マガジンのカバー画像

やさしい医療情報

165
運営しているクリエイター

#医療情報

医療情報を俯瞰する

医療情報を俯瞰する

さあ、始めましょう。

往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」の第3回目です。

連載1回目となる私の記事では、誤解の平原が広がっている中での私の決意を書かせてもらいました。

連載2本目となるヤンデル先生の記事では、彼の決意が語られていました。

まだ、お読みでない方はお読みいただければ嬉しいです。

さて、今回の連載3本目から、「誤解の平原」を進む人たちへの、医療情報についての解説

もっとみる
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?⑤ 大須賀覚先生・お金の流れ編

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?⑤ 大須賀覚先生・お金の流れ編

大須賀先生のお話でもう一つ、衝撃だったのがトンデモ医療やイカサマがん療法による経済的な損失の話だ。自由診療や民間療法、代替医療、サプリメント…多種多様な「すがりたい藁」が存在していて、たいていそれらは高額だ。患者やその周囲の人たちである当事者が、すがる。

「経済的な余裕があるから、やってみよう」だけでなく、借金をしてでもそれらに懸ける人たちも多いし、彼らが効果の見込めない治療に貴重な時間と財産を

もっとみる
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?④ 大須賀覚先生・情報編

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?④ 大須賀覚先生・情報編

大須賀覚先生はアメリカのエモリー大学ウィンシップ癌研究所に所属するがん研究者だ。わざわざこのイベントのために来日された…のではなく、第78回日本癌学会の総会に出席された。

私は、お名前とTwitterでRTされて表示されるものを目にするぐらいで、フォローもしていなかった。が、今回のイベントの中でも直球にがんについての医療者だ。がぜん当事者として聞く態度も聞こえる言葉も変わる。いちいち目から鱗が落

もっとみる
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?③ けいゆう先生編

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?③ けいゆう先生編

消化管外科医のけいゆう先生。ヤンデル先生の紹介では「京大卒イケメン外科医学術業績豊富若手研究者のホープイクメンSNS医療のカタチの大エース」!! Twitterの外科医けいゆう @keiyou30 として4万超フォロワー、Yahoo!ニュース個人オーサー、医療情報サイト「外科医の視点」で活躍しておられます。

YouTubeでも医療情報が検索される
かなり早い段階で医療者から情報発信が重要だと認識

もっとみる
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?② ヤンデル先生編にて

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?② ヤンデル先生編にて

ヤンデル先生のトークでもっともガツンときたのが

SNS時代の情報発信は瞬間的・刹那的であり、蓄積ができない。有用な情報を博物館のように整理し蓄積をする必要がある。そのために情報を編集・まとめ・分類・わかりやすく翻訳する機能が必要となる。

「知」の発信、蓄積、分類、収集、整理…
この話を聞きながら、私は大学でイギリス文化史を学んでいた時に聞いた「ひたすら収集せよ、ひたすら分類せよ」という博物学の

もっとみる
優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?① SNS発信の医師4人集結のトークイベントから

優しく易しい医療情報は、どうやってつくる?届ける?① SNS発信の医師4人集結のトークイベントから

2019年9月29日、東京・渋谷で「SNS発信の医師4人集結のトークイベント 知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~」が開催された。

SNS時代に危機感を募らせる専門家たち
インターネットで手軽に情報検索・入手ができ、SNSで発信できる今、私たちが手にするのは「正しい情報」だろうか? それは医療に限らずあらゆる分野でじわじわと沁み出している問題だ。医療クラスタは「まず病院で受診を」

もっとみる
アレクサ、看取って⑥ OK google, 金と人と場所と空気感をくれ

アレクサ、看取って⑥ OK google, 金と人と場所と空気感をくれ

前回記事↓

大須賀の出番が来た。

「プレゼンテーションがうまい人ばかりで、このあとにしゃべるのは大変やりにくいですね」

のひと言で、会場がどっと沸く。

ど っ と 沸 か せ て ん じ ゃ ね ぇ かプ レ ゼ ン 上 手 め

彼の凱旋帰国を花で飾り、医師たちを集め、犬を召喚し・・・・・・何より、講演会場を用意するために、朝日新聞ウィズニュースはめちゃくちゃがんばった。

もともとは記

もっとみる
アレクサ、看取って⑤ 笑う犬とうさぎの冒険

アレクサ、看取って⑤ 笑う犬とうさぎの冒険

前回記事↓

犬が目をしばたいた。

二度、三度。

ぼくの前説で苦笑が満ちた会場に、山本の計略が張り巡らされた。闇に閉ざされていた戦場に高らかに閃光弾が上がる。荒野。隘路。死角。布陣。伏兵。ぬかりなく、露わに照らされる。

医療情報戦略には何が必要で、何がすでに行われていて、何が効果を発揮していて、何が足りないのか。

世界のロジックがネオンのように可視化される。

情報戦においては発信者だけで

もっとみる
アレクサ、看取って④ グラディウスを知らずに大人になるなんて

アレクサ、看取って④ グラディウスを知らずに大人になるなんて

前回記事↓

この日、渋谷ヒカリエの34階で行われたイベントの正式名称は、

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~

であった。

このフレーズのうち、一番だいじなのは「思い合う」の部分かと思う。

正しい知識を知ろう、人々に届けようとがんばるのはとても大事なことだ。でも、送り手と受け手の間に相互に思いを巡らせ合う関係がなければ、意味がない。

なんて。

他人のことを思ったところ

もっとみる
アレクサ、看取って③ knowと書いて苦悩と読む

アレクサ、看取って③ knowと書いて苦悩と読む

前回記事↓

ビュッフェのサラダを取って、お互い席に着く。朝食をはじめよう。

大須賀は「日本のビュッフェは豪華だなあ」と小さくつぶやいた。ぼくは、このホテルがたまたまそうなんじゃないかな、と思ったが、自分のホテルでもないのに謙遜するのも変なのでとりあえず黙っておいた。葉物の種類がやたらと多い。ドレッシングがキラキラしている。というか全体的に光量が多い。部屋は暗いのに食べ物が明るい。確かに豪華だ。

もっとみる
アレクサ、看取って② 俯瞰に眉をひそめた男

アレクサ、看取って② 俯瞰に眉をひそめた男

前回記事↓

渋谷の朝、ぼくは立ち並ぶビルがどれも古いことに気づいた。東京って意外と建物が古いんだな。

あちこち補修されて大規模な工事も行われている。生まれ変わりつつある街といえば聞こえはいいが、どちらかというと、全身にチューブをつなげて周りに何人も足の長いミニスカ看護師をはべらせた「海賊・白ひげ」のようだ。強い、危うさ。

「何度も何度も繰り返し殴られると、ひたいは簡単にやぶけて血が出るように

もっとみる
アレクサ、看取って①

アレクサ、看取って①

noteの執筆ページを開いたら、まだ何も入力していない場所に、グレーの主張しない文字でこのように書かれていた。

おはようございます、今日もいい一日を。

ツイッターの入力欄をひらけばグレーの文字で「いまどうしてる?」 Facebookは「今なにしてる?」 微妙に変えてあるのがこざかしい。そしてよけいなお世話だ。

でも、確かにそうなのだ。今は朝。ぼくは生命よりも先にnoteからおはようのあいさつ

もっとみる