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婚活パーティーに久々に行った結果その②

去年の冬に同僚Aさんに促されて婚活イベントに参加した際、私はチュートリアルの徳井さんに似た方を見掛けた。
以下、その方を徳井さんと記す。

 
婚活イベントはいつも通り、可もなく不可もない。
だが、参加費を払って参加した以上、誰とも連絡先を交換しないのもどうかと思った。
年齢は年齢で、もう贅沢をいっていられない30代だった。

一生結婚しない!一生子どもいらない!

という絶対的な気持ちがない以上
私は誰かに異性を紹介されたり、婚活イベントを誘われた際は
一応全て断らない。
どこでご縁があるかは分からない。

 
 
婚活イベントの際、最終的に気に入った男性の名前を三人…第三希望まで書かなければいけなかったので
私は徳井さんの名前を最初に書いた。
あとは、多少気になった方の名前を二人書いた。

 
私はその婚活イベント時にぼっちで参戦したが
近くの席だった女性5人と仲良くなり、連絡先を交換した。
その中でも特に、最初に声をかけてくれた優しいBちゃん、右隣席の美人のCさんとよく話した。

 
 
男女別々に横一列に並んで番号順に座って待つと
スタッフの方から11組がカップリング成立をしたと発表され
会場はザワついた。

11組………!?

私含めこの会場にいる人は、婚活イベントに何回か参加している人ばかりだった。
つまりそう、11組成立というのは、かなりの数だということが皆分かったのだ。
普通はこんなにカップリング成立はしない。

 
 
順々にカップリング成立した番号が呼ばれ
呼ばれた人は司会者席側に呼ばれた。

私は他人事で見ていた。
今まで婚活イベントに何回も参加していたし
異性と連絡先交換をしたことはあったが
カップリング成立はしたことがなかった。
どうせ今回もしないだろう。

 
婚活イベントは同僚Aさんの旦那さんの仕事が関わっている。
私はAさんとAさんの旦那さんの顔は立てたし
イチゴ尽くしのイベント自体は楽しかったし
思いがけず女性参加者と仲良くなって連絡先交換ができた。

独身女性が集まれば、合コンも可能だろう。
まぁ合コンがなくても、アラサーアラフォー独身女性で仲良くなれたらそれでいい。

 
普段生活をしていると
30代女性が独身でいることは生きにくく、生活はしにくかった。
人として欠陥があるようにも時に扱われた。

 
自分の人生が楽しかろうと
結婚していない人生は問題があるかのように思われる。
周りの友達は次々に結婚が決まっていった。

 
自分の人生は楽しい。
ただ、恋愛が上手くいかず、結婚できないことに空しさや孤独感は確かにあった。

 

だから婚活イベントに参加するたびに
同じような年の女性が同じように独身だと分かると
ただそれだけで心強かった。
同志だと思ったのだ。



ところが、右隣にいたCさんが番号を呼ばれず、私の名前が呼ばれた。
私は驚いて立ち上がった。
相手は例の徳井さんである。

 
Cさんはモテモテだった。
Cさんの番号を書いた男性はおそらく、たくさんいたはずだ。

だが、Cさんは白紙で出していた。

特に気になる異性がいない場合、希望男性の番号を書かず、白紙で出す方法は裏技であった。
婚活イベントに参加したての頃こそ真面目にいつも番号を書いていたし
司会者からは誰かしらの番号を書くように言われたりするが
白紙で出す人は一定数いた。

 
私も白紙で出す日もあった。

 
 
C「ともかさん、おめでとう!」

 
Cさんが耳打ちをして、私は司会者席側に移動する。
やがてBちゃんの番号も呼ばれた。私の調理グループの一人とカップリング成立したらしい。
知り合った女性5人の内、私含め3人が名前を呼ばれた。

カップリング成立した人はカップリング賞としてイチゴをもらい
写真を撮った後
更にカップリング賞として、ビニールハウスに移動するように言われた。

 
カップリング成立した人は、ナイトイチゴ狩り食べ放題のイベント参加権が与えられ
ライトアップされたビニールハウスの中でイチゴ狩りができた。
イチゴは高級なスカイベリーである。

 
 
私は、婚活イベントの後にライブに行く予定だった。
ナイトイチゴ狩りをしたら間に合わない。

そもそも、日中のイチゴ狩りやらイチゴの調理実習でお腹いっぱいである。
イチゴは好きだが、流石にもうイチゴはいらない。
スカイベリーも食べたことはあるし
勿体ないとは思わないくらい
私は既に今日たくさんイチゴを食べた。

 
徳井さん「またイチゴ狩り………。」

 
徳井さんも、「もうイチゴはいいよ…。」という明らかな顔をしていた。

カップリング成立した時も、徳井さんはめちゃくちゃ嬉しそうではなかったから、私は第二希望か第三希望の女性だったのかもしれない。
婚活イベントは、繰り下がり当選ではないが
繰り下がりカップリング成立はよくある。

 
私と徳井さんは顔を見合わせた。
どうやら、ナイトイチゴ狩りはしたくないという気持ちは同じようだ。

 
徳井さんの友達「カップリング成立おめでとう~。俺、車で待ってるわ。」

 
私「二人で相乗りで来たんですか?」

 
徳井さんの友達「あ、でも気にしなくていいっすよ。俺はカップリング成立しなかったんで、タバコでも吸って時間潰しますから。」

 
これはチャンスだ。

 
徳井さんの友達は優しいが、別に待たなくていいのだ。
本気で私達はナイトイチゴ狩りはしたくない。

 
私「徳井さん、すみません。私、お腹がいっぱいでイチゴ狩りしても食べられそうにないです……。」

 
徳井さん「俺も、もうイチゴはいいかな…。」

 
私「お友達を待たせても申し訳ありませんし、後日どこかでご飯に行きませんか?」

 
徳井さんの友達「いやいや、気にしなくていいっすよ。」

 
私「実は先程、同僚から電話がありまして。ちょっと仕事でトラブルがあったようなので、今からかけ直したいんですよ。」  ←嘘

 
徳井さん「お仕事大変ですね。そんな状態じゃイチゴ狩りどころじゃないですし、後日、改めてご飯食べましょう。」

 
 
嘘も方便だ。

私は徳井さんと連絡先を交換し、ナイトイチゴ狩り不参加の旨をスタッフとBちゃんに話し、会場を抜け出した。
カップリング成立しなかったCさんらはもう帰っていた。最後に挨拶ができなくて残念だ。

 
 
私は車に乗り込んだ。

あ~!終わった終わった!
さ、ライブじゃライブじゃ!!

私はニヤリと笑いながら、ライブ会場まで車を走らせた。
婚活イベントは気を遣う。
終わった後はドッと疲れるし、癒しを心身が求めた。

 
 
私はその日、「もうイチゴはいいよ……。」状態だったので
イチゴサンドはライブ仲間にプレゼントし
婚活イベントの疲れを吹き飛ばすがごとく
ライブ仲間と大いにライブに盛り上がった。

 
やっぱり恋愛よりライブの方が楽しいわ。
恋愛は裏切るし、傷つくし、疲れるわ。

 
そう思いつつも、ライブ後にスマホには徳井さんやBちゃんやCさん等知り合った女性陣からLINEが入っていて
やっぱりそれは嬉しかった。

 
徳井さんはイケメンだし
そんなイケメンと初めてのカップリング成立をしたし
連絡もきちんと来たし
女性陣と仲良くもなれた。
イチゴ尽くしのイベント自体は楽しかった。

 
婚活イベント、そしてライブと濃厚な過ごし方をした次の日
私は朝から仕事だった。

 
 
Aさんに婚活イベントの様子を聞かれ、徳井さんの件を伝えると
Aさんは非常に喜んでくれた。
Aさんはいい人だ。
私の幸せな恋を心から願っていることが伝わる。

 
 
徳井さんとは毎日LINEをした。
一日に数通のLINEをした。

徳井さんは絵文字や小文字を使わない方で
それがまた私は好感度が上がった。
私はLINEやメールで絵文字や小文字を使わない男性が好みだった。

LINEの量もほどよかった。
やり取りも普通だった。人を不快にさせるような表現はなかった。

 
婚活イベント時はライブに夢中で、アッサリ帰ってしまったが
毎日徳井さんとLINEをするごとに
私はどんどん徳井さんに夢中になった。
食事の約束もできた。

 
社交辞令ではなく
きちんと連絡が来たり、食事の約束ができたことが嬉しかった。

 
Bちゃん「ともかさん……私、カップリング成立した人にブロックされた。LINE交換したのに、その日にブロックされたのか、未読スルーだよ。ナイトイチゴ狩り目当てかもしれない。」

 
私が徳井さんと淡い春を感じている時
BちゃんからはそんなLINEが届いた。
イチゴ調理実習の時、Bちゃんの相手はそんなことをする人には見えなかったし、確か職業も社会的地位が高い方だったが

 
あ、あの野郎………(怒)

 
悲しいことに、婚活イベントではこんなことはよくあった。

 
婚活イベントに好みの人がいないのは当たり前。
連絡先交換ができた人と連絡つかないのは当たり前。
連絡できても、やり取りしてみたら性格が合わなくて、自然消滅も当たり前。

 
連絡できて、食事に行けたら奇跡。
その後、次があれば更に奇跡。
付き合えたら、更に更に奇跡。
結婚できたら、どうしようもない、奇跡。

 
そんな世界だった。

 
 
だから私は、徳井さんが社交辞令ではなく、連絡先交換をしてくれて、毎日LINEできて、食事の約束もできて嬉しかった。

 
Bちゃんら「私達はともかちゃんを応援してる!徳井さんと頑張って!!」

 
私以外にカップリング成立した友達は、連絡が途切れたらしい。
婚活イベントのカップリング成立なんて、こんなもんだった。

 
 
婚活イベントの二週間後、徳井さんと二人で会った。

私はデート用の支度をし、約束15分前に着いた。
喫茶店の隣がインテリアショップになっているのでウィンドーショッピングをしていたら
徳井さんの姿が見えた。

徳井さんは5分前に着いた。
約束時間を守る。グッドだ。

 
 
喫茶店入口で待ち合わせかと思いきや、徳井さんはサッサと私を待たずに店内に入ってしまった。
私の姿には気づかない。

私LINE「着きました!」

  
徳井さんLINE「先に中で待ってますね。」

 
うーむ…
普通は初回デートは先に店内で待たないような……まだ約束時間前だし…………

 
と少し思ったが、気を取り直してデートだ。

 
 
二週間ぶりに会う徳井さんは、見れば見るほどチュートリアルの徳井さんに似ている。

身長は178cmくらいだろうか。
洋服のセンスも、婚活イベント時も今日もいい。
大人カジュアルで素敵だ。
改めて見てもイケメンである。

  
私「あの~…徳井さんって普通に彼女すぐできそうなんですが、職場は男性ばかりなんですか?」

  
徳井さん「それもあるけど、この前まで仕事で5年間、海外行っていたんだよね。」

 
私「海外支社があるんですか!?」

 
 
話を聞くと、徳井さんは院卒で大手企業に勤めている。
5年間海外で仕事をしていて帰国したてであり
職場は男性ばかりで
同僚から婚活イベントをすすめられて
この前参加したらしい。
あまり、恋愛体質ではなく、結婚も今すぐしたいとは思わないそうだ。

 
その喫茶店はメイン料理とデザート、飲み物を選択した後
サラダやスープバーで食べ放題という
ランチメニューがウリだった。
徳井さんを見ていると、好き嫌いなくなんでもよく食べていたが
食生活が私と似ていた。

  
それだけではない。

仕事やプライベートの過ごし方、捉え方、価値観、話す時の声のトーンや目線等
私は徳井さんのイチイチがツボで
一緒に過ごすほどに惹かれた。

 
食事をしながら会話は盛り上がったし
デートや結婚後の生活も想像ができた。

 
こ、この人、私、タイプだわ…………!

 
私は食事中に確信した。
血液型を聞いたら「AB型。」と言われ、やはりな、と思った。

 
 
私はとにかくAB型の男性に弱い。

婚活時に自分から惹かれた人90%以上がAB型なのである。

 
ちなみに
ネット上ではB型男性から気に入られやすく
リアルではO型男性から告白されやすく
男友達はA型率が高い。

 
実際に付き合った方は、A、B、AB、O型全員である。

 
  
徳井さんとの食事は4時間に及んだ。

徳井さんもよく笑っていたし、口約束だが「また食事に行きましょう。」とも言ってくれたし
私は帰り道にニヤケが止まらなかった。
デートがめちゃくちゃ楽しかったのである。

 
婚活で出会った人で、また会いたいと初回デートで思うのは久々過ぎる。

ついに春が来るかもしれない。
徳井さんと付き合うかもしれない。

 
私はこの時までは浮かれていたのだ。

 
 
 
 
「今日は面白いお話をありがとうございました。
また食事に行きたいですね。」

 
その日の夜、私からのLINEに、徳井さんはそのように返してきて
私は嫌な予感がした。

 
楽しかった、ではなく、面白いお話……………。

 
 
私の嫌な予感は的中した。

徳井さんからのLINEは二日に一通返事が来ればいい方で
食事から二週間後、LINEはついに未読スルーになった。

 
調べてみると、ブロックはされていなかった。
返信どころか、ブロックするほどの価値さえも私にないのだろう。

 
徳井さんを気に入った私は、未読スルーにショックを受けた。
Aさんから、「もう一度LINEをしてみたら?」と言われ
未読スルーから一週間後、更に一通送ったが、やはり未読スルーだった。

 
それは今も続いている。

 
 
私は徳井さんにフラれたのだ。
徳井さんにとって、私は可もなく不可もない存在だったのだ。

 
しかし、未読スルーとは……。

 
私は誰かに未読スルーされたのは、人生で初体験だった。

 
 
女友達「ハァ?未読スルー?なんなのそれ。」 

 
 
ガールズトークで、女性陣はブチ切れした。
「最低、徳井。」と、チュートリアル徳井さんは無関係なのだが
あだ名が徳井さんだったので
仲間内では徳井さんの悪口合戦になった。

 
 
私の婚活は、再び振り出しに戻った。

 
 
 
 
それから半年以上が経ち、チュートリアルの徳井さんは脱税で世間を賑わせた。

ネットでもテレビでも徳井さんは話題であり
徳井さんの顔写真や名前を見る日々が続き
私は婚活イベントで出会った徳井さんを思い浮かべた。

 
久々に徳井さんのLINEを見たが、相変わらず私からのLINEが未読のままでやり取りは終わっていた。

 
 
 
 
婚活はこんなことの繰り返しだった。

たまにちょっといい出会いがあったり、期待しても
一気に突き落とされる。
結婚までの道のりは遠い。

 
 
連絡先交換をした女性陣とは今でも繋がっていて
時折LINEをしている。
みんな仕事や趣味に燃えていて
男性の気配はない。

相変わらず私は恋愛が上手くいかないままだが
あの日、彼女らと出会えてよかった。

 
 
婚活イベントで出会った徳井さんも
チュートリアルの徳井さんも
今どこで何をしているかを

私は知らない。



 



 



  
 

 


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