【著者執筆】白黒つけなくてもいい。くよくよ悩んだままでもいい。すぐに答えを出せなくてもいい。
白黒つけなくてもいい。
くよくよ悩んだままでもいい。
すぐに答えを出せなくてもいい。
「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)」という言葉を知っていますか?
イギリスの詩人ジョン・キーツが述べた「不確実なものや未解決のものに耐え、受容する力」を意味する言葉です。
生きていると答えが出ないこと、対処しようもないことがいっぱいあります。人生にはグレーなこともめちゃくちゃ多いです。
でも、人間の脳は「わからないこと」があると予測不能なことが多くなるため不安に感じるそうです。だから「わからない状態」をあまり好まない。
人間は「わかりたい」生き物なんですね。ですから、すぐに白黒つけたくなるのは当然なのかもしれません。
「なぜ自分ばかり、こんな目に遭うんだ」「どうしたら解決するんだろう」と答えを急ぎます。「誰かをうらむ」とか「自分を責める」などのわかりやすい答えに突っ走ってしまうこともあります。
でも、もう少し答えを出すのに時間をかけてもいいのではないでしょうか。
白黒つけなくてもいい。くよくよ悩んだままでもいい。
すぐに答えを出さず、あやふやな状態のまま、目の前のことやできることだけをやっていく。
どしゃぶりの雨の中でも、傘を探しつつ、時々雨宿りをしつつ、解決策をなんとなく考えながら歩いていく。
それもまたネガティブ・ケイパビリティなのかなと思います。
もちろん答えの出ない状態で、不安やあせりを感じたりもするでしょう。
不安やあせりはあって当然です。
ちなみに僕は飛行機に乗るとき、めちゃめちゃ不安になります。
「あんなに重たい鉄の塊が空を飛ぶなんて意味がわからない」なんて思っています。
でも、席に座って持ち込んだ本なんかを読んでいるうちに、だんだん不安を忘れて、気づいたら空港に着陸していたりします。
不安はずっとそこにあるわけではありません。
いつか消えていくし、慣れていくし、なんなら目の前のことに集中することでだんだんと散らされていきます。
不安やあせりを抱えたまま、だましだまし行きましょう。
変わっても、変わらなくてもいい。
「変わる」「変わらない」どちらにも決められない曖昧なまま、悩んだり落ち込んだりしながら、いつの間にか変わっていた、なんてこともあるものです。
すぐに変わらなくても、変われなくても、不安やあせりを抱えながら、いろいろがんばっていたら、気づいたら自分もまわりも変わっているかもしれません。
答えの出せない自分、変われない自分、決められない自分、くよくよ悩む自分でも全然大丈夫です。
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著者について
藤野智哉(ふじの・ともや)
1991年生まれ。精神科医。産業医。公認心理師。
秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。
学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。
精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。 障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、メディアへの出演も多数。
主な著書に『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)などがある。
★本編未収録の「あとがき」は、こちらの記事から!★
【未収録原稿を公開!】『そのままの自分」を生きてみる』あとがき|ディスカヴァー・トゥエンティワン (note.com)
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