原始的感覚の力 ソン・アラム 【前編】/『あなたが輝いていた時』
ソン・アラムはラッパーだった。1998年に高校の同窓生たちとヒップホップグループ「真実が抹消されたページ」を結成し、『大学生は馬鹿だ』『お母さん』『燃え尽きたタバコを消す』などの論理的かつ社会に批判的な曲を発表して、一部に熱狂的なファンをもつミュージシャンだった。
超高速ラップの「ソン伝道師」という名で知られた彼は、10年後に自らのバンド経験をもとにした『真実が抹消されたページ』(2008)を発表して小説家デビュー、龍山事件*¹をモチーフにした『少数意見』(2010)に続き、