クオンの本のたね

出版社クオンのWebマガジン「クオンの本のたね」です。クオンで出版される「本」の種(たね)たちです。 書下ろしエッセイや翻訳など、ここから大きく育ち、美しい花や葉を茂らせていく様子をどうぞ応援してください。 http://www.cuon.jp/

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    • あなたが輝いていた時

      圧倒的に輝く不滅の光ではなく、短く、小さく、何度も点灯する光の一つひとつが人々に希望をもたらし社会を変えていく――。そう信じてやまない財団法人ワグルの理事長のイ・ジンスンさんは、2015年から市民参与政治と青年活動家養成を目的とした活動を精力的に続けています。 そんな彼女が、6年間にわたって122人にインタビューし、ハンギョレ新聞で連載したものの中から、12人分のインタビュー記事を収録したのが『あなたが輝いていた時』(文学トンネ)。日本語版の出版(2023年予定)に先立って、noteで連載公開します。 翻訳は、同人誌『中くらいの友だち』を主宰し、韓国の社会事情にも詳しいライター・翻訳家の伊東順子さんです。

    • 韓国文学の読書トーク

      「百年残る本と本屋」を目指す双子のライオン堂の店主・竹田さんと、読書会仲間の田中さんによる、「新しい韓国の文学」シリーズをテーマ本にした読書会形式の連載です。(毎月25日更新)

    • どこにいても、私は私らしく

      映画ライターの成川彩さんがこれまでの韓国生活で経験し、感じたこと、考えたこと――。日本の社会とは違う韓国の一面も、その違いの背景も含めて、肌身で感じた韓国の姿をお届けします。

    • 言語の旅人、米国人韓国語教師R・ファウザー 外国語学習を語る

      鹿児島の大学で日本人の学生を相手に韓国語を教え、ソウル大学の国語教育科初の外国人教授となった、ロバート・ファウザーさん。 「どうすれば外国語が上手くなるのか?」 「外国語学習に王道はあるのか?」 といった学習者にとって永遠の悩みから、 「人類はどのように外国語を学んできたのか?」 「そもそも人が外国語を学ぶ理由は何か?」 などの広いテーマまで、これまでいくつもの外国語を学んできた「言語の旅人」ファウザーさんが韓国語で綴ったエッセイです。 教え子でもある稲川右樹さんの翻訳でお届けします!

    • 韓国文学と、私。

      韓国文学のレビュー、韓国文学をテーマにしたエッセイなどを随時更新していきます。

    最近の記事

    原始的感覚の力 ソン・アラム 【後編】/『あなたが輝いていた時』

    音楽だろうが映画だろうが小説だろうが、結局は全て同じこと 高校生の頃からミュージシャンとして活動をしながら、ソウル大学の美学科に入学しましたよね。そして小説家になった。そんな話を聞いた人たちはどんな反応をしますか? 尊敬というよりも、ちょっと悔しがるんじゃないですか(笑)。IQテストも満点だったとか? IQ満点の方には初めてお目にかかります。 ――(きまり悪そうな表情で)出版社にそういうことを宣伝に使わないでくれとずっと言っているんですが…… 気になるので聞きますが、満点

      • 原始的感覚の力 ソン・アラム 【前編】/『あなたが輝いていた時』

        ソン・アラムはラッパーだった。1998年に高校の同窓生たちとヒップホップグループ「真実が抹消されたページ」を結成し、『大学生は馬鹿だ』『お母さん』『燃え尽きたタバコを消す』などの論理的かつ社会に批判的な曲を発表して、一部に熱狂的なファンをもつミュージシャンだった。 超高速ラップの「ソン伝道師」という名で知られた彼は、10年後に自らのバンド経験をもとにした『真実が抹消されたページ』(2008)を発表して小説家デビュー、龍山事件*¹をモチーフにした『少数意見』(2010)に続き、

        • 苦しみの話を、苦しみながら聞いてくれる人  ク・スジョン 【後編】/『あなたが輝いていた時』

          あまりにも残酷すぎて、信じられませんでした いつから韓国軍の民間人虐殺についての研究を始められたんですか? ――よもや民間人虐殺の論文を書くことになるとは、自分でも思っていませんでした。当初からベトナム戦争における韓国軍の研究をしてみたいという気持ちはあったのですが、実際に勉強を始めたところ、どのベトナム人教授も韓国軍については知らないんです。本当にどの教授も。だからベトナムの公式な記憶の中には、韓国軍は存在していないのです。 どうしてなんですか? ――ベトナム人の立場か

          • 苦しみの話を、苦しみながら聞いてくれる人  ク・スジョン 【前編】/『あなたが輝いていた時』

            ク・スジョンが伝えるベトナム人の証言は想像を絶するほど残酷だ。1999年5月、『ハンギョレ21』*¹を通して初めて、韓国軍によるベトナムの民間人虐殺のレポートした時、ク・スジョンはホーチミン大学の歴史学科に在籍する修士課程の学生だった。韓国軍の公式記録からまるごと抜け落ちた歴史、事件から30年以上も封印されてきた野蛮と狂気の実態が、30代の若き女性研究者によって初めて暴きだされた瞬間だった。ベトナム反戦運動の嵐が米国をはじめとした全世界で吹き荒れていた時も、ソンミ村虐殺事件*

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          • 文学からみる100年前の韓国の食べ物
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            韓国文学の読書トーク#16『アオイガーデン』

            田中:今回紹介する小説は、いつもとちょっと雰囲気が違います。 竹田:SFっぽい雰囲気を感じる、短編集でしたね。 田中:そして、特徴的なのは人によっては過激だと感じる、グロテスクな表現が含まれているところでしょうか。 竹田:人によっては、手に取るときに注意が必要かもしれません。僕は、日本での2000年代作家たちの作品をちょっと思い出しました。 田中:あの時も人間の身体性とグロテスクな描写を追究した作品がありましたね。 竹田:でも、今回の課題本はちょっと違う感覚もあったので、それ

            淡々と生きるための、揺るぎなさ イム・スルレ【後編】/『あなたが輝いていた時』

            ものごとにはすべて二面性がある ものごとにはすべて二面性がある。彼女の両親は経済的には無能であり、子どもの教育にも無関心だった。ただし特別な援助もしない代わりに、特別な干渉もしなかった。大らかな両親と兄妹たちは、イム・スルレがどんな決意や選択をしようが決して止めはしなかったし、なんの計画もないまま無為徒食の日々を送っていても文句を言わなかった。家には童話の一冊もなく、高校2年生までテレビもなかったほど、知的、文化的には恵まれない環境だった。そんな渇望感のせいなのか、中学校の

            淡々と生きるための、揺るぎなさ イム・スルレ【前編】/『あなたが輝いていた時』

            今回のインタビューは起伏がなく淡々としている。炭酸飲料のような刺激的な味わいも、唐辛子のような激辛の一打もない。熾烈な争いが火花を散らす世の中で、熱すぎず、冷たすぎず、甘くも、酸っぱくもない、微温の心地よさはむしろ貴重かもしれない。生き馬の目を抜くような日々、尖った言葉の応酬に疲れ切った時に、まるで温かな重湯がしみわたるように身体の内側から癒やしてくれる人に出会った。ソウル市聖水洞のオフィスの前でその人が、にっこりと微笑みを浮かべた顔でゆっくり車から降りてきた時、私には初対面

            韓国文学の読書トーク#15『少年が来る』

            竹田:僕、映画をみたんです。 田中:急にどうしたんですか? 竹田:『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観たんですけど、すごい映画でした。 田中:ソン・ガンホが主演している、史実を元にした映画ですか? 竹田:そうです。光州民主化運動(光州事件)について描かれた映画です。主人公キム・マンソプは、ソウルに住んでいる貧乏なタクシーの運転手。定食屋で食事をしていると、近くの席で同業者が羽振りのいい客の話をしているのを盗み聞きします。彼は先回りして、客を横取りします。そこで乗せたのがド

            釜山映画祭常連の是枝監督 日韓関係に左右されない(「どこにいても、私は私らしく」#48)

            是枝裕和監督の映画「ベイビー・ブローカー」は釜山から出発するロードムービーだ。助監督の藤本信介さんによれば、ソウルまでのルートはロケハンをしながら決めたが、出発地が釜山というのは最初から決まっていたという。是枝監督は釜山国際映画祭に15回ほど訪れており、釜山に対する愛着が あるようだ。 2019年は、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した翌年だったのもあり、是枝監督の来韓は注目を集めた。釜山映画祭は10月で、この年7月に日本政府が輸出規制を発表して以降、日韓

            『どこにいても、私は私らしく』【番外編】:書籍化に向けて 著者・成川彩さんへのインタビュー

            ◆連載初回の記事では、映画漬けの日々を送ろうと韓国に3度目の留学をされたことが書かれていました。 韓国映画についてもっと知りたいと思うきっかけになった作品、また一番好きな韓国映画は何ですか?  ――最初に留学した2002年、いくつかきっかけになる作品はありましたが、衝撃の大きさで言うとイ・チャンドン監督の『オアシス』でした。映画館を出ながら、すごい映画を見たと思って興奮していたのを覚えています。 ムン・ソリの演じた脳性麻痺のコンジュが車いすから立ち上がるシーンなど、リアルとフ

            韓国文学の読書トーク#14『ワンダーボーイ』

            竹田:いやー、同じ小説を繰り返し読むのは楽しいですね。 田中:僕たちはよく、カフカの『変身』の読書会をしますよね。 竹田:過去に10回はやってますね。 田中:話すことがなくなるようで、語り尽くせないです。 竹田:今回の『ワンダーボーイ』を「韓国文学の読書トーク」で取り上げるのは2度目ですがずいぶん新しい発見がありましたよね。 田中:この連載で、一番最初に書いた記事が『ワンダーボーイ』でした〔CUON BOOK CATALOGに掲載〕。あの時から考えると、だいぶ韓国文学を読んで

            私はもっと勇敢であるべきだった ノ・テガン【後編】/『あなたが輝いていた時』

            酒、ゴルフ、スキー、同窓会を避けること 私が見ても不当な人事なのに、どうやって怒りを鎮めたんですか? ――自分の怒りなど気にしている場合じゃなかったですよ。ユ・ジンリョン長官はなんとしてでも私を守ろうとしてくれたのですが、私が必死になって止めたんです。だって長官が大統領と真っ向から対立することになったら、文体部全体に影響が及ぶことになってしまう。 一人で酒でも飲むしかないですね。 ――酒は飲まないんです。もともと体質的に受け付けないのですが、公務員は自制心を失ったらおしま

            私はもっと勇敢であるべきだった ノ・テガン【前編】/『あなたが輝いていた時』

            「被告である朴槿恵を懲役24年、罰金180億ウォン〔約18億円〕に処する」 2018年4月6日、朴槿恵前大統領の公判で判決が下った。裁判所は、被告がノ・テガン前文化教育部体育局長に辞表を出すように指示したことについても、職権乱用罪と強要罪を認定した。ノ・テガンが「悪い人間」の烙印を押され、左遷されてから4年8ヶ月、まさに「事必帰正*¹」だった。メディアで彼の所感は報道されなかった。たとえメディア側の要請があったとしても、おそらく彼が一貫して言及を避けたのだろう。 大統領の指示

            「東京裁判」を通して、戦争責任について考える(「どこにいても、私は私らしく」#47)

            「日本では敗戦と言わず、終戦と言うんでしょう?」と韓国で何度か聞かれたことがある。そういえば8月15日を「終戦記念日」と言い、敗戦という言葉はあまり使わない。韓国では8月15日は「光復節」だ。日本の植民地支配から解放された記念の日だ。 日本では8月15日前後に戦争に関連する報道が増えるが、それは多くは原爆被害にまつわる報道だ。一方、韓国では植民地支配や慰安婦、徴用工などの問題が報じられる。韓国で過ごすと、日韓の報道のギャップを感じることは少なくない。 ほぼ毎年通っている映

            ピンチはチャンス 自然をデザインする(「どこにいても、私は私らしく」#46)

            そろそろコロナ禍の長いトンネルを脱して、日韓両国で旅行者の受け入れが始まりそうだ。最近会った韓国の知人は日本の地方の旅が好きだと言いながら「日本の地方は広報がうまい。実際行ってみると想像したほどでなくてがっかりしたこともある」と話していた。なるほど。私は逆のことを考えていた。韓国の地方は広報があまりうまくない。実際に行けばいい所はたくさんあるのに、もったいない、と。 何年か前、日本で高級食パンがはやった。日本に一時帰国中、食パンをプレゼントしているのを見てびっくりした。日本

            韓国文学の読書トーク#13『アンダー、サンダー、テンダー』

            竹田:突然ですが、田中さん、「子猫をお願い」って映画を観たことありますか? 田中:え? これから韓国文学の紹介をするのに映画の話から始まるんですか? 竹田:韓国の若い学生たちの群像劇です。この映画は、少女たちが大人になっていく過程で、厳しい現実を受け入れながらも少しずつ前を向いて生きていくことをテーマにしています。 田中:あ! 今回の課題本は、少年少女たちが主人公だからこの話をしたんですね! 竹田:意図をそんなに詳しく説明されたら恥ずかしいよ。 田中:というわけで「新しい韓国