会「『豊かな文法』のための言語学入門」のお知らせ

          平沢慎也著『実例が語る前置詞』の紹介(その2)

          前回に続いて、平沢慎也さんの『実例が語る前置詞』(くろしお出版)を紹介します。今回は、前回以上に私なりのスパイスを加えて、この本の意義について語ってみたいと思います(平沢さん自身が直接書いていない内容にまで踏み込んでいます)。 なお、「その1」では、この本の特徴について紹介しつつ、私の実体験をもとに「この本の効果が発揮されるのはいつか」などの話を書きました。今回の記事は単独で読める内容になっていますが(「その1」を読んでいることを前提にしていません)、もし「その1」も読んで

          平沢慎也著『実例が語る前置詞』の紹介(その2)

          平沢慎也著『実例が語る前置詞』の紹介(その1)

          平沢慎也さんの新刊『実例が語る前置詞』が発売されます(くろしお出版)。 平沢さんとは長年の友人であり、月刊誌『英語教育』の連載「実例から眺める『豊かな文法』の世界」を共同で担当する英語仲間でもあります。連載以外でも普段からお互いが書いたものを読み合っていて、この『実例が語る前置詞』も事前に原稿を読ませてもらったのですが、非常におもしろく、ほかに類のない本になっていると思いました。今回はこの本の魅力を紹介したいと思います。 1. 前著との比較この本は平沢さんの2作目の著作で

          平沢慎也著『実例が語る前置詞』の紹介(その1)

          新型コロナウイルスと言語――メタファーと物事の見え方

          現在、大修館書店の月刊誌『英語教育』で「実例から眺める『豊かな文法』の世界」という連載を担当しています。平沢慎也さんとの共同連載で、我々2人が共有している文法観を「豊かな文法」と名づけ、英語の実例(英語教育向けに作られた例文ではなく、実際に使用された英語表現)を紹介しながら文法の話をしています。 この連載の第8回記事(2021年11月号に掲載)で「新型コロナウイルスがどのように語られるか」を扱った英文記事を引用しました。 今回は新型コロナウイルスと言語に関する話題を少し掘

          新型コロナウイルスと言語――メタファーと物事の見え方

          講演会「『英文解体新書』の狙い そして、そこから先へ」(2019)に参加して

          2021年8月22日(日)に教育研究会Festina Lente主催で北村一真先生の講演会が開催されます。Zoom開催で、一定期間アーカイブでも視聴できるというのはありがたいところですね。 北村先生は2019年10月にもFestina Lenteで講演会をされていて、私も参加しました。『英文解体新書』(研究社)が出版されてから3か月ほど経ったころで、講演内容もそれにちなんだものでした。講演会の翌日、私は以下のツイートをしました。 今回は記事は、このときのツイートに加筆・修

          講演会「『英文解体新書』の狙い そして、そこから先へ」(2019)に参加して

          それは本当に余計な話?――『表現のための実践ロイヤル英文法』から考える

          英語の文法書はいくつも出版されていますが、中でも『表現のための実践ロイヤル英文法』(綿貫陽、マーク・ピーターセン著、旺文社)はお気に入りの一冊です。 この本は、簡潔で的確な説明、学習者がよく間違える項目への目配りなど、良いところがたくさんありますが、今回注目したいのは、例文の内容に関する解説がある点です。たとえば、以下に引用するように、例文で言及されている出来事(ここでは盗まれていたモナリザの絵が発見された件)についての説明が付いています(161ページ)。 これは名詞を修

          それは本当に余計な話?――『表現のための実践ロイヤル英文法』から考える

          平沢慎也著『前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのか:多義論から多使用論へ』の紹介

          この記事は2019年7月に発売された『前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのか:多義論から多使用論へ』の紹介文です。もともとこの記事は私のブログで公開したものですが、今回noteに掲載するにあたって若干の修正を施しました。すでに『前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのか』は発売されていますが、「もうすぐ発売される」「この本を一足先に読んだ一人として」などの表現はそのままとしました。 はじめに平沢慎也著『前置詞byの意味を知っているとは何を知っ

          平沢慎也著『前置詞byの意味を知っているとは何を知っていることなのか:多義論から多使用論へ』の紹介

          「何の変哲もない」の「変哲」って?

          あたりはまだ明るかったので、それは何の変哲もない黒い水辺の虫にしか見えなかったが、突撃隊はそれは間違いなく螢だと主張した。螢のことはよく知ってるんだ、と彼は言ったし、僕の方にはとくにそれを否定する理由も根拠もなかった。よろしい、それは螢なのだ。 ――村上春樹『ノルウェイの森』 「変哲」の意味?日本語の勉強をしている外国人に「何の変哲もない」という表現の意味を尋ねられたら、なんと答えるだろうか。自分の母語についてであっても、急に尋ねられるとなかなかうまく答えられないものだが、

          「何の変哲もない」の「変哲」って?

          自己紹介

          はじめまして、野中大輔です。言語学、英語学の研究をしています。noteの1回目の記事なので、自己紹介をしようと思います。 プロフィール言語学の中でも特に認知言語学という分野で英文法の研究を行っています(主に動詞、構文に関する研究)。現在は工学院大学の学習支援センター講師、慶應義塾大学法学部非常勤講師をしています。以前は国立国語研究所の非常勤研究員や河合塾のK会というコースの講師などもしていました。英語を教えるのと英文法の研究がメインですが、それ以外に、記事執筆、翻訳、講演な

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