「中露が握る原発市場」から
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三点に注目したい
1.廃炉専門
2.言葉とイメージ
3.感情論
関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/17 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37873500W8A111C1MM8000/
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A 「原発」というと、日本ではすぐに感情論が巻き起こり、「安全保障、エネルギー自給率、エネルギーポートフォリオ、未来のエネルギーのあり方」…などの、より重要で議論すべき事項にまで到達できない。本質的な問題を抽出する部分に、無意味な感情論は持ち込むべきではない。一方、戦略実行フェーズでは感情論が重要になるため、戦略案設計時には代替案含め、存分に考慮する必要がある。
B 代表的な原発建設中・計画中の国名と件数*1は、次の通り。
(国名/建設中/計画中)
・中国/21/24
・ロシア/8/16
・インド/7/6
・韓国/4/1
・UAE/4/0
・日本/3/8
・米国/2/3
・トルコ/0/8
・ウクライナ/2/0
・スロバキア/2/0
・パキスタン/2/1…等
A 原発は言うまでもなく軍事力の一側面でもある。中国・ロシア・インドが原発を多く建設していくという状況をどうみるか。中国であれば、中国製造2025にとって原発は主要事項でもある。中国は、米仏のPWR(加圧水型軽水炉)を基盤にし自主改良した第3世原子炉である華竜1号を、パキスタンなどに輸出することにもなっている。日本であれば、例えばロシア原発での電力を直流高圧のスーパーグリッド経由で国内に入れ込むという手も、容易に想像される。
B 安全保障であったり、エネルギー自給率、或いは環境や未来交通を支える電力源…色々な視点で原発必要性を訴えたとしても、日本では、感情論が先行し、議論の「ぎ」にも立ち入ることが出来ない。EVなどの電化を急伸させて電力不足にするという手や、長時間寝かせるという手もあるが、日本においては、やまぬ感情論という壁が出来る現状から、原発輸出での経済活性化はあきらめる方がよい。
A 原発状況を眺めれば、原発輸出ではなく、「廃炉」にも目が行く。この部分で日本が世界をとる可能性は、やり方によっては、まだまだあるだろう。原発輸出は完全にあきらめ、世界の廃炉ビジネスに特化していく。むやみに国策で原発支援したり、私企業に圧力を加えることは中止する。一方、国策で廃炉をリードする。
B 日本にいる原子力関連の技術者を、各企業や組織がバラバラに抱えるのではなく、一か所に集めた方がよい。各企業から組織を人を「切り出して統合・集積」する。日本として、廃炉企業を統一する。技術者不足も暫定的にこれでカバーする。その上で、将来の廃炉ビジネスをとるための技術をしっかりと構築していく。
A 世界の原発廃炉市場は、2030年までに29兆円程度と言われる*2 。当然世界的な戦いになるわけだが、廃炉特化により一気に成長させる。そして、KFSの1つである技術者獲得に対して、日本だけでなくグローバル人財の獲得を目指す。その為に、企業・事業イメージをかえる必要もある。「廃炉」などという後ろ向きの暗いイメージに、人は群がらない。化学という古い言葉であっても、グリーンケミストリーと銘打つだけで、その印象は大きく変わる。
B 環境、人々の命、地球、‥‥に大きく貢献するのが、廃炉ビジネスである。見据えるのは「廃炉の先」だろう。廃炉してどうするか?の部分まで見据えることで、廃炉という作業がよりクリエイティブなものへと変貌する。廃炉専門の機関として、大学教育にもコミットしていく必要がある。単なる危険作業ではなく、クリエイティブで未来を再創造するグリーンな学問分野であるということを、優秀な学生に理解いただき、専攻を深め人財を育成していく必要がある。
A 日本として、自立電源としての原発の意義は深いが、原発輸出側はすでに魅力乏しく、だらだらと可能性を探り続けるのは損失でしかない。官僚の無謬性であったり、サンクコストに引きずられてはいけない。
*1 日本原子力産業会 世界の原子力発電開発の動向2018年版
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2018/04/doukou2018-press_release-r1.pdf
*2 BS1 world watching https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/04/0412.html