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#20 夏みかんについての愛を語る

 昔は割と何かしらにかこつけて、人と会ったりどこか出かけたりしないと気が済まないタイプで、何もしない時間があると「あぁなんて勿体無いの!」なんてことを思っていたのだが、最近は不思議なことにある程度自分だけの時間がないとしんどいと感じるようになってきた。歳のせいにしたくはないのだけど、歳のせいなのだろうか。

 先週あたり、久しぶりに会社に出社したら机の前にでん!と大きな袋が置いてあって、いったい何事かと思ったら「置き土産です」と書かれた手紙と共に紙袋の中には大量の夏みかんが入っていた。以前も、柚子をお裾分けしてくれた会社の先輩である。どうやらわたしが柑橘系のフルーツが好きな事を知って、気を遣ってくれたらしい。ありがたい限りだ。

※ちなみにすっっっかり頭から抜け落ちていたのだが、前回も同じタイミングで夏みかんをもらっていた。その時は、どうやらレンジでチンして食べたらしい。

*

夏みかんマーマレード

 さて、今回は紙袋を開くとなんと10個くらいの夏みかんが入っていた。思えば昨年に夏みかん美味しかったです!何個でもペロリと平らげられてしまいます、といったのをどうやら律儀に覚えてくださっていたらしい。仏様はさすが、記憶力が良い。

 とはいえ、改めて家へ持ち帰ったものの、この大量の夏みかんをどう処理すれば良いのかはたはた困り果てていたわけである。しばらくうんうん考えていたところ、突如としてピコンと電球がわたしの頭の上に浮かぶ。そうだ!ジャムにしよう!

 昔からジャム作りというものにほんのりと憧れを持っていたので、早速週末「何も予定を入れない日」を設定し、作業に取り掛かる。もともとネット上にあるレシピを見て、むむぅジャムを作るにはなかなか骨が折れそうな気配ぞやと思っていたが、まったくその通りだった。

 ちなみにジャムと書いたが、実のところ今回果物の果皮を使っているので、マーマレードということになるらしい。なるほど、言葉の定義は難しい。ジャムもマーマレードも、音の響きが好き。

【今回用意したもの】
・夏みかん 6個(全て使い切ることができず…)
・グラニュー糖 800g

【作り方】(所要時間:3時間程度)
1.夏みかんの皮を剥き、皮は白い部分を薄くこそげ落とし、細切りに
2.夏みかんの中身は、タネを取り除いておく
3.細切りの皮を鍋の中に入れ、30分ほどクツクツ煮詰める
4.中身を投入し、段階的にグラニュー糖を少しずつ入れてかき混ぜる
5.時々灰汁をとりながら、1時間ほど煮詰める
6.完成!!

 まず最初の難関は、夏みかんの皮をペロリと剥き、裏側の白い部分をこそぎ取り(この工程をしっかりやらないと、苦味が増すらしい)、その皮をひたすらほそく切り刻んでいく作業である。

 最初の1個は初めての作業だったので、非常にワクワクウッキウキで切っていたのだが、だいたい3個を超えたあたりからしんどさを感じ始める。というのも、皮を剥くときに飛んだ汁で突然の攻撃を受けたためだ。この時ばかりは、ラピュタに登場したムスカが「目が、目がー!」と叫んだ心中を察した。なかなかに沁みる。

 ちなみに肝心の夏みかんの中身についても、ひたすらタネを取り続けなければならなく、これがまた厄介なのである。何度も同じ作業をしていると、まるでわたしは禅僧にでもなった気分になってくる。いや、わたしがやっている事なんて、足元にも及ばないだろうが。

 そんなこんなで四苦八苦しながらも、なんとか煮込む工程に入る。いくつかレシピを見比べたところ、いったん煮詰めて冷やし、また煮詰めて冷やしといった工程を3回くらい繰り返すものもあった。しかし、そこまでやるのがわたしは正直面倒だったので(考えただけでゾッとする)、最初に皮を煮詰めてある程度くたくたになったら砂糖と夏みかんの中身を投入した。

 そこからひたすらかき混ぜ、灰汁をとり、ストゥブにて弱火でゆっくりコトコト煮詰めていく。わたしは時々様子を見ながら、今読みかけの本を読んだ。静かにサラサラと流れていく時間。これはともすれば効率性の観点から言うと全くもって効率的ではないけれど、確かにわたしの中の時計をリセットするのに必要な工程だった。

 1時間半ほどすると、甘い匂いがフワフワとわたしの鼻腔をくすぐる。なんていい匂いなんだろう。思わず少しつまみ食いをすると、トロトロとした甘さの中にほのかな苦味が香る。初めて作った割に、上出来だと思う。作った後のことを考える。

 これ、一体何に使おうかな。想像している瞬間が、一番楽しい。そこには果てることなき無限の可能性が広がっている。とりあえずしばらくはサックリフワフワの食パンの上に乗せて、贅沢な時間を楽しもうではないか。

 火を止めて少し冷ましたあとは、煮沸消毒した瓶の中にお玉を使って流し込んでいった。できた夏みかんのマーマレードは、友人や仏様、家族に配った。思ったよりも好評で、わたし自身が驚いている。自分で作ったマーマレードを愛しく思った。

*

 ゆっくり流れる時間。甘さの中にビターな味わいがあるのは、マーマレードだけでなく人の人生も同じだろう。いつだってわたしの人生には、刺激が必要でそれがより一層気持ちを引き立てるのだ。

 みなさんも、是非ご家族や友人と一緒にジャムを作ってみてはいかがでしょうか。ゆっくりと時間をかけることで、また新鮮で楽しい会話が待っているかもしれません。息づく生活の時間を、より丁寧に。


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