クオンの本のたね

出版社クオンのWebマガジン「クオンの本のたね」です。クオンで出版される「本」の種(た…

クオンの本のたね

出版社クオンのWebマガジン「クオンの本のたね」です。クオンで出版される「本」の種(たね)たちです。 書下ろしエッセイや翻訳など、ここから大きく育ち、美しい花や葉を茂らせていく様子をどうぞ応援してください。 http://www.cuon.jp/

マガジン

  • 張碩(チャン・ソク)詩選集、つくっています

    韓国の詩人・張碩(チャン・ソク 장석)さんの日本オリジナル詩選集を、戸田郁子さんの翻訳で2024年夏に刊行します。このマガジンでは、訳者の戸田郁子さんと編集者・五十嵐真希さんが、詩選集が完成するまでの制作日誌をお届けします。

  • 韓国の今を映す、12人の輝く瞬間

    圧倒的に輝く不滅の光ではなく、短く、小さく、何度も点灯する光の一つひとつが人々に希望をもたらし社会を変えていく――。そう信じてやまない財団法人ワグルの理事長のイ・ジンスンさんは、2015年から市民参与政治と青年活動家養成を目的とした活動を精力的に続けています。 そんな彼女によるインタビュー記事12人分を収録した『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』を、noteでの先行連載を経て、2024年5月に翻訳出版しました。 翻訳は、韓国在住30年のライター伊東順子さんです。 このマガジンではためし読みをはじめ、本書にまつわる情報をお知らせします。

  • 言語の旅人、米国人韓国語教師R・ファウザー 外国語学習を語る

    鹿児島の大学で日本人の学生を相手に韓国語を教え、ソウル大学の国語教育科初の外国人教授となった、ロバート・ファウザーさん。 「どうすれば外国語が上手くなるのか?」 「外国語学習に王道はあるのか?」 といった学習者にとって永遠の悩みから、 「人類はどのように外国語を学んできたのか?」 「そもそも人が外国語を学ぶ理由は何か?」 などの広いテーマまで、これまでいくつもの外国語を学んできた「言語の旅人」ファウザーさんが韓国語で綴ったエッセイです。 教え子でもある稲川右樹さんの翻訳でお届けします!

  • 【近刊】CUON韓国文学の名作006『幼年の庭』

    韓国の激動の歴史の中で読み継がれてきた作品を紹介するシリーズ「CUON韓国文学の名作」006『幼年の庭』(呉貞姫〔オ・ジョンヒ〕著、清水知佐子訳)の関連記事まとめページです。

  • 韓国文学の読書トーク

    「百年残る本と本屋」を目指す双子のライオン堂の店主・竹田さんと、読書会仲間の田中さんによる、「新しい韓国の文学」シリーズをテーマ本にした読書会形式の連載です。(毎月25日更新)

最近の記事

『泣いたって変わることは何もないだろうけれど』著者朗読(テキスト付)

『泣いたって変わることは何もないだろうけれど』に収録されている詩と散文を、著者パク・ジュンさんによる朗読(韓国語)でお届けします。   あの年、慶州  とある大きなお墓の前で  あなたが僕の手のひらを開き  指で文字をいくつか書いて見せた。  そしてまた僕の手のひらを閉じた。  僕は何が書かれていたのかもわからないのに  何度も何度もうなずいていた。   生きつづける言葉  僕は誰かと話をするとき、ワンセンテンスほどの言葉を憶えておこうとする癖がある。 「熱いお湯、持

    • 「不親切な労働」パク・ジュン

      「不親切な労働」  父は生涯を労働者として生きてきた。朝鮮戦争のさなか、ソウルの鍾路で生まれた父の最初の労働は、殺鼠剤を食べて死んだ犬の死体を見つけて町内の大人のところに持っていくことだった。大人たちは死んだ犬をさばいて内臓を捨て、肉を何度も水で洗ってから茹でて食べた。野生の動物もいないし、かといって家畜を飼うでもないソウル市の中心部で、貧しい人びとが肉を食べることができるほとんど唯一の方法だった。大きな犬の死体を見つけた日は、父はいつもよりいくらか多くのお金をもらった。

      • 編集にまつわる、あれこれ(3)

         編集作業で特に悩んだのが訳注の入れ方です。詩人と訳者と読者が詩を通じて交感し共感し合うためには、詩が生まれた礎となる文化や歴史を共有しておく必要があります。どの言葉にどのように訳注を入れるか。小説などであれば、章ごとに注を入れたり、割り注にしたり、あるいは訳者あとがきや解説で詳しく述べたりすることができます。しかし、詩の翻訳は語りすぎては元も子もありませんし、詩の世界を壊すものであってはなりません。  詩のシンポジウムに参加したとき、パネリストが「訳注がないと理解が深めら

        • 韓国の詩的環境と張詩人のブックコンサート

           2016年初冬の光化門広場は、朴槿恵大統領を断罪せよとロウソクをかざす人々でにぎわっていた。広場中央の舞台には次々と、音楽の演奏や演説をする人たちが登った。  一人の男性が「詩の朗読をする」とマイクを握ったとき、「この喧騒の中で」と、私は驚いた。ところが朗読が始まると、辺りは急に静かになった。皆が耳を傾けている。「ああ、韓国ではこんなふうに詩が受け入れられている」と感じ入った。  私はこれまで10年余りにわたって韓国のベストセラーを注視してきたのだが、詩集が書店の売上ベ

        『泣いたって変わることは何もないだろうけれど』著者朗読(テキスト付)

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        • 張碩(チャン・ソク)詩選集、つくっています
          6本
        • 韓国の今を映す、12人の輝く瞬間
          3本
        • 言語の旅人、米国人韓国語教師R・ファウザー 外国語学習を語る
          1本
        • 【近刊】CUON韓国文学の名作006『幼年の庭』
          1本
        • 韓国文学の読書トーク
          17本
        • どこにいても、私は私らしく
          49本

        記事

          編集にまつわる、あれこれ(2)

           日本語版オリジナルの詩選集のつくり方は、大まかにいって2つの方法があります。1つは、韓国で出版された詩集毎に時系列で詩を並べる方法。例えば、クオンから出版されている『ラクダに乗って 申庚林詩選集』や『耳を葬る 許炯萬詩選集』(ともに吉川凪訳)は、2人の代表的な詩集数冊から吉川凪さんや金承福さんが粒ぞろいの詩を選び、詩集毎に時系列で配しています。こうすると、詩人の歩みを時代の変遷とともにたどることができます。2つめは、カテゴリーやテーマをつくって詩を並べる方法です。  張硯詩

          編集にまつわる、あれこれ(2)

          教育共同体から住居共同体へ

           張碩詩人の家は、京畿道龍仁市の郊外にある。ソウルの江南からの交通の便も良くて、現在は周辺に高層アパート(マンション)団地が形成されているが、10年前の建設当時は、山を切り拓いて新しく造成した住宅地で、周りには野山が広がっていた。  ここをトブロマウル、「共に住む村」と呼ぶ。20戸ほどの一戸建てで構成された、ゆるやかな住居共同体だ。  張さん一家がそこに家を建てることになったのは、以友学校という代案学校(オルタナティブスクール)の設立と深い関わりがある。  80年代半ば過

          教育共同体から住居共同体へ

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(3)

          「翻訳者より」:どうしてそこに行ったのかって? 三人の子どもの父親だからです/キム・ヘヨン  セウォル号、その後  セウォル号沈没事故が起きたのは二〇一四年四月十六日早朝のことだ。  全員救助の報。多くの人々がホッとして仕事に戻った。事故現場に向かった被害者家族たちも同じだった。ところがそれは誤報だった。傾き始めた船はどんどん沈んでいく。救助のために駆けつけた海洋警察の船やヘリコプターもいるのに、沈みゆく船を目の前に何もできなかった。テレビカメラはその様子をとらえ、私た

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(3)

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(2)

          どうしてそこに行ったのかって? 三人の子どもの父親だからです/キム・ヘヨン 助けてくれと窓を叩く高校生たちを抱いたままセウォル号が転覆した時、この社会の底にあった腐敗と無能の恥部も露わになった。船に乗っていた三百四人のうち、ただの一人も救うことができなかった「史上最大の救助作戦」は、「史上最大の裏切りの舞台」となって幕を下ろした。その中で、遺体だけでも引き揚げることができたのは、間違いなく民間ダイバーたちの功績だった。事故発生から七月十日の政府による一方的な捜索中断通知を受

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(2)

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(1)

          プロローグ 「今まで会った人の中でいちばん立派だったのは誰ですか?」  ハンギョレ新聞土曜版にコラムを連載しながら、もっとも多かった質問だ。二〇一三年六月から連載を始めて五年あまり、これまで隔週に一回のペースで会った人は百二十二名。その中で、まさに非の打ち所がないほどの純粋な情熱と強い信念を持ち、さらに寛大さをも兼ね備えた「ベスト・オブ・ベスト」は誰なのか。皆が気になるようだが、私の答えは簡単だ。 「この世の中に、そんな立派な人はいません」  インタビューを通して出会った人

          『韓国の今を映す、12人の輝く瞬間』ためし読み(1)

          編集にまつわる、あれこれ(1)

           張碩詩選集の編集を担当している五十嵐真希です。ふだんは翻訳を主に行っています。そのような私がなぜ張碩詩選集の編集に携わるようになったのか、経緯をまず綴っていこうと思います。  昨年のクリスマスを過ぎた頃、つまり、2023年12月末ごろ、金承福さんと飯田橋のタイ料理店で食事をしました。編集長を任されていたK-BOOK読書ガイド『ちぇっくCHECK』(K-BOOK振興会)をVol.10まで出版することができたので、その慰労会です。  慰労会の前に、私が翻訳し、クオンの「セ

          編集にまつわる、あれこれ(1)

          詩の翻訳にまつわる、あれこれ

           張碩(장석 )詩人の邦訳詩集の作業が進行中だ。夏頃には出来上がるだろう。金承福さんから邦訳の依頼を受けたのが2023年7月だったから、ちょうど1年がかりで実現の運びとなる。  詩人は1957年生まれ。1980年に朝鮮日報の新春文芸で詩人としてデビューを果たした。その後40年の沈黙を経て、2020年に初詩集を刊行し、2023年に4作目となる詩集を発表した。邦訳詩集はこの4冊の中から、61編を選んだものだ。  金承福さんは張詩人の詩集を読んだとき、「病んだ時代への治療薬のよ

          詩の翻訳にまつわる、あれこれ

          ハン・ガンによるエッセイ『そっと 静かに』プレイリスト

          ハン・ガンのエッセイ『そっと 静かに』(古川綾子訳)には、音楽との出会い、さまざまな思い出にまつわる歌、そして自らつくった歌について綴られています。 1章、2章のエッセイで触れられている音楽をできる限り実際に聴いていただけるよう、プレイリストを作りました。 本とともにお楽しみください。 *音楽を連続再生したい方はこちらから 太字はエッセイのタイトルにもなっている曲、それ以外はエッセイ内で触れられている曲です。 下線付きのものはYouTubeへのリンクを設定しています。 1

          ハン・ガンによるエッセイ『そっと 静かに』プレイリスト

          【イベントレポ】韓国の詩人と考える文学の世界<後編>

          ―辻野:オ・ウンさんがデビューした2000年代は詩の形態が多様化し、参与詩が環境問題を扱う「生態詩」へと変質したり、いわゆる「回想の詩学」が流行ったりした、ある種の過渡期だったと思います。オ・ウンさんは同人「チャンナン」のメンバーでもありますね。詩壇のフェーズが変わる中、どういう思いで詩を書き続けてきたのですか。 オ:私がデビューしたのは21歳で、同時期にデビューした詩人たちは7~20歳も年上でした。私は詩壇における生存戦略として、両親より年下だったらヌナ(姉さん)、ヒョン

          【イベントレポ】韓国の詩人と考える文学の世界<後編>

          【イベントレポ】韓国の詩人と考える文学の世界<前編>

          ー辻野裕紀(以下 辻野):お二人とも詩人ですが、世代も性別も作風も違います。お互いどんな存在ですか。 オ・ウン(以下 オ):韓国の詩の世界でとても頼もしい方で散文もとてもお上手です。詩人は自分の作品だけに注力して書いていると思われがちですが、他の人の作品を読み、見えない刺激を受けるんです。その刺激を一番くれる方だと言えます。 キム・ソヨン(以下 キム):オ・ウンさんは韓国の詩の領域を広げた方です。オ・ウンさんの詩を読むと、タンクを持ち上げるヘリコプターを思い起こします。す

          【イベントレポ】韓国の詩人と考える文学の世界<前編>

          【対談】四元康祐×オ・ウン :空っぽの存在として、今ここの現場を見つめる(後篇)

          今ここ、現在の詩人として四元 話題を変えましょう。僕は韓国の詩の歴史に興味があるんだけれども、ウンさんは詩を書くなかで詩の歴史を意識することはありますか。 オ・ウン 実は詩人になろうと思って詩壇にデビューしたわけではないんです。浪人時代にノートの隅に書き付けたものを兄が見つけて、これは散文詩みたいだからと、私に内緒で新人賞に送ったんです。そうしたら当選してしまいました。 だから、詩の勉強をしないまま詩人になってしまったんです。デビューした後に、詩を読んで勉強しました。

          【対談】四元康祐×オ・ウン :空っぽの存在として、今ここの現場を見つめる(後篇)

          【対談】四元康祐×オ・ウン :空っぽの存在として、今ここの現場を見つめる(前篇)

          世界中の詩人と交流し、連詩や対詩、翻訳などで様々な話題を呼んできた詩人の四元康祐さんと、詩人、エッセイスト、ポッドキャスト司会者などオールマイティに活躍する韓国の若手詩人オ・ウンさんとの対談が行われました。オ・ウンさんの邦訳詩集『僕には名前があった』(吉川凪訳、クオン)の感想から始まり、「詩人という存在」「詩と散文」「言葉遊び」など話題があっという間に広がった、詩と詩人を巡る対談の模様をお届けします。 詩人としてのギャップ四元 オ・ウンさんの詩集『僕には名前があった』を読ま

          【対談】四元康祐×オ・ウン :空っぽの存在として、今ここの現場を見つめる(前篇)