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名詞転換動詞とbone/deboneのペアについて

英語では特定の接辞を付けずに名詞を動詞として使うことが多い。たとえば、butterを動詞で使えば「バターを塗る」という意味になる。butter the breadのように付着対象は直接目的語で表現する。grease the pan(フライパンに油をひく)やsalt fish(魚を塩漬けにする)など、動詞にした場合に付着を意味するものは少なくない。

一方、boneを動詞で使えば「骨を取り除く」という意味になる。この場合もbone a turkey(七面鳥の骨を取り除く)のように他動詞で使う。名詞由来の動詞で、boneの他に除去を表すものとしては、bark a treeやskin an appleといった「皮をはぐ」に当たるものなどがある。

名詞を動詞へと転換させたときに、付着を表すものもあれば除去を表すものもあるというのは、一見不思議なことのように思えるが、spread butter on the breadやremove bones from the fishのような表現がよく用いられることを踏まえれば、そういった表現をある種凝縮してできたのがbutter the breadやbone the fishだと理解することができる。

ただ、付着の動詞も除去の動詞も同じように品詞転換で作れてしまうことに対して、もしかしたら英語母語話者でもどこか引っかかるところがあるのかもしれない。そのせいか、boneやbarkが接辞なしで動詞として使用されるだけでなく、除去の接頭辞de-を付けたdebone、debarkといった語も存在する。その結果、bone/debone、bark/debarkのように、品詞転換とde-の付加で同義語のペアが生まれる。grease/degreaseやsalt/desaltは付着と除去という反義語のペアになることを考えれば、bone/deboneのような同義語のペアが存在するというのはおもしろい現象だと思う。

なお、この種の動詞にどんなものがあるか知りたい場合、Beth Levin著English Verb Classes and Alternations: A Preliminary Investigation(University of Chicago Press, 1993)が参考になる。この本はどんな種類の動詞がどの構文に現れるかをリストしたもので、同じような振る舞いをする動詞を見つけることができて重宝する。

butterやsaltはButter Verbs、boneやbarkはPit Verbs、deboneやdebarkはDebone Verbsの項目で扱われている。Butter Verbs(pp. 120-121)の項目では、Lora buttered the toast with unsalted butter.とは言えるのに、Lora buttered unsalted butter on the toast.とは言えないことなどが書かれていて、便利である。

【おまけ1】
seedは「種をまく」という付着の他動詞、「種を取り除く」という除去の他動詞の両方が存在し、除去の意味だとseed/deseedが同義になる。ややこしい。ややこしいけどおもしろい。

【おまけ2】
除去を表す表現としてはほかにcore the apple(リンゴの芯をくりぬく)などがある。coreには(リンゴやナシの)「芯」の意味があるが、それを知らないとびっくりする表現かもしれない。次の「おまけ3」もそうだが、除去の表現は料理表現でよく見るように思う。料理表現については、また記事を書ければと思う。

【おまけ3】
devein a prawnなら「エビの背わたを抜く」という意味。「背わたを抜く」を一語の動詞で言えるというのは、なんだかすごいなと思う。deveinについては、Collins English Dictionary(ウェブ版)の記述が参考になる。以下に引用する。
1 . (generally) to remove a vein or veins from
2. (in cookery) to remove the intestinal tract, which resembles a vein, from (a shrimp or prawn)

【おまけ4】
un-を使って反義語を作る名詞転換動詞としては、button/unbuttonやpin/unpinなどがあるので、このパターンも覚えておきたい。

[補足]本記事は2019年4月に筆者のブログで公開した同名の記事に若干の修正を施したものです。

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