マガジンのカバー画像

1,308
詩を纏めています よろしくどうぞ
運営しているクリエイター

2023年6月の記事一覧

E・キング  

エタノールの海に
溺れるブルースマンは
異国から来た
悪魔と踊りながら
ギターを弾き捲り
箱の観客を熱狂させる
狂乱のステージを終えて
彼はまたエタノールの海へ
帰って逝くだろう
異国の悪魔と踊りながら

シャレード・デ・トマソ

螺子が外れた友達は
繊細で美しい
シャレード・デ・トマソを
全開で乗り回す
銃を撃ち捲る気違いみたいに
笑いながらとても
楽しそうな笑顔で
僕は関わりたくないから
気付かない振りをする
彼が僕を見つけて
話し掛けても
何も聞こえない振りをして
独りでモーテルに向かう
あの日交わした約束から
ひたすらに目を伏せ続けて

鋼月の明かり

鉄月の明かりで
我はマキリを研ぐ
狩猟の季節から
逸れぬ様にと
鋼月の明かりで
我はカムイを撃つ
神殺しの季節を
終える為に

消え逝く者

ずっと変わらずに
居られると思った
どうしてだろう
その願いは
叶いやしないのに
何時までも単車に
乗って居られると
信じていたんだ
どうしてだろう
あの日はもう
戻りやしない
私達は皆ただ
消え逝く者
それ以上でも
それ以下でもない
そんな気がした
初夏の季節に

エッグタルト

夜にだけ
開くカフェで
エッグタルトを
買って貴方を
迎えに行こう
クーリーレプリカに
乗ったなら
人も街も月さえも
置いてけぼりに
出来るのだからさ
キーモン紅茶を
冷やしといてよ
エッグタルトには
よく合うからさ

機械ですら無い

そのとても美しい
マシンソーのナイフで
僕の胸を貫いて
愛すべき人よどうか
機械ですら無い
この體はもう何も
感じやしないんだ
だからその綺麗な
マシンソーのナイフで
僕の胸を貫いて
鮮やかな花が散る様に

新しい日々

新しい日々に
どんな事をしよう
何も知らなかった頃は
過ぎ去ったけど
新しい日々は
どんな場所へ行こう
新鮮な心はもう
枯れ果てたけれど
新しい日々は
貴方を迎えに行こう
素敵な事はもう
探せやしないけど

ラブ・ロック

ラブ・ロックで
ジントニックを
ロックンロールが
鳴り止む前に
ラブ・ロックで
ウオッカトニックを
ロックンロールが
消え去るまで
幾ら飲んでも
酔う事の無い體に

一片の幸せ

一片の幸せを
買い求める客人
時に物であり
時に金であり
時に體である
でも本当の事は
何時だって
見えやしない
今日も誰かが
一片の幸せを
買いに
店を訪れて
闇夜に消えるよ

揺籃の外へ
出られない弱者
法をすり抜け
外の世界に出ても
また罪を犯し
法を逸脱する
彼らはもう
人では無いから
裁く事は叶わない
殻が保たれている限り

白夜慟哭

この国を破壊する為
太陽を盗んだ九番
彼は何を憎んでいたのか
もう分からない程に
全てを呪っていた
新しい祝福を与えると
彼は本気で信じて
この国の中心に目掛け
太陽を炸裂させる
生きる者は皆
白夜に慟哭する暇も無く
息絶えてしまった
九番がこの国に落とした
太陽が眩し過ぎたから

サマー・ブルーズ

街中に鳴り響く
流行りの歌は今日も
愛を囁いてるけど
どうでも良いぜ
俺はしけたライブバーで
サマーブルーズを
演奏するだけ
Rolandのアンプに
シールドを差したなら
レゲエマスターを
かき鳴らすのさ
廃れる事の無い
サマーブルーズを

冬のサンダル

初雪が降る街を
サンダルで歩くヤンキー
絡んで来た相手を
秒で地面へ殴り倒す
単車に乗って
夜の街を流せば
無敵だと信じて
疑わなかった日々
ライトの群れの中で
息を吐くように
彼は闇を抱き締める
不良少年の心で

造られた花

朝からバスに揺られ
私達は製鉄所へ向かう
赤く灼けた鉄を大きな
ローラーが延々と運んで
私達は淡々と仕事をこなす
暑さで意識が朦朧としても
両手がグリースで汚れても
真っ黒な洗い油の中に
手を入れて汚れを落とし
また淡々と職場へ戻る
終了のチャイムが鳴り響き
皆疲れ切ってバスに乗り込む
繰り返される日々に侵され
造られた花にすら為れずに