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短編小説

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#恋愛小説

花纏

花纏

 夜を脱いだら朝になるはずなのに、ときたま夜を纏ったままの人がいて、そういうひとはすこし梨の匂いがして、近くによるとなんだか安心する。なだらかな丘をてっぺんから吸い込んだみたいに。ぼくは今日もそういう憩いを求めてさまようけれどなかなか見つからない。諦めて黒い革のソファにまるまれば、照りつく日差しが窓を透過してぼくに降り注いだ。
 わたしの猫は目覚めると家をゆっくり歩き回る。そうしてしばらくして、や

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