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2022年9月の記事一覧

夢だけを見ていた

光の入らない
部屋の中で
夢だけを見ていた
引き籠り
何処で間違ったのか
考える事すら
放棄した今は唯
過ぎ去るだけ
揺籃が壊れるまで
この夢を見ていよう
幾何の時が過ぎたなら
必ず醒めてしまうのだから

パンドラボックス

無実の子が
裁かれる丘で
咲き狂うクレマチス
貴方の美しい髪に
差してあげたいけど
この手は届かずに
貴方は処刑された
私は胸に隠した
パンドラボックスを開き
その場にいた者全てを
奈落へ閉じ込めて泣いた
親とはぐれた幼子みたいに

不完全な鉄馬

アイドリングが安定しない
ハーレーに乗る旅人
不完全な鉄馬の方が
楽しいと言い放つ
それが自由に繋がるか否か
僕には分からなかった
完全な物だけを
僕は使い続けるだろう
退屈な奴だと周りに罵られても

カモミーユ

咲き乱れたカモミーユが
戦車に踏み潰され
跡形も無く砕け散っても
残る物があるなら
僕に教えてくれないか
山の様な人の波が
一瞬で消え去っても
消えない何かがあるなら
僕だけに見せてくれないか
そんな事が存在するなら
どうか囁いておくれよ

存在する価値は

モノクロの映画を
観賞する悪人
生まれる事は
罪だと言い切る
スクリーンの中の俳優が
道化師に見えなかった
存在する価値を
どうしても探せない儘
悪人は罪を重ねる
水を飲むように

ロカビリー・ジェット・エンド

ポマードで纏めた髪で
ステージに立つジェット団
ステップを踏み
ロカビリーを歌う
メンバーが外で揉めていると
連絡がヘッドに入り
ジェット団の精鋭達が
店を飛び出し単車を飛ばす
争いからは逃れられないと
理解していても彼らには
確かな誇りが胸に咲いていた
それを傷付けられない為に
命を賭けて来たのだから

ウエスト・トゥナイト

些細な喧嘩に
巻き込まれた
相手が呼んだのは
シャーク団だった
泣く子も黙る
その怖さに
警察もギャングも娼婦すら
一目置く彼らを
止めれる者は
ジェット団しかいない
鼓動が止まる前に
彼らのヘッドに話を付け
その場を何とか収めて
夜が少しずつ更けて逝く
強者達の夢の後先が

Ⅾ・Ⅾ

不可逆な生物の
哀しみを知ったなら
泣いてくれるかい
とても偉い人
戯れで作ったと
退屈そうに言い放ち
全てを壊すんだろ
そうなる前に
これでも喰らいな
ディート・デリンジャー
神には何も効かないとか
有り触れた事を言う前に
もがき苦しんで死ぬ
何故かってそれは
俺も昔そこにいたから
全て知っているのさ
所詮うつろうもので
作られた命なのだから

秋が訪れた街を
ホットロッドで走る
不良少年の夜
飴細工の様な日々が
脆く崩れても
留める事すら叶わず
ただ溶けてしまうだろう
季節外れの雹みたいに

リイューズ

錆びたガットギターで
歌うリイューズ
機械の体は永遠を
彷徨う事しか出来ないと
儚げに声を震わせる
生きる事に疲れない
不死者達は喜んで
高級なラム酒を空け笑った
人はでない何かの
夜は静かに更けて逝く

眩しいパンクス

まともじゃないと
言った相手を
地面へ殴り倒す
怒れるパンクス
この街の夜は
とても凍れるから
革ジャンの上に
ラッコの毛皮を纏おう
幼き頃に憧れた
眩しきパンクスみたいに

人の夢を見るオートシープ

愛玩動物として造られた
オートシープは時折
人だった頃の夢を見る
完璧な機械の體で
自分の過去など知る訳が無い
無から製作されたのだから
それでも偶にだが
人であった頃の夢を見る
チップの記録には残らない
胡蝶の夢の様な刹那を

鉄の海へ

罪人達は皆
鉄の海へ還る
その體を全て
焼き尽くされて
歴史に残る罪すら
やがて消えるだろう
全ての始まりは
鉄の海なのだから

砂時計が落ちるまで

秘密の店で購入した
砂時計が落ちるまで
貴方と何を話そう
赤紙で戦場へと
駆り出される僕に
慰めの言葉は要らない
全てが定めならば
逃れる事など叶わないから
時が過ぎたから貴方に
さよならを言おう
如何か振り向かないで
僕は人を止めるのだから